榎本メソッド小説講座

第33回:【独断と偏見100% ジャケ買いならぬタイ買いした本】2

2026.10.16

今回も私が「タイトル買い」した1冊をご紹介します。

私は本を選ぶとき、あらすじやレビューよりも、まずは「タイトル」で面白そうかどうかを判断するタイプ。作品の顔とも言えるタイトルにビビッときたら、中身をチェックする……というのがお馴染みの流れです。

今回も、読む前の「大予想」と、読んだ後の「答え合わせ(感想)」をセットでお届けします。未読の方はネタバレにご注意の上、お楽しみください!

 

【今回の1冊】

『あのときマカロンさえ買わなければ』(カツセマサヒコ)

〈読む前の感想(予想)〉

なんだかすごく不穏なタイトルだと思ってしまったのは私だけでしょうか……。

「あのときマカロンさえ買わなければ、こんな事件に巻き込まれることもなかったのに」みたいな、サスペンスっぽい展開を想像してしまいます。一度不穏だと思ってしまうと、なんだか事件が起きるイメージしか湧きません。

そもそも日本語のニュアンスとして、「~さえ~なければ」が強い後悔を表現しているんですよね。つまりマカロンを買ったせいで、主人公の身にとんでもない(歓迎できない)事件が起きたのは間違いなさそうです。

「あのときマカロンさえ買わなければ、給料日まで飲まず食わずになることなんてなかったのに」みたいな金欠の叫びだったらまだ笑える余地があるのですが。マカロンって高価なので、私は人生で数回しか食べたことがありません……(笑)。

 

 

※以降、ネタバレを含みます。

 

 

〈読んだ後の感想(答え合わせ)〉

タイトルとカバーデザイン以外の情報を一切得ずに読み始めたら、小説ではなくエッセイ集でした! 表題作『あのときマカロンさえ買わなければ』を始め、収録されているのはすべてショートショートのように短くてサクッと読めるエッセイです。

本編に入る前のページに、「人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見れば喜劇である」というチャールズ・チャップリンの言葉が引用されています。

まさにその通りで、この本に詰まっているのはどれも著者の後悔、恥、懺悔(悲劇)などにまつわるお話。けれど、読者が遠くから眺めるとどれもクスッと笑える喜劇ばかりです。本人にとっては大事でも、他人が見れば可愛らしい失敗談というのはよくある話。チャップリンの引用は、実に言い得て妙だなと感じました。

生きていくうえで、恥や後悔とは無縁でいられません。だからこそ、それを笑い話に変えてしまおうという姿勢は、すべての人に共通する救いになる気がします。

私にも、長編1冊分は書けそうなくらい恥や後悔の経験があります。ただ、ほとんどが墓場まで持っていきたい黒歴史なので、笑い話に昇華して人前に出すには、まだまだ覚悟が足りないようです。

 


 

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