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小説原稿の書き方-執筆の基本ルール|文章力向上のコツも紹介!

小説原稿の書き方には「基本ルール」があります。基本的な文章や縦書き原稿ならではのルールを知ることは、小説を書くための第一歩です。

今回はWeb上で発表する作品との違いや、小説文章に重要な「シンプルでわかりやすい」文章が書けるようになるコツをご紹介します。

※小説の書き方、何からはじめればいいの?という方は以下の記事をご覧ください
小説の書き方【初心者必見】はじめの一歩から完成まで

本になる小説は「縦書き」が基本

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小説家志望者のなかには、すでに個人ブログや小説投稿サイトなどで作品を発表している方も多いのではないでしょうか。

Web上で発表される作品は主に横書きですが、本として出版される作品は縦書きが基本になります。小説家を目指しているのならば、縦書き原稿の基本ルールを覚えておきましょう。

縦書きで小説を書くときの基本的なルールは以下です。

行頭は一字あける

書き出しや改行後など、文章のはじめには一字分の空白を設けましょう。ただし、会話文でカギ括弧(「」)を使う場合には、空白は必要ありません。

句点は「」の最後にはいれなくていい

文章の終わりに句点(。)を入れるのは基本ルールです。ただし、「」の中にある文章の最後には句点を入れなくてもよい、という決まりがあります。

感嘆符の後に句点はつけない

感嘆符(!)や疑問符(?)の後に句読点はつけません。これらの文章記号で一文を締めくくる場合には、感嘆符や疑問符で文を終わらせます。

感嘆符と疑問符の後ろは一字開ける

感嘆符(!)と疑問符(?)の後は、一字分の空白を設けます。しかし、句点と同じく、「」の中の終わりに来るものに関しては、その必要がありません。

数字は基本「漢数字」で

縦書き原稿において、数字を入れる場合は漢数字を用います。ただし、固有名詞や紙のサイズを表す「A5」など、漢数字で表記するとわかりにくくなるものは、アラビア数字を使用してもいいというルールになっています。

三点リーダーとダッシュは偶数セットで

三点リーダー(…)とダッシュ(ー)は、偶数でならべて使うのが基本です。「……」「――」のような形になります。

カギ括弧の中に入れるなら二重括弧

登場人物のセリフの中にほかの人物のセリフが入るような場合は、カギ括弧の中にさらにカギ括弧を入れて表現することになります。そのとき中に入るカギ括弧は「二重括弧『』」にする、というのがルールです。

小説の書き方、文章のポイント・使い方のコツ

小説のための文章は、「わかりやすさ」が肝心です。作者の頭の中にある物語の情景を、正確にわかりやすく読者に伝えることを最優先に考えましょう。

新人賞の一次選考で「文章の拙さ」が理由となって落選するケースは多いものです。この場合、多くは独りよがりであったり相手に上手く伝えられていなかったりすることに原因があります。

とくにエンタメ小説において求められるのは「シンプルでわかりやすい文章」です。

ではどのような部分に気をつければいいのでしょうか。国語表現の決まりごとから、とくに覚えておきたい「基本ルール」をご紹介しましょう。

※文法の基本についてはこちらの記事もご参照ください。
プロ小説家への一歩は「文法」から! 文章力が向上する書き方【基本・初級編】

主語述語はわかりやすく、修飾語を使い過ぎない

読者にとって理解しやすい文章を書くためには、「主語・述語の関係」がわかりにくくならないような工夫か必要です。

  • 主語とは、文章の主体:誰が、誰を、誰は、など
  • 述語とは、主語を受ける部分:どうした、どうなった、など
  • 修飾語とは、文章や言葉を飾るもの:新しい、きれいな、など

文法の基本として上記のものがありますが、なかでも重要なのは「主語」です。主語さえハッキリしていれば、ほとんどの文章は読みやすくなります。

そうはいっても、すべての文に主語をつけると、文章がうっとうしい印象になりがちです。そして修飾する言葉がなければ、味気ない文章になってしまうでしょう。

主語を適度に省略したり修飾語を上手に活用したりして、文章にバリエーションを持たせつつ、「この文章の主語がどこか」に意識をおいて書くのが大切です。

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修飾語の使い過ぎに注意

修飾語を使いすぎると「長い一文」ができあがり、文章が理解しにくくなります。

例文
彼女は弾けるような笑顔を見せながら、真夏の海のように鮮やかな明るい青色のワンピースの裾をふわりと広がる帆のようにひるがえし、軽やかに立ち去った。

上記は修飾語を使いすぎた悪例です。まず主語と述語が、遠く離れてしまっています。主語「彼女は」と述語である「立ち去った」がこの文章のなかで一番重要な部分です。

「彼女が立ち去った」ことをより印象的に表現するために、修飾語を使いすぎて本質の読み取りにくい文章ができてしまいました。

例文
青色のワンピースの裾をふわりとひるがえし、笑顔を見せながら軽やかに彼女は立ち去った。

修飾語を抑え、主語と述語を近づけたことでわかりやすい文章になったのではないでしょうか。

漢字の割合が多いと「堅い」ひらがなばかりでも読みにくい

小説の文章にどれだけの漢字を使うか、はたまた「ひらく(ひらがなで書くこと)」のかというのは重要な課題です。1ページ中に漢字の割合が多いと「堅い」イメージをあたえる文章になります。逆にこれが少ないと「やわらかい」印象に。

漢字ばかりでも読者の負担になり、ひらがなばかりでも読みにくいものです。バランスをみながら調整する必要があります。

一文を短めにすると読みやすさがUP!

エンタメ小説はわかりやすさが大切なので、一文は短めに設定したいもの。切ると意味が伝わらなかったりどうしても切りたくなかったりするようケースもあるでしょう。その場合でも「三行以上」になったら切る工夫をしましょう。

読点を使う3つのタイミング

読点(、)は一文を区切って読みやすくするために使う記号です。

読点の使い方には正式な作法がありません。それでもわかりやすい文章を書くためには、とくに「読点」の使いどころが重要になります。

読点の使いどころ・その1

読点を打つタイミングは、基本的に声に出して読んだときに「息継ぎ」をする場所、というふうに覚えておくといいでしょう。迷ったら音読するのがオススメです。

読点の使いどころ・その2

接続詞の次に読点を打つというのも一般的です。文のはじめの「しかし」「つまり」などが接続詞です。

「上記のように」「それが基本となり」というような文をつなぐ言葉の後にも読点を打つと、読みやすくなります。

読点の使いどころ・その3

読点には「意味を区切る」効果があります。「ここからここまでは同じ意味ですよ」「ここからは別の意味になりますよ」という文の構造として、読点を打つのもオススメです。

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「重なり」に気をつけよう

「重なり」があることで、文章が拙いものにみえてしまうことが多いものです。よくない重なりをみていきましょう。

音の重なり

まず、気をつけたいのが「音の重なり」です。

  • 「彼女の肩の上の蝶」
    上の文章を見ると、とてもぎこちない印象を受けるのではないでしょうか。
  • 「彼女の肩にとまった蝶」
    このように変えてみると、いくらか表現が洗練されます。

「~の~の~の~」や「~に~に~に」というのはついついやってしまいがちな悪文です。どうしても言い換えが難しいケースもありますが、なるべく注意して表現を変えましょう。

「の」は連続しやすい助詞として注意しておきたい部分ですが、他にも「から」などが意外と続きやすいので要注意です。

意味の重なり

次に注意が必要なのは「意味の重なり」です。「満天の星空」「アメリカに渡米する」などがその例。

「天」は「空」という意味なので「満天の星空」は同じ意味の言葉が2回重なっています。そして渡米するのだから、行き先はアメリカに決まっているのです。なるべく言葉の意味を考えて言い換えるようにしましょう。

言葉の重なり

文章のなかで、同じ言葉が何回も出てくると、うっとうしい印象になります。この「言葉の重なり」にも気をつけたいところです。

たとえばキャラクターの名前や、固有名詞、物の名前などが何度も1つの文のなかで連呼されると、「いやもう知っているよ」と呆れた気分になることも。

ほかにも、主人公が泣いているシーンで「むせぶ」「落涙する」「嗚咽をもらす」など、似たような意味を持つ言葉が何度も重なって出てくると、くどい文章になります。

文章のなかで主に「助詞」の使い方に違和感がある場合「『てにをは』がおかしい」という表現が使われます。

  • その仕事の依頼は上司に通して私のもとを舞い込んできた。

上記の文では助詞「に」と「を」の使い方が間違っています。

  • その仕事の依頼は上司を通して私のもとに舞い込んできた。

接続詞と同じように、異なる助詞を使うことで文章の意味が変わってしまう場合もあります。

  1. 彼女は名前を呼ばれた。
  2. 彼女も名前を呼ばれた。
  3. 彼女だけ名前を呼ばれた。

1は「名前を呼ばれた」という事実を述べています。「彼女」が一人でも成立する文章です。

2と3は「彼女」が誰か他の人と一緒にいなければ成立しない文章になっています。

2は「彼女も」なので「彼女」のほかにも誰かが名前を呼ばれているようです。

3は「彼女」のほかにも誰かがいるけれど、「彼女」しか名前を呼ばれていません。

このようにたった1文字2文字でも助詞が支えている「意味」の部分は文章に大きな影響をあたえます。違和感がないかしっかりと確認しましょう。

接続詞の多用に注意

文章の流れをよくするために、上手に使用したい「接続詞」ですが、多用しすぎるとかえって読みにくくなるという側面もあります。

例文
スーパーマーケットの開店前に店舗の入口に立った。なぜなら特売のたまごを手に入れるためだ。けれど、駐車場には車も人もほとんどいない。ただし、店の前を清掃している店員とすれ違った。

二文目以降、全ての文章の頭に接続詞がついています。言い回しがくどく理解が難しい文章に感じられるのではないでしょうか。この文章から余分な接続詞を取り除いてみましょう。

例文
スーパーマーケットの開店前に店舗の入口に立った。特売のたまごを手に入れるためだ。けれど、駐車場には車も人もほとんどいない。店の前を清掃している店員とはすれ違った。

2つ接続詞を外しても意味が通じる上、スムーズに読める文章になりました。

文章の頭に必ず接続詞をつければいいというわけではなく、読み心地のいいリズムを作ることを意識して、接続詞を効果的に使いこなしましょう。

美しい文章よりわかりやすい文章を!

はっと息をのみ、心を奪われる……。美しい文章にはそんな力があります。それでも、小説の文章で優先したいのは「わかりやすさ」です。

とくにエンタメ小説の読者は、美しい文章など求めていない場合が多いものです。読者は魅力的なキャラクターや没入できる世界観、ハラハラドキドキのストーリー展開を待っているのです。

読者がストレスなくイメージできるわかりやすい文章を書けるように、基本的なルールを知っておきましょう。

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監修|榎本 秋

1977年東京生。2000年より、IT・歴史系ライターの仕事を始め、専門学校講師・書店でのWEBサイト企画や販売促進に関わったあと、ライトノベル再発見ブームにライター、著者として関わる。2007年に榎本事務所の設立に関与し、以降はプロデューサー、スーパーバイザーとして関わる。専門学校などでの講義経験を元に制作した小説創作指南本は日本一の刊行数を誇っており、自身も本名名義で時代小説を執筆している。

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