2026.05.20
20年にわたり専門学校やカルチャーセンターなどで、プロを目指す多くの方々に創作指導をしてきた榎本秋。2021年に小説家育成オンライン講座【榎本メソッド小説講座-Online-】を開設した。
なぜ、あえて完全オンラインという形で新たな小説講座を立ち上げるに至ったのか。自身も本名名義で作家デビューを果たした経験を持ち、指導者としてもプロデビュー作家を輩出してきたからこその、創作指導の本音に迫る。

──これまで20年間、たくさんの作家志望者と向き合ってこられました。これほど長く、情熱を持って「教えること」を続けてこられた一番の原動力は何でしょうか。
小説家志望者の方の悩みを1つ解決するたびに、この世に新しい「面白い作品」が生まれる可能性が広がる。それを原動力に、気づけば20年が経っていました。
志望者の方々がぶつかる壁は、本当にひとりひとり異なります。ある人は世界観の設定に、ある人はプロットの構成に、またある人はプロとしてのメンタリティに。そうした十人十色な悩みを、「根性論」ではなく、いかに論理的な「技法」として解決できるか。
試行錯誤を繰り返し、志望者が少しずつ目標に近づいていく、そして達成するまでの過程が私にとっての情熱の源です。受講生の皆さんが壁を突破し、自分にしか書けない物語を形にしていく。その瞬間に立ち会えることが、講師としての何よりの喜びです。
──専門学校やカルチャーセンターなどでの指導経験も豊富ですが、既存の教育の枠組みの中では解決できなかった「作家志望者が抱える悩み」とはどのようなものだったのでしょうか?
小説家というのは資格があるわけではなく、ひとりひとりの悩みも、目指すべきゴールも全く違います。簡単に言えば、ファンタジーのプロットで悩んでいる人と、現代ミステリーのキャラクター造形で詰まっている人に同じ講義をしても、本当の意味での解決にはなりませんよね。
そのため、本来は少人数制にするか、志望者のレベルやジャンルに合わせたゼミ形式が理想です。しかし、既存の教育機関の枠組みだけではどうしても「大教室での一斉授業」が中心になってしまいます。ここに大きなジレンマがありました。
「講義を聴いて知識は増えたけれど、自分の作品が面白くなった実感がない」
そんな学生さんの声を、これまで何度も耳にしてきました。
学生さんでよくある悩みの1つに、「理論はわかっているけど実践できない。実際にプロットを作っても面白くない」があります。プロットはすぐには面白くはなりません。
私がおすすめしている方法の例として、【キラキラハンティング】と呼んでいるやり方があります。図書館に行ってキラキラしている=興味を惹かれるものを探して、参考にするのです。また、本をたくさん読んで面白さとは何かを知ることが大切でもあります。
各個人の悩みは解決法もそれぞれ異なるので万能薬といったものはなく、指導と面談を繰り返して処方箋を増やしてきました。
こうした経験から、私はどのような現場でも必ず個別の相談時間をつくり、ひとりひとりと向き合うことを信条としてしてきました。
体系的な「講義」で基礎を固め、その上で「個別指導」で個人の悩みや苦手を解消する。この両輪が揃わなければ、作家志望者の本当の悩みは解決できない。
それがこの20年の結論であり、このオンライン講座を立ち上げた原点でもあります。
──本講座は「全日制専門学校で教える執筆の基礎を凝縮した動画講座」と「プロットや長編作品への個別指導」を組み合わせています。なぜ、独学や他の講座ではなく、この「形」がデビューへの近道だと言い切れるのでしょうか。
小説を書き上げることは、一軒の家を建てることによく似ています。
まず、多くの志望者が陥りがちなのが「土台」を疎かにすることです。
しっかりした土台(基礎)がなければ、どんなに魅力的なキャラクターを載せても、物語は途中で崩れてしまいます。仮に建てられた(完成した)としても、他人が見たら粗だらけでしょう。本講座の動画では、崩れない「創作の土台」を凝縮して伝えています。
しかし、土台だけ眺めていても家は完成しません。実際に自分の手で建築(執筆)することで家(作品)ができあがりますし、技術が身につきます。
そして最も欠かせないのが、プロによる竣工検査(講評)です。 自分では完璧だと思っていても、プロの目で見れば「ここに歪みがある」「ここを補強すればもっと良くなる」というポイントが必ず見つかります。
独学では気づけない自分の弱点や伸ばすポイントを、第三者の、それもプロの視点で改良していく。このサイクルこそが、デビューというゴールへの最短ルートだと確信しています。
──実際に新人賞受賞者や最終選考到達者を輩出されていますが、指導の中で「ここだけは受講生に妥協させない」というポイントがあれば教えてください。
一言で言えば、「プロの基準に達するまで、考え抜くことを諦めない」。この一点に尽きます。
これまでの指導現場でも、私は学生や受講生の皆さんに対し、プロとして通用するクオリティに到達するまで徹底的に向き合うことを求めてきました。それは決して精神論ではなく、デビューという結果を出すために避けては通れない「執筆の持久力」を身につけてほしいからです。

作家デビューへの道に、魔法のような裏技はありません。
このステップを、1つとして妥協せずに繰り返すこと。これこそが、デビューの扉を叩くための唯一の条件です。
創作の過程では、必ず「もうこれでいいや」と筆を置きたくなる瞬間が訪れます。しかし、その一歩先まで考え抜いた先にしか、読者や選考委員の心を動かす作品は生まれません。このステップをひとつひとつ、プロの基準で積み上げていくことが必須なのです。
──ご自身も小説家としてデビューされ、プロデューサーや編集者としても業界の第一線で活動されてきました。ご自身のデビュー経験、そして多くの小説家デビューをプロデュースしてきた経験の中で、「これを知っているかどうかで、小説家人生が決まる」と確信したポイントはありますか? それは、この講座にどう反映されていますか?
それは、「読者目線」です。
自分の書きたいものを書くのは「表現」ですが、プロの小説家はそれを「読者がお金と時間を払ってでも読みたい物語」へと昇華させる仕事です。多くの志望者は自分の作品を愛するあまり、読者がその作品をどう受け取るかという視点をつい忘れてしまいがちです。
私がプロデュースに関わってきた多くの小説家たちを見ていても、生き残る人は共通して「自分の作品を客観視し、読者のために修正する勇気」を持っています。
しかし、この「客観視」こそが、創作において最も難しく、独学ではなかなか到達できない領域です。私自身も自分の作品を客観視することは難しく、編集さんの力をこれでもかというくらいお借りしました。だからこそ、この講座では「個別講評」を最大の柱に据えています。
私の役割は、受講者の作品にとって最初の「最も厳しい読者」であり、「最も頼れる編集者」になることです。講評を通じて、「読者の目にはどう映っているのか」「どこに熱狂し、どこで冷めてしまうのか」をリアルにお伝えし、客観的な視点を養っていきます。
自分の作品を客観的に理解し、コントロールする術を身につけること。そのための場としても、この講座を存分に活用していただきたいです。
──「自分なんかがプロを目指してもいいのだろうか」と、一歩を踏み出せずにいる方へ。いま贈りたい言葉はありますか?
もし、あなたの中に「書きたい」という気持ちが少しでもあるのなら、その想いを大切にしてください。
「自分に才能があるのか」「今から始めて間に合うのか」と不安になる必要はありません。20年間、多くの方を見てきましたが、皆、迷いながらも最初の一歩を踏み出し、1つずつ技術を身につけて、夢を形にしてきました。
一番もったいないのは、挑戦せずに時間が過ぎてしまい、「あの時始めていれば……」と後悔することです。やらずに後悔するよりも、少しでも「やってみたい」と思ったその瞬間にスタートを切ることが、何よりも大事だと私は考えています。
まずは、創作の土台となる「基礎編」から触れてみてください。正しい技術を学べば、あなたの物語は必ず変わります。
あなたの「書きたい」という情熱を、確かな「形」にするお手伝いができる日を、楽しみに待っています。
無料受講相談のご案内
「榎本メソッド小説講座-Online-」では、無料の受講相談を実施しています。現在の執筆状況や目標に合わせ、最適なコース選択を講師が個別にご提案します。
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榎本秋 Profile
文芸評論家・作家・専門学校講師 / 株式会社榎本事務所 代表取締役会長
1977年東京生まれ。作家・編集者・出版プロデューサー。
2002年 二松学舎大学文学部国文学科中退。
2007年 株式会社榎本事務所設立。所属作家となる。
『裏門切手番頭秘抄』(KADOKAWA)で本名名義で小説家デビュー。
主な著書に『家斉の料理番』(宝島社)、『書物奉行、江戸を奔る!シリーズ』(朝日新聞出版)、『平賀源内江戸長屋日記シリーズ』(徳間文庫)、『仇討探索方控 露払い』(幻冬舎)、『隠密旗本シリーズ』(光文社)など。榎本秋の筆名で、歴史書、エンタメ業界ノウハウ本を数多く執筆。
東放学園映画アニメCG専門学校、専門学校日本マンガ芸術学院、専門学校日本デザイナー芸術学院で小説系学科のカリキュラム監修を手掛けた。