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オノマトペの効果や使い方は? 擬音語・擬態語で文章を伝わりやすく

小説を書くとき、オノマトペの使い方を意識できているでしょうか。そういえば、あまり考えたことなかったなという方も多いかもしれませんね。

普段の話し言葉にもよく登場するため、小説の文章にも何気なく使いがちなオノマトペ。読み手のイメージを膨らませ、印象に残りやすくする便利な言葉ですが、文章の質を上げるためには、ここぞという場所で効果的に使いたいものです。

ここではオノマトペの効果や使い方をご説明します。

オノマトペってなに?

オノマトペ
オノマトペとは擬声語(擬音語)や擬態語のことをいいます。「ぎくっ」「ガタガタ」「ザワザワ」など漫画でよく見かけるような効果音の描写の総称。小説の文章にオノマトペを使うことで、得られる効果はさまざまです。

  • 読者がイメージしやすい
  • 記憶に残りやすい
  • 短い文章でわかりやすく表現できるため、テンポを落とさない
  • 感覚に訴えかけてくるので「臨場感」がでる

上手に使いこなして小説文章のアクセントにしましょう。

擬声語(擬音語)と擬態語の違いは?

オノマトペは擬声語(擬音語)と擬態語の2種類に分類できます。それぞれの役割を詳しくみていきましょう。

擬声語(擬音語)とは

擬声語とは、実際に音として耳に聞こえるものです。人間や動物など生き物の声や、ドアの閉まる音、足音などを指します。

【例】
ワンワン、ドーン、パタン、トントン、コツコツ、ピッ、パチパチ

擬態語とは

一方、擬態語は実際には音として聞こえない、「状態」や「様子」を表す言葉です。日本語の特徴として、この擬態語の種類が非常に多いことが知られています。

【例】
さらさら、うろうろ、にやにや、こっそり

擬声語(擬音語)・擬態語の書き分けルール

擬声語はひらがな、擬態語はカタカナで書くのが基本的な表記ルールです。とはいえどちらに属するのかが曖昧なオノマトペも存在します。

よくみかける表現としては、「サクサクした食感」や「カンカンに怒る」など。

たとえば擬態語をカタカナで書いても、それを致命的なミスだと捉える人はほとんどいません。基本的な書き分けを知識として持っておくのは有用ですが、厳密にこだわる必要はないでしょう。自分の感覚に従って選んでも問題はありません。

オノマトペはどんなシーンで効果的?

オノマトペふわふわ
オノマトペを適度に使った文章は、とっつきやすく、読みやすい印象を与えます。少ない文字数でテンポよく状況を読者に伝えられるのも大きなメリットの1つでしょう。

オノマトペが特に効果的に働くのは、以下の3つのケースです。くわしくみていきましょう。

「触覚」を表現したいとき

「視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚」とある五感のなかでも、オノマトペで表現すると伝わりやすいのが「触覚」です。

【例】

  • 柔軟剤を使って洗濯したタオルの「ふわふわ」
  • 何層にも重なったパイ生地の「サクサク」

最近よく見かける動物などに対する「もふもふ」も同様、触った感じや食べ物の食感を表現するのに便利です。触覚で感じたことを言葉で説明すると、どうしても文が長くなりがちに。的確に説明するためには工夫が必要ですが、オノマトペなら一言で表現できます。

「感情」を表現したいとき

「しくしく」泣くのと「わんわん」泣くのでは、泣き声も感じている悲しみの大きさも違う印象を与えます。オノマトペは「人の感情や心の動き」「感覚」などを的確に伝えるのに便利なのです。

「喜び」の表現

  • 「いそいそ」→楽しみなことがある
  • 「ほくほく」→何かを手に入れて満足

「怒り」の表現

  • 「かりかり」→いらだっている
  • 「カンカン」→怒り心頭に発する状態

「かなしみ」の表現

  • 「しくしく」→静かに泣いている
  • 「わんわん」→大声を上げて泣いている

強く印象付けたい一文があるとき

オノマトペは感覚に訴えかけてくる言葉です。そのため一度聞くと記憶に残りやすいという特徴があります。文芸の世界でもオリジナリティー溢れるオノマトペが使われ、作家や作品を象徴するような強い印象を残します。

  • 宮沢賢治『やまなし』「クラムボンはかぷかぷわらったよ」
  • 中原中也『サーカス』「ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん

個性的なオノマトペは小説家の代名詞になるほど強烈な印象を与えます。しかし一瞬で状況が伝わらないと意味をなさないため、斬新なオノマトペをムリに作るのはオススメできません。

オノマトペの注意点|多用は禁物

オノマトペは、感覚や感情を端的に伝えるために有効です。しかし多用のしすぎには注意が必要。使いすぎると、文章が稚拙に見えてしまいます。

特にオノマトペを多用しやすくなるのが、戦闘やスポーツなどのシーンです。漫画では、バトル中に登場する言葉はオノマトペのみというケースも多くみられます。その影響もあり、ついついテンポのよさと迫力を出すために多用しがちなのです。

しかし絵で表現する漫画と、文章で表現する小説は根本的に違うもの。オノマトペの使い方も変わってくるので、注意が必要です。小説文章でオノマトペを多用すると、どうしても説明不足に陥りやすく、読者に「描写力がない」と受け取られることもあります。

文字だけで読者のイメージを掻き立てなければならない小説の文章では、説明不足、描写不足による「わかりにくさ」が命取りになります。読み手にストレスを感じさせないよう、しっかりした描写をするよう心がけましょう。

【例文1】
 バッターボックスに立った俺は、バットをギュッと握りしめた。9回裏2死満塁。1点のリードを許している。
スタンドもベンチもしんと静まり返っている。 ピッチャーがにやりと笑って、大きく振りかぶった。
ヒュン!
俺は白球をキッとにらみ、バットをブンッと振り抜いた。
カキーーン!
スタンドからワーワーと歓声が聞こえた。
【例文2】
 バッターボックスに立った俺は、バットを握る拳に力を込めた。9回裏2死満塁。1点のリードを許している。
スタンドもベンチも固唾を飲んで見つめているのか、張り詰めた静けさに包まれている。
ピッチャーが不敵な笑みを浮かべるや否や、大きく振りかぶった。剛速球が向かってくる。
俺は白球に全神経を集中し、バットを力いっぱい振り抜いた。
カキーーン!
スタンドから割れるような歓声が聞こえた。

【解説】
例文2では、「カキーーン!」のみを残して他のオノマトペを削りました。描写が増えたぶん、細かいニュアンスが伝わりやすくなったのではないでしょうか。

オノマトペに頼りすぎると文章が稚拙になり、詳細も伝わりにくくなります。なるべく描写で表現する工夫をしてみましょう。

描写力を鍛えるレッスン|オノマトペを使わない書き方

オノマトペワンワン
描写力を鍛えるためのレッスンとして、オノマトペを一切使わないで小説を書いてみるのもオススメです。練習方法は簡単。オノマトペになる部分を、別の言葉を駆使して表現するだけです。

  • ワンワン→「元気な犬の鳴き声」
  • プシュー→「空気の抜けるような音」

上記のような擬声語(擬音語)なら、そこまで難しくはありません。どんな風に聞こえるかのを思い出して、それを文章表現に置き換えればいいのです。

しかし擬態語の場合は少し難易度が上がります。擬態語は、普段から文章の中に溶け込んでいる場合も多いものです。そのため言い換えが難しいケースもよくあります。

  • うろうろ→「うろつく」
  • にやにや→「にやつく」

上記のような擬態語であれば、比較的言い換えやすいでしょう。「かさつく」「パサつく」など、一言ですむ言葉も多々ありますが、一歩踏み込んで表現するともう少し詳しくなります。

  • うろうろ→「あてもなく歩きまわっている」
  • にやにや→「不敵な笑みを浮かべている」

なかには「さらさら」など、言い換えがとても難しい擬態語もあります。「さらさら」のイメージは、キメの整った布の手触りや、粒子の細かい砂が指の間からこぼれる様子などでしょうか。

「触覚」を表すオノマトペは、他の感覚や情報を持ってこないとうまく言い換えられないケースが多い傾向にあります。「さらさら」なら、たった一言でその触感を想像できますが、これを使わずに的確に表現するのはなかなか難しいものです。

比喩的な表現を用いたり、触覚だけでなく、視覚や聴覚の情報を取り入れたり、さまざまな工夫をして、細かい描写をする必要があります。これは文章表現のレベルアップに欠かせない練習なので、ぜひ挑戦してみてください。

普段からオノマトペを別の表現で言い換える訓練もオススメです。特に広告や雑誌のキャッチコピーやグルメのレビューなどにはオノマトペが良く使われています。それらを参考にして、書き直してみましょう。

元の文章と比較して意味が変わっていないか、内容が伝わる文章になっているかというのを確認しながら行いましょう。

便利だけど多用は禁物、オノマトペを上手に活用して臨場感を出そう

短い言葉で感情を表現でき、想像しやすいオノマトペは便利な表現といえるでしょう。しかし使い方次第では、細かい情報を伝えられないばかりか、表現の幅を狭めてしまう危険性もあります。

オノマトペはここぞというときにうまく使いこなしてこそ効果的な表現。普段から描写力をしっかり鍛えることに重点を置いて練習しましょう。

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監修|榎本 秋

1977年東京生。2000年より、IT・歴史系ライターの仕事を始め、専門学校講師・書店でのWEBサイト企画や販売促進に関わったあと、ライトノベル再発見ブームにライター、著者として関わる。2007年に榎本事務所の設立に関与し、以降はプロデューサー、スーパーバイザーとして関わる。専門学校などでの講義経験を元に制作した小説創作指南本は日本一の刊行数を誇っており、自身も本名名義で時代小説を執筆している。

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