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小説家に必要な視点と4つの心構え

小説家は、多くの人間が関わる商業流通のなかで仕事をします。そのためプロの小説家は、さまざまな責任を負うことになるのです。そのなかで品質を維持し、作品を生み出していくには「心構え」が必要です。

今回は小説家になるために必要な視点と心構えについてご紹介いたします。

プロ作家に必要なのは能力だけじゃない!

プロ小説家 視点 心構え
「情報力」「発想力」「構成力」「文章力」、小説家になるためにはこのような能力に磨きをかけることが大切です。

しかしそればかりではなく、これらを支える「心構え」がもっとも重要であることを忘れてはいけません。

「小説家は芸術家なのか、職人なのか」というのはよく話題にのぼるテーマです。たしかに自分の内なる世界を小説にたくし、作品を作り上げるという意味では芸術といえるのかもしれません。

しかしエンタメ小説家は、どちらかといえば「職人」に近い仕事です。書きたいものを思うように書く「芸術家」というよりは、依頼を受け、需要のありそうな作品を売るために書く「職人」といえるでしょう。

プロとアマチュアの決定的な違いは、商業流通のなかで依頼を受けて仕事をし、報酬をもらうという部分です。作品が売れないと、商業流通に関わる多くの人々に迷惑がかかってしまいます。

そのため常に意識するべきなのは「自己実現」よりも「読者はどんなものが読みたいのか」「どうすれば楽しませられるか」ということなのです。

プロ小説家に必要な視点その1「読者目線」

プロ小説家を目指すなら、読者を意識して作品を書くことを学ばなくてはなりません。

  • 昔から愛されてきたような「王道ストーリー」「王道キャラ」
  • 流行している舞台設定やキャラクター属性
  • 恋愛、アクション、バトル、お色気など読者の関心を引く要素

これらの「読者が求めているもの」「読者が楽しいと感じるもの」を物語のなかに自然に取り込んで提供できるか、というのがプロ小説家としての手腕。そのために考えておきたいのは、自分の作品が「どこの誰を楽しませるのか」という部分です。

  • どんな年齢層の人か
  • どんな作品が好きな人か
  • どんな趣味がある人か

上記のように、ターゲットについて具体的なイメージを定めるといいでしょう。その読者の顔が浮かぶくらい明確なイメージを持って創作にあたるのが理想です。具体的に読者をイメージした作品作りを心がけましょう。

「苦手」にとらわれず広い視野で作品を作ろう

プロ小説家ならば、自分が苦手なテーマであってもそれに挑戦する姿勢が必要です。

  • アクションを入れればメリハリの出るシーンなのに入れない
  • 恋愛が絡んだほうがおもしろくなるのに避ける

アクションや恋愛は、得意不得意が表れやすいパートです。かといって、上記のように自分のこだわりや好みなどによって切り捨ててしまうようでは、プロ小説家として問題があります。多くの読者が好む要素だからこそ、好き嫌いでなく「この作品に必要なのでは?」という視点を持って、取り入れるかどうかを検討しましょう。

自分の好み? 読者の好み?

それでも、自分の書きたいものでないと筆がのらないよ、という考えもあるかもしれません。

たしかに自分が好きで書くものは、熱が入りますし、小説家の個性が出てくる部分でもあります。「好き」という気持ちが作品のおもしろさにつながる、というのもまた事実です。

読者目線で考えることはもちろん大切なのですが、そうはいっても人気が出ることばかりを意識して書いた作品はどれも「似たり寄ったり」になりがちな側面も。

だから、自分の好きなもの、書きたいものを書きましょう!

これまでしてきた話と違うじゃないか! という声が聞こえてきそうですが、そうではありません。

まず自分が好きなストーリーであることは大切です。売れる作品を作るためには、「何が好きで、どのようなこだわりがあるのか」という小説家自身の個性も大切な要因になります。

しかしそればかりでは商業的に通用しないので、そこに読者が好きになってくれる要素を入れ、読んでもらわないことにははじまりません。まず「読者」の目線になって考える必要があることを覚えておきましょう。

プロ小説家に大切な視点その2「商業流通の中にいる責任感」

プロ小説家の定義とはなんでしょうか。

  • 出版社から依頼を受け、報酬を得て作品を仕上げる
  • 小説が商業流通を経て読者の手に届く

この2つがあって、はじめて「プロ小説家」と呼びます。(ここではそのように定義しましょう)

なぜなら商業流通のなかで依頼を受けて、報酬を受け取り、仕事をするということはそれなりの責任が発生し、それがプロとアマチュアの決定的な違いだからです。

小説投稿サイトやブログなどで作品を発表していたり、コミックマーケットなどの同人誌即売会に参加していたりする方もいるでしょう。なかにはそれでプロ小説家以上に多くのファンがいて、収入を得ているかもしれません。しかし「依頼を受けていない」「商業流通のルートに乗っていない」ことからプロとは言い難いのです。

2つの条件を満たし、プロの小説家として仕事をしていると、そこにのしかかる責任は大きいもの。作品が売れない、締め切りに遅れる、このようなことがあれば多くの人々に迷惑がかかります。作品の質を保つことと締め切りを守ることはプロ小説家の義務です。これだけは念頭に置いておきましょう。

プロ小説家に必要な心構え4つ

商業流通のなかで、売れる作品を生み出し続けなければならないプロ小説家。そのような厳しい世界で仕事を続けていくには「心構え」が重要です。

プロ小説家が持っておくべき「4つの心構え」をみていきましょう。

書くことを習慣にする「あきらめない心」(その1)

プロの小説家に必要なのは「根性」です。このようにいうと、古い精神論だと一笑される方が多いかもしれませんね。

それでも、長編小説を書くという作業は1~2日でできるようなものではないのです。長い時間を費やすなかで、うまくいかなくて嫌になったり飽きたりして作品の質が下がるようではいけません。

また初心者にとっては、作品を最後まで仕上げることに大きな意味があります。1つの小説を書き上げたという自信と実績がうまれ、ストーリーのバランス感覚や文章のテクニックが得られるのです。

これには、一度書き始めた作品を必ず最後まで書き上げる、という根性と「あきらめない心」が必要だと言わざるを得ません。

あきらめない心を養うためには「書き続けることが当たり前になる状況」を作っていくのが一番です。

  • 短時間でも毎日書く
  • 毎日パソコンの前に座る
  • 通勤通学の途中にモバイル機器で書く

上記のような習慣をつけて徐々に時間を増やし、1時間集中できるようになれば作業の効率は大幅にアップするでしょう。

一度や二度の失敗で「折れない強さ」(その2)

小説を書いていると、イメージ通りの文章が書けなかったり作品を他人に否定されてしまうことがたびたびあります。それでも、プロならばすべてを受け止め、次に生かすような心の強さが大切です。

小説家を目指していると、思い通りの物語が作れなくて悩んだり新人賞に落選したりとつらい思いをすることもあります。たとえプロになれたとしても、大ヒット作品を生み出す小説家は一握りです。作品の売れ行きがよくないと次の作品を出すこともかなわない……ということもあります。またSNSや書評サイトなどで自分の作品が酷評されているのを目の当たりにすることもあるでしょう。

しかしプロ小説家ならば、これらの「つらい思い」を肥やしにして作品の質を向上させてやる! という心の強さがなくてはならないのです。

失敗や批判を気にしなければいい、という話ではありません。

  • 失敗したら、次に同じことをしないように対策する
  • 作品に対する批判が、的を得ているなら取り入れる

このように柔軟に対応できる気持ちが、プロ小説家に欠かせない「心の強さ」の本質なのです。

執筆以外の時間は「人間力」をはぐくもう(その3)

プロ小説家 視点 心構え

作品を書き上げることで小説家としての実力がついていくのは事実ですが、執筆以外の時間も大切にしたいものです。

プロの小説家を目指しているからといって、人間関係や社会経験、恋愛、仲間との付き合いをおろそかにしてしまっては、重要な「あるもの」を得られません。

それは、「共感させるストーリー」をつくるのに必要な「人間力」です。

キャラクターに命を吹き込み、まるで実在するかのように感じさせるには、人の心や行動がどのような動きをするのか、という視点が必要になります。

これは、描きたいキャラクターが異世界を生きるエルフでも、宇宙で暮らす異星人だとしても同じこと。私たちと同じような心の動きを軸にして、アレンジを加えながら描写することで読者に理解・共感されやすい人物像がうまれます。

そのため、小説家は人間について理解することが不可欠なのです。

執筆時間以外も大切にし、さまざまなことを経験する機会を持ちましょう。実際に体験したことがたくさんあると、フィクションのなかにも生き生きとしたリアルな描写ができるようになります。

流行への感度を高める「アンテナ」を立てよう(その4)

創作に打ち込むあまり、自分の世界にこもってしまうのはもったいない、というのは「世の中の流行」においてもいえることです。

とくにエンタメ小説においては、「読者目線」が大切だと前述しました。読者の読みたいものを知るには、昨今の流行をしっかり把握しておく必要があります。これは現在流行している小説の傾向、というだけではありません。

社会が今、なにを求めているのか、どのような風潮があるのか、というところまで見通しておきたいのです。

社会の動きに敏感に反応し、広い知識を持っていることが、プロ小説家としての感性を磨く材料になります。

プロの心構えを意識して小説家への道を進もう

プロの作家になるということは、商業流通のなかでたくさんの人々と関わりながら本を完成させること。そのなかで作品を発表し続けるためには4つの心構えが大切です。

毎日の習慣作りや流行への感度などを日頃から心がけ、プロへの道を進んでいきましょう。

 

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プロ小説家志望のあなたへ

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監修|榎本 秋

1977年東京生。2000年より、IT・歴史系ライターの仕事を始め、専門学校講師・書店でのWEBサイト企画や販売促進に関わったあと、ライトノベル再発見ブームにライター、著者として関わる。2007年に榎本事務所の設立に関与し、以降はプロデューサー、スーパーバイザーとして関わる。専門学校などでの講義経験を元に制作した小説創作指南本は日本一の刊行数を誇っており、自身も本名名義で時代小説を執筆している。

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