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アイディアの発想方法はビジネスに学べ・5つの発想法

小説のアイディアは毎回、天から降ってくるわけではありません。継続していいアイディアを出していくためには工夫が必要になります。

そこで参考になるのが「ビジネス」で使われる手法です。小説のアイディアをどんどん出さなければならない小説家と、常に新しい商品やサービスのアイディアを求められるビジネスの世界はよく似ています。ここでは、ビジネスの世界でよく活用されている5つの発想法をご紹介しましょう。

一人で考えるときにも使える「ブレインストーミング」

小説 アイデア ビジネス フレームワーク

ブレインストーミングは複数人でおこなう会議の手法です。会議室に集まり、制限時間を設けて、1つのテーマについて思いついたアイディアを出し合います。他者の考え方を知り、1つのアイディアから連鎖的に新しい発想を生み出せることが大きなメリットです。

ブレインストーミングのメリット

  • 1つのテーマについて時間を決めえて考える
  • アイディアをたくさん出し、否定せず広げる

誰かと一緒に考えていると、多くのアイディアが飛び出すもの。これを記録する方法として、小説のプロットを同志に見せ、意見をもらう場面で使えます。プロ作家の場合は編集者と一緒におこなう作業です。アマチュア作家の場合でも、創作仲間とお互いに意見を出し合うときに利用できます。

ブレインストーミングで、気を付けたいのは「否定的な指摘出しをしない」こと。なぜかというと、否定をしたら話がその場で終わってしまい、発展しないからです。なるべく自由に偏りのない意見をたくさん集めましょう。

「できるだけ多くの意見を出す」「否定をしない」ブレインストーミングの大切なポイントはこの2点。こういった考え方は、一人で思索する場合にも役立ちます。アイディア出しの段階では、なるべく思いつく限りのアイディアを出しきることが重要なのです。

とりとめのないアイディアを分解・整理する「KJ法」

小説 アイデア ビジネス フレームワーク

ブレインストーミングで出されたアイディアをもとに、情報を分析する方法が「KJ法」です。KJ法はバラバラなアイディアをまとめ、テーマの本質を明らかにするためにおこなわれます。

とりあえずたくさんの意見を出すことがブレインストーミングの目的でした。ここで出たまとまりのないアイディアを、1つずつカードや付箋に記入して、同じカテゴリーでくくって見出しを付けます。そしてその見出しをもとに各アイディアの関連性を図にしていく流れです。最後に全体を見て、文章として起こし、整理します。

KJ法のメリット

  • 情報をカードに書くことで適切なグループへ分割、理解しやすくなる
  • 関係性のある情報をグループに分けることで全体を整理できる

KJ法ではブレインストーミングで出てきた雑多なアイディアを、関連性のあるグループごとに分けて整理します。これは、創作の世界でも大いに役立つ方法です。

KJ法のやり方ははじめに、これから書く物語に関わるアイディアをカードに記入します。「1枚に1アイディアを原則とすること」「文章で書くこと」コツはこの2つです。

アイディアを書いたカードを「キャラクターの特性」に関するもの「主人公が立ち向かう問題」など、その要素ごとに分類します。そしてグループごとに名札(見出し)をつけましょう。

後は、グループにならなかったものや、小さなグループをまとめて大きなグループになるかどうか考えてみましょう。決まったら、大きなグループどうしの関係性を考え、そこから生まれる物語のプランを書きとめます。このように1つのアイディアからどんどん発展させていきましょう。

小説のジャンルやテーマへの理解を深める「シックスハット法」

小説 アイデア ビジネス フレームワーク

議論をしていると、さまざまな立場からあらゆるアイディアが出てくるなかで、意見が対立したり論点がずれてしまったりすることはよくあります。そのような課題をクリアするために会議でよく使われているのが「シックスハット法」です。

参加メンバーは6色の帽子 (シックス・ハット) から同じ色のものをかぶって、その段階(色) ごとに話し合いをはじめます。段階 (帽子の色)が変わる ごとに視点や思考を切替え、全員が同じ方向を向いてアイディアや意見を出し合うのが特徴です。

そのため、参加メンバーの間で意見や論点が定まらないとき、かみ合わないときなどに、参加者全員の視点を揃える方法として有効でしょう。

議論の場だけでなく、一人で考えているときも同じです。テーマの視点を切り分けて、1つの方向性からテーマを検討していくので考えの軸にブレが出にくくなります。「今、なにについて話すのか」をはっきりさせるのと「長所と短所を同時に話さない」ことで主題がズレるのを防ぎます。

  • 青の帽子=検討テーマ
  • 白の帽子=事実、客観的情報
  • 黄の帽子=長所、肯定的意見
  • 黒の帽子=短所、否定的意見
  • 緑の帽子=(黄の意見を受けて)そこから発展したアイディア、代替え案
  • 赤の帽子=(黒の意見を受けて)好き嫌いの感覚

シックスハット法のメリット

  • 小説のジャンルやテーマを掘り下げられる
  • 多様な視点から考えることで柔軟な発想が得られる

シックスハット法は自分の書こうとしている小説のジャンルやテーマについて、理解を深めるために活用できる方法です。

より柔軟な発想でアイディアを生み出すためには「水平思考」が大切です。これは問題解決のために、既成の理論や概念にとらわれない発想を引き出す考え方。さまざまな視点から思考することで、柔軟な発想が生まれます。

「検討するテーマ」「客観的事実」「肯定的な意見」「否定的な意見」「発展的な意見」「個人的な趣向」

指定された内容について、これらを順に考えていくことで、アイディアが整理されるのです。
ファンタジー小説が書きたいけれど、書きたい設定が色々ありすぎていい切り口が見つからないときなどに役立ちます。

「ファンタジーの魅力は壮大な世界観。ファンタジーは現実離れした印象があると言われる……」

掘り下げていくことで「そのジャンルの魅力や弱点」「どうすればおもしろくなるのか」という課題の明確化ができます。これにより、デメリットを克服する革新的なアイディアも生まれやすくなるのです。

アイディアを広げるフレームワーク「SCAMPER法」

「SCAMPER法」は、7つの質問を用いて、アイディアを発想していく方法です。

  • S(Substitute):代用=他のアイディアと置き換えできる?
  • C(Combine):結合=他のアイディアと組み合わせられる?
  • A(Adapt):応用=似ているものや過去のアイディアを使える?
  • M(Modify):変更=アイディア内の要素を変更できる?
  • P(Put to other uses):ほかの用途=別の用途に使える?
  • E(Eliminate):削減=余分なアイディアを削れる?
  • R(Reverse・Rearrange):逆転・再編成=順番、組み合わせを変えられる?

アイディアの視点や着眼点に多角性を持たせられる方法です。製品やサービスについての考え方に特化しているようにみえますが、創作にも大いに活用できます。

SCAMPER法のメリット

  • 柔軟な視点(違った視点)で考察できる
  • アイディアの掘り下げができる

1つのアイディアに対してより深く掘り下げていきたいときや、柔軟な視点で考えたいときに活用できる方法です。各チェックポイントに沿って考えられれば、これまでとは違ったアイディアが生まれてくる可能性も期待できます。

小説のアイディアに応用する場合の例

  • この物語の主人公は他のキャラにしてみようか(S:代用)
  • 別のジャンルの要素を合わせたらおもしろくなるかも(C:結合)
  • 前に考えていたアイディアを使えないか(A:応用)
  • 世界設定を変更したほうがテーマにつながりやすいかも(M:変更)
  • これは小説よりも漫画のほうが合っているかも(P:ほかの用途)
  • このエピソードはテーマとの関連性が薄いので削除しよう(E:削除)
  • 主人公やヒロインの特性を変えてみよう(R:逆転・再編成)

連想ゲームのような手法「マインドマップ」

マインドマップは思考の流れを「中心となるテーマから分岐させていく」方法です。白紙の中心にテーマを書き、そこから枝葉を広げるように、矢印をのばしてアイディアを書いていきます。ゲーム感覚でアイディアを広げられるのが特徴で、エンターテインメントのクリエイターがよく使う方法です。

マインドマップのここが使える!

  • 連想ゲーム的にアイディアが広がる
  • 関連するアイディアがたくさん出てくる

1つのテーマから広げていく形でどんどんアイディアを書いていくと、そこから連想が生み出されます。ただの連想ゲームになってしまわないように、テーマやコンセプトを強く意識しながらおこないましょう。

ビジネスのフレームワークを使ってアイディアを生み出そう

小説 アイデア ビジネス フレームワーク

新しい商品やサービスのアイディアを常に求められるビジネスと、新しい創作のアイディアを探し続けていく小説家の仕事。両者とも「日常的にアイディアを提案し、作品(商品・サービス)へと結びつける」という面でよく似ています。

いいアイディアを生み出し続けるため、ビジネスのフレームワーク(思考の枠組み)を学んでおくことはいずれ、創作の役に立つでしょう。

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監修|榎本 秋

1977年東京生。2000年より、IT・歴史系ライターの仕事を始め、専門学校講師・書店でのWEBサイト企画や販売促進に関わったあと、ライトノベル再発見ブームにライター、著者として関わる。2007年に榎本事務所の設立に関与し、以降はプロデューサー、スーパーバイザーとして関わる。専門学校などでの講義経験を元に制作した小説創作指南本は日本一の刊行数を誇っており、自身も本名名義で時代小説を執筆している。

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