小説家になるには、社会人では遅いのかな。学生のうちにチャレンジするべきだったかな、なんて思っていませんか?
社会人や主婦は、毎日の仕事や家事に追われてなかなか時間が取れない方も多いでしょう。小説家になるにはたくさんの時間や特別な才能が必要なのでしょうか。
ここでは小説家をめざす社会人の方に向けて、「小説家ってどうすればなれるの?」にまつわる疑問をまとめました。「能力UP」につながる効率的な勉強方法もご紹介しています!
※小説家デビューの具体的な方法を知りたい方はこちら↓
小説家デビューの方法一覧
目次
毎日の仕事に追われていたら、小説家になるなんて夢のまた夢……ふとそんな思いが頭をよぎって、諦めそうになることがあるかもしれません。しかし忙しい社会人でも、小説家としてデビューできる可能性は十分にあります。
仕事をしながら勉強して、新人賞に挑み、小説家デビューするのは現役の小説家によく見られるパターンです。むしろ小説家になるために「今の仕事は辞めてひたすら原稿を書き続けるんだ!」という人の方が稀かもしれません。
実際にプロの小説家になっても、兼業している人は多いものです。当然、仕事と執筆で忙しくなりますし、執筆時間を確保するのが大変ではあります。
しかし社会人であることが、大きな「強味」になることも。
エンタメ作品の多くの読者は社会人です。社会経験を持っていることで、彼らの共感を得られるテーマを実際の経験から見つけられるからです。
小説家は人の心を掴むことが何より大切な仕事。魅力的な小説を書くうえで、あなたの経験が大きな糧になります。
小説家になるのに年齢制限はありません。ほとんどの新人賞や小説賞で年齢制限は設けられていないので、何歳になっても挑戦できます。過去には75歳で大きな賞を受賞した小説家もいらっしゃいます。(黒田夏子さん:芥川賞受賞)
たとえ10~20代の若者をメインターゲットとしたライトノベルであっても、年齢を理由に新人賞の選考から外されることはありません。良い作品が書ければ何歳からでも、何歳になっても、小説家になることは可能です。
主婦から小説家になった方はたくさんいます。最近では63歳の主婦が芥川賞を受賞したケースも。(若竹千佐子さん:芥川賞受賞)
専業主婦の方で、自分には社会経験があまりないから自信が無い、と思われる方も多いようですが、それは違います。家族の心配や、育児、介護などの大変さを知る主婦の人生経験は、執筆に活かせる要素です。
家族という様々な世代が集まるコミュニティーにおいて、人間のオフの部分、「素」の一番近くにいるのは主婦かもしれません。幅広い世代のリアルを知っているのは主婦ならではの強みです。
小説家になるのに必要な資格はなく、学歴が問われることもありません。
資格や試験があるものではありませんが、スキルという意味では、PCの操作が必要になります。現在の入稿方法はほぼPCが基本となるため、PCの基本操作は必ず習得しておいた方がいいでしょう。とはいえ難しい操作が必要というわけでもないので、資格がいるというほどのことはありません。
小説家になるために「持っていると有利になる資格」が特別にあるかといえば、それもありません。しかしどんな資格でも、専門分野を持っていることは強みになります。
自分の知らない世界を見てみたいという好奇心は、人が小説を読む理由のひとつです。知的好奇心をくすぐるようなテーマが1つあると、より物語が魅力的になります。そのため一般の人があまり知らない情報を知っていることが有利に働くことはよくあること。学校で専攻していることや職業の専門知識は必ず小説に活かせます。
執筆の時間は夜
榎本メソッド小説講座のアンケートによると、兼業小説家は、夜の時間帯に執筆する人が多い傾向でした。他の仕事や家事が一段落し、家族が自室に行くなどして、周りが静かになる夜や休日に時間を作って執筆を進めているようです。
執筆する場所は自宅
回答者の多くが主な執筆場所に自宅をあげています。自室や書斎(執筆部屋)、リビングなどで小説を書いている人が圧倒的多数。気分転換に喫茶店やインターネットカフェで執筆する人もいるようですが、基本的には自宅で作業をしている方がほとんどでした。
※詳しくはこちらの記事をご覧ください
小説家の作業環境
小説家になるために必要なのは「才能!」だと思っている方も多いようですが、天賦の才を持つ小説家は一握りです。多くのプロ小説家は編集者と協力して足りない部分を補い、良い部分を伸ばしながら、コンスタントに作品を生み出しています。一人ですべてを担うわけではありません。自分には才能がない、なんて決めつけず、小説家になるために必要な能力を育てるための勉強をしていきましょう。
文章力を上げるのに効率的な練習法は「読む」そして「マネする」です。読者として楽しみながら読むことも大切ですが、文章力向上のためには以下を意識して読むようにしてください。
ジャンルやレーベルの傾向を知ることは新人賞に応募する際の道しるべになりますし、書きたい物語の方向性を定めるために役立ちます。また書き写すことでプロのテクニックや技法を体感できるので、新しい発見が得られるのです。 面白かった作品の後日談を書いてみるのは良い勉強になります。プロの文章を自分なりに応用することで文章力が向上するうえ、新しい物語が生まれるので、自分の作品のテーマが見つかることも。もちろんこれらを世に向けて発表するのは著作権的にNGですが、確実に力が付く方法なのでぜひお試しください。 |
語彙力を上げるためには、言葉選びに迷ったら「類語辞典」を使うのがオススメです。 常に違う言い回しを知ることで、たくさんの語彙が自然に身に付きます。また空いた時間にスマホでニュースをみることや、本をたくさん読んでさまざまな言葉にふれることで、新しい言葉のストックができていきます。知らない言葉は辞書を引いたりインターネット検索をしたりしながら、たくさんの生きた言葉に触れましょう。 |
※小説の語彙力を鍛えるための具体的な勉強方法は以下の記事をご覧ください
小説に必要な語彙力の増やし方・向上方法
これらを身につけるためにも、やはり「読む」ことが大切。なかでも「文学」を読むのが効果的です。
文学作品を読むことで、美しい文章の形やセリフと地の文のバランス、伝わりやすい描写の方法などが自然に学べます。 行間を読む「読解力」を鍛える 文学作品とエンタメ作品の大きな違いは「言外の意図」の存在です。「わかりやすさ」を大切にするエンタメ小説に比べ、文学作品には「行間」を読ませる演出が多く使われます。 行間を読み、言外の意図を理解するには「読解力」が必要です。文学作品をたくさん読んでいくと、この読解力が身に付いてきます。 ぼかしを補う「想像力」を鍛える ぼかしとは以下のような物事の詳細をあえて語らない手法です。
これらを明確に説明せず、答えを読者に投げかけることで、じっくり想像させ、深く考える余地を残した作風は文学作品に多くみられます。エンタメ作品を書きたい方も、ぜひこのぼかしを味わい、想像力を鍛えてください。 「行間」を読む読解力があれば、登場人物の繊細な心の機微を描けるような、表現力、描写力の向上につながります。また「ぼかし」を楽しむ想像力は、小説の発想に役立つため、ぜひ文学作品に触れてみてください。 |
※表現力・描写力・想像力に効果的な古典文学の読み解き方について詳しくは以下の記事をご覧ください
小説の語彙力・表現力・発想力を「名作」から学ぶ! おすすめ小説を分析
プロ小説家を目指すなら、読者を意識して作品を書くことが大切です。「読者が求めているもの」「読者が楽しいと感じるもの」を物語のなかに自然に取り込んで提供できるか、というのがプロ小説家としての手腕です。
自分の作品を誰に読んで欲しいのか、どんな人を楽しませたいのかを明確にして「求められているものは何か」を徹底的に考えるビジネス力を身に付けましょう。 プロの小説家とは、出版社から依頼を受け、報酬を得て作品を仕上げます。報酬を受け取り、仕事をすることには「責任」が発生し、それがプロとアマチュアの決定的な違いと言えます。 作品の質を保つことと締め切りを守ることはプロ小説家の義務ですが、その上で売れる作品をコンスタントに生み出す、という責任感が重要になってきます。何が売れるかというビジネス視点は常に持っておきたいものです。 |
プロの小説家に必要なのは「根性」です。一度書き始めた作品を必ず最後まで書き上げる、という根性と「あきらめない心」。実はこの「根性」と「忍耐」こそが一番重要な能力といっていいかもしれません。
小説家志望者であっても、「作品を最後まで仕上げること」には大きな意味があります。あきらめない心を養うためには「書き続けることが当たり前になる状況」を作っていくのが一番。毎日少しずつでも書く、毎日パソコンの前に座る、などの習慣をつけましょう。 |
プロの小説家を目指しているからといって、人間関係、社会経験、恋愛、仲間との付き合いなどをおろそかにしてしまうのはとてももったいないことです。
キャラクターにリアリティを与えるためには、人の心がどんな風に動くのか、何を思いどう行動するのか、という視点が不可欠です。魅力的キャラクターを生み出すためにも、小説家は人間についての理解を深めておく必要があるのです。 |
情報収集は「小説執筆」の基本です。小説のアイディアは「情報収集」をしなければ生まれないもの。常に「面白そうだな」と感じる好奇心のアンテナは立てておきたいものです。
私たちはテレビのニュースやSNS、インターネット記事など、特に意識しなくても日々様々な情報に触れています。ただ受け流すだけでなく、その中から1つでも多く新しい情報を集めるよう意識してみましょう。 コツは関心を持った情報の「キーワード」と「その意味」を覚えておくようにすること。そうするとインターネットや辞典などで詳しく調べられます。基本的には広く浅く、知識を深めたいと思ったら深堀して情報収集する習慣をつけましょう。 |
※小説の情報取集の具体的な方法が知りたい方は以下の記事をご覧ください
小説のネタ・アイディアは「身近なところ」から集めよう|情報収集
小説家になるには、以下のルートがあります。
※以下の記事で詳しく解説していますので、小説家デビューの方法、手段を知りたい方は以下の記事をご覧ください
小説家デビューの方法一覧|どんな人が向いてる? 独学でも大丈夫?
小説が出版されて読者の手元に届くまでには、いくつもの工程があります。
1.「企画」を立てる→プロット作成
企画に関わるのは編集者。小説家は編集者とともに作品の企画を考え、出版会議にてGOサインが出てはじめて出版に向けて調整開始です。
小説家はプロットを作成し、企画が通れば執筆を開始します。
2.執筆→校正
プロットにそって執筆を開始し、書き終えたら、校正(チェック)が入ります。ここで関わるのは編集者や校正者、校閲者です。原稿ができあがると、作品は小説家の手を離れます。
3.イラスト・挿画・デザイン
(原稿執筆と並行して進めるケースもあります)
編集者は「どんな表紙にするのか」「挿絵はどのページに入れるか」など、イラストレーター、デザイナーと打ち合わせを行いながら決めます。小説家はイラストに間違いがないかを確認します。
4.印刷→出版
印刷を経て、いよいよ販売。出版社営業、取次業者、販売店などを巻き込んで、ようやく小説は店頭に並ぶのです。
※小説家の仕事の流れについて詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください
小説出版の裏側|編集者との関係と本が出版されるまでの流れを紹介
社会人だから、主婦だから、忙しくてなかなか書けない……
なんて、夢をあきらめる理由にしてしまうのはもったいないことです。できることから少しずつはじめて、珠玉の1本を書き上げる力を付けて行きましょう。
そんなこと言っても、才能も時間も無いんだよ……
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監修|榎本 秋
1977年東京生。2000年より、IT・歴史系ライターの仕事を始め、専門学校講師・書店でのWEBサイト企画や販売促進に関わったあと、ライトノベル再発見ブームにライター、著者として関わる。2007年に榎本事務所の設立に関与し、以降はプロデューサー、スーパーバイザーとして関わる。専門学校などでの講義経験を元に制作した小説創作指南本は日本一の刊行数を誇っており、自身も本名名義で時代小説を執筆している。
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