2026.06.26
芦沢央さんといえばホラー要素のあるミステリーを書く作家として有名であり、私はホラー映画がけっこう好きなのですが、「そういえばホラー系の小説ってあまり読んだことないな」と思い手に取った1冊。結論から言うと、出版されて約10年も読まずにいたことを後悔するほど面白かったので、ここでご紹介させていただきます。
『許されようとは思いません』は表題作を含めた5編を収録している短編集で、表題作は日本推理作家協会賞を受賞しています(私はホラー小説と思って手に取ったのですが、ジャンルはミステリーが正しいようです)。どれもじんわりと肌に染みこんでくるような気味悪さや怖さがあり、ホラー的な面白さもあるのですが、何よりも驚いたのは伏線の秀逸さと尺の使い方です。キャラクターの過去を見せるためと思っていたエピソードが、あるいは登場人物の何気ない仕草やセリフが、実はオチに繋がる重大な伏線だった……ということが何度もあり、読むたびに「やられた!」と思ってしまいます(笑)。
尺の使い方も巧くて本当に無駄がなく、オチにも疑問を残さない点が、ホラー要素のある小説に言うのも変かもしれませんが読後感がとてもいいんです。短編って短すぎても物足りなさを感じてしまうし、長すぎても「あのシーンは蛇足だったんじゃないか」と思ってしまう。そういう意味でとても難しいジャンルなのですが、収録されている話はどれも完璧に計算された構成のため、すっきりと読み終えることができます。短編の執筆に興味がある方は、騙されたと思ってぜひ読んでみてほしいです。というか、本当に騙されます(?)。
余談ですが、この作品は単行本と文庫で収録されている作品の順番が異なります。私は単行本だったので表題作を最初に読んだのですが、文庫では最後に収録されているようです。個人的な意見ですが、陰鬱さは収録されている5編の中で表題作がトップに思えるので、最初に読むか最後に読むかで作品全体への印象が少し変わるかもしれません。
既読の方も、単行本を読んだ方は文庫を、文庫を読んだ方は単行本を改めて読んでみると面白いかも……!? 私も文庫を読んだ時、また印象が変わるのか? 今から楽しみです!
今回ご紹介した作品 → 『許されようとは思いません』(芦沢央)
