榎本メソッド小説講座

第12回:「語らせてください!」榎本事務所スタッフが惚れ込んだガチ推し本〈3冊目『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(ブレイディみかこ)〉

2026.05.22

2019年に出版されて以降、ノンフィクション本大賞を始めとした数々の賞を受賞しまくっているこの作品。当時ものすごく話題になっていたのに読む機会がなく、ようやく最近になって手に取ってみました。

 

ぱっとタイトルだけ見た時、「なんだかよくわからないな」なんて思ってしまったのですが、これは東洋人の母親と白人の父親の間に生まれた少年(ハーフという言い方が一般的かもしれませんが、その言い方は失礼だと作中で言及されていたのでこの表現にしています)が、人種間の問題に直面した時に感じた気持ちを表していると知り、むしろこれ以外のタイトルはありえないとわかります。

 

日本では2015年のインバウンドブームから始まり、2024年にはコロナ禍前の水準を上回るほど外国人観光客が増加しました。とはいえ私自身は彼らと密接に関わる機会はなかったため、日本人以外の人種はどこか遠い存在のように感じていました。しかしこの作品を読むと、海外では当たり前のように複数の人種が同じ地域で暮らしていて、差別が存在すること。それらについての自分の無知さが浮き彫りにされます。

 

ノンフィクションなので、この作品に出てくるエピソードは全て実話。つまり書かれているのは「学校で友達とケンカした」といった、日常の延長線上で起きる事件です。そのため劇的な出来事はそうそう起こらないけれど、私のような「日本在住の、普段日本人としか接しない日本人」が読むと驚くようなエピソードばかりです。そして主人公の1人である少年の聡明さには感心を通り越して敬服するほどです。彼は7年生(中学1年生)なので年齢は13歳のはずですが……自分が同じ歳の頃って何してたっけ……? 少なくとも人種差別について考えていなかったことはたしかですね(笑)。

 

最後に作品のテーマについて。作中でも触れられている通り、「多様性の善悪」というのは一概には決められません。多様性がなければ差別は生まれないというのも真実ですが、多様性がなければ無知のままというのもまた真実です。「自分は決して差別をしない!」と宣言できるほど高尚な人間ではありませんが(悪意がなくても相手を不快にさせることだってありますし)、少なくとも混血の少年が日本で冷遇されるシーンを読んだ時にものすごく嫌な気分になったので、その感覚は今後も大事にしていきたいです。

 

今回ご紹介した作品 → 『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(ブレイディみかこ)