榎本メソッド小説講座

【対談】榎本秋×坂井ひなぎ×幸村かなえ|夢を叶えた受講生・小説家座談会 ~未経験から新人賞受賞まで、大好きな物語をあきらめずに書き切る秘訣 ~

2026.07.12

榎本秋と、榎本メソッドを学び夢を叶えた受講生のスペシャル対談 Vol.2。

 今回は、大手新人賞で見事受賞を果たし、プロへの扉を開いた小説家の坂井ひなぎさん幸村かなえさんをお迎えしました。

「いつかは大きな賞に応募したいけれど、自分にはまだ早いかも……」と迷っている未経験の方へ向けて、長年の師である榎本秋とともに、選考委員を唸らせる物語の作り方や、独学では気づけない小説の勉強のリアルを本音で語り合いました! 

 


作家プロフィール


坂井ひなぎ(さかいひなぎ)
第24回角川ビーンズ小説大賞にて「聖女候補の替え玉令嬢は孤独な王子の運命を諦めない 」で特別賞を受賞。同時期、赤星りおこ名義で第8回富士見ノベル大賞<入選>を受賞。
デビュー作品『王家公認、偽聖女です』 (富士見L文庫 )は7/15に発売となる。

 

幸村かなえ(ゆきむらかなえ)
福島県出身。第6回New-Generationアイリス少女小説大賞<銅賞>を受賞。
2019年に『月桂国神医伝 死にたがりな神さまは難攻不落!』(一迅社文庫アイリス)で商業デビュー。現在は児童文庫でのデビューを目標に作品を鋭意執筆中。

 

 


―小説を書き始めたきっかけは「演劇」と「読書」

榎本:お2人とも見事に新人賞受賞を果たされていますが、そもそも一番最初に「小説を書いてみよう!」と思ったきっかけは何だったのでしょうか? 

幸村:私は元々声優志望で、高校時代は演劇をやっていたんです。最終的に声優の道には進みませんでしたが、社会人になって夜の時間が空いた時、「小説なら、自分が演じたかったキャラクターを自由に表現できるんじゃないか」と思ったのがきっかけでした。最初は同人小説を書いていたのですが、オリジナル小説に挑戦するなら1からちゃんと勉強したいと思い、小説の勉強をスタートしました。

榎本:幸村さんは昔から少女漫画もすごく読んでいたんですよね。 

幸村:はい!『りぼん』『なかよし』『ちゃお』は全部毎月読んでいました。すごくかっこいい男の子と、内気だけど素直な女の子の恋愛が大好きで、その時の読書体験が今の少女小説や児童文学執筆のベースに繋がっています。 

榎本:素晴らしい土壌ですね。坂井さんはいかがですか? 

坂井:私は元々本を読むのが大好きで、学生時代はコバルト文庫やティーンズハート文庫に夢中でした。その「読む楽しさ」の延長で、自然と自分でも書き始めた形です。ビーンズ文庫などの賞にも当時から応募していました。ただ、当時は1年に1冊書き上げられるかどうかというペースで、1次選考を通過するか落選するか、という状態が続いていましたね。それでも「1次を通ったんだから、もっと上を目指したい」と思って勉強をはじめました。

榎本:今でこそ長編を何冊も書き上げているお2人ですが、初めて長編に挑戦したときはスムーズに書けましたか? 

坂井:初めての長編は……今振り返ると、拙いながらも「それっぽい形」にはなっていたかなと思います。

榎本:読書量が実を結んでいると思いますよ。子どもの頃からたくさん本を読んでいる人は、無意識のうちに「物語の構成の勘」が身についているので、未経験の段階で長編を書いても、不思議とそれっぽい形に仕上げられる強みがあるんです。幸村さんはどうでしたか?

幸村:同人小説での執筆経験はあったので、書くこと自体への抵抗はなかったです。初めて書いたオリジナル長編は原稿用紙500枚くらいのファンタジー作品で、「とにかく自分の書きたいものを全部詰め込んで書いてみた!」という勢い任せのものでした。当時は上京してきたばかりで、「何かを成し遂げたい!」という強い野心があったので、絶対に賞を獲りたいと思っていました。

榎本:幸村さんは最初、ちょっと暗めな純文学っぽいものを書いていたのだけれど、キャラクターの好みを分析して、私から「少女小説や児童文学の方向へ進んでみたら?」とアドバイスした思い出があります。懐かしいですね。

 

続けてきて抱いた、新人賞受賞の瞬間の「確信」 

榎本:実際に「受賞の連絡」が届いたときのリアルな心境はどうでしたか?

幸村:私の場合は一迅社アイリス文庫の賞をいただいたのですが、なぜかその時は、電話が来る前から「今回は受賞するな」という不思議な確信があったんです。なので、実際に連絡が届いた時は飛び上がるほど嬉しいというよりは、すごく冷静で、「あ、お世話になった榎本先生にすぐ連絡しなきゃ」という気持ちが大きかったですね。それと同時に「賞を取った後、プロとしてやっていけるだろうか」という不安も押し寄せてきたので、受賞後も油断せず、勉強を続けたいと強く思いました。

榎本:デビューがゴールではなく、もっと先を見据えた地に足がついた冷静な反応だったわけですね。坂井さんはどうでしたか?

坂井:私は2009年のエンターブレインえんため大賞で1度最終選考まで残ったことがあったのですが、当時は自信が持てなくて、結果やはり落選してしまって……。そこから実は10年くらい、少女小説から離れていた時期があるんです。途中、児童小説の賞に2回ほど挑戦してみたのですが、自分の中で「書いていて楽しい!」という熱量がどうしても弱くて、もう1度少女小説の世界に戻ってきました。やっぱり自分が本当に書きたいものを書こう、と。

榎本:今回の角川ビーンズ小説大賞での受賞はまさに苦節20年での、悲願の受賞となったんですね! 受賞作の手ごたえはいかがでしたか?

坂井:角川ビーンズ小説大賞での受賞作は、これまでの自分の作品の中でも一番手ごたえを感じていました。一方で、富士見ノベル大賞の受賞をいただいた時は、それまで同レーベルで西洋ファンタジーの受賞作があまりない傾向だったのもあって、「まさか選ばれるなんて!」と驚きが大きかったです。

 

「好きなものへの振り切り」と「読者目線」 

榎本:未経験の段階から、選考委員を唸らせて大手新人賞で「受賞」するレベルに達するまでに、自分の作品が大きくレベルアップしたと感じた瞬間はいつでしたか?

幸村:選考委員の先生方が最終的に面白いと感じてくれるかどうかは、ある種の「運」の要素もあると思っています。だからこそ私は、ターゲットとなる読者層にどう届くかを何より大切に、常に「読んでくれる読者のこと」を一番に思って書くように意識を変えました。それが私にとって重要な転換期だったと思います。

坂井:私は、自分が受賞レベルに達したという明確な実感は今でもないんです。ただ、10年前までは「1次突破したらそれだけで大喜び」だったのが、諦めずに何本も書いて回数を重ねるうちに、自然と1次通過が当たり前になっていきました。一番の転換期は、やっぱり「自分が大好きなジャンル、好きなものに全力で振り切って書こう」と決めた瞬間でしょうか。

榎本:自分が読む側として「面白い!こういう展開が読みたい!」と思えるものを突き詰めて書くことは、他の誰にも真似できない強力な武器になりますからね。

 

受賞を引き寄せたプロット講評でのアドバイス

幸村:榎本先生たちの指導からは、「ただ褒めるのではなく、本気でプロにするために教えてくださっているんだ」という真剣さがダイレクトに伝わってきました。だからこそ、私もアドバイスを素直に受け止めて、自分が成長するための糧にしようと思っています。プロットを提出する時って、自分の中では「もうこれ以上は出せない!」という限界値のクオリティで出すんですよね。でも、そこに対してプロの視点から指摘をいただくことで、自分1人では絶対に気づけなかった点がクリアになりレベルアップできたと思います。

坂井:私は、プロットを組み立てる時に、無意識のうちに「いつも自分がやりがちな定番の展開」に逃げてしまう癖があったんです。そこをプロット講評で客観的に「またこのパターンになってるよ」と指摘されたことがあって。アドバイス通りに思い切って展開をガラッと変えてみたんです。そしたら、なんと受賞した際に、まさにその新しく変えた展開の部分を選考委員の先生方に高く評価していただけたんです!

榎本:それは本当に嬉しいですね!

 

諦めずに続けること、そして年齢関係なく好きなものを書く

榎本:最後に、「いつか大きな賞に応募したいけれど、まだ自分には早いかも」と、最初の一歩を迷っている読者へ、背中を押すメッセージをお願いします。

幸村:私も現在、児童文庫でのさらなるデビューに向けて日々がんばっている身です。挑戦するのに「年齢」なんて全く関係ありません。気づいた今日という日が、これからの人生の中で一番若い日です。今日から行動を起こせば、結果はあとから必ずついてきます。そして、もし本当に最短ルートで受賞したいのであれば、しっかりとしたプロの先生について、小説の基礎を1から学んだ方が間違いなく近道だと私は思っています。

坂井:私も年齢は一切関係ないと思います。何歳から始めても、まずは自分が大好きなジャンルを、書きたいように書くことが一番大切です。そして、何より「諦めずに続けること」。自分も最初は本当に受賞できるなんて思っていませんでしたが、諦めずに20年間がんばり続けて、本当に本当によかったと思っています。

榎本:お2人のこれからのさらなる躍進を楽しみにしていますし、応援しています。本日は貴重なお話をありがとうございました!

 

 


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榎本秋 Profile
文芸評論家・作家・専門学校講師 / 株式会社榎本事務所 代表取締役会長
1977年東京生まれ。作家・編集者・出版プロデューサー。
2002年 二松学舎大学文学部国文学科中退。
2007年 株式会社榎本事務所設立。所属作家となる。
『裏門切手番頭秘抄』(KADOKAWA)で本名名義で小説家デビュー。
主な著書に『家斉の料理番』(宝島社)、『書物奉行、江戸を奔る!シリーズ』(朝日新聞出版)、『平賀源内江戸長屋日記シリーズ』(徳間文庫)、『仇討探索方控 露払い』(幻冬舎)、『隠密旗本シリーズ』(光文社)など。榎本秋の筆名で、歴史書、エンタメ業界ノウハウ本を数多く執筆。
東放学園映画アニメCG専門学校、専門学校日本マンガ芸術学院、専門学校日本デザイナー芸術学院で小説系学科のカリキュラム監修を手掛けた。