小説の発想力、ストーリー構成力は思いつきだけでカバーできるものではありません。日々練習を繰り返し、鍛えていかなければならないものです。
今回は、創作力・発想力のテクニックが向上する「ワーク」のやり方をご紹介します。
目次
小説を書くためには発想力、構成力が欠かせません。そこで思いついたアイディアはきちんと整理する習慣をつけたいものです。しかしノートにただ書き込んでいただけでは、創作に生かせるものも生かせません。
そこで役に立つのが、必要なポイントを表に書き込んで体系的にまとめる「ワーク」です。ポイントを順序立てて整理することで、発想が形になります。
創作力を育てるための練習として有効ですが、それだけでなく実際に物語を作るときにも役立ちます。このワークを1日30分行いましょう。
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表を使ったワークは毎日やるのが1番のコツです。回数をこなすことで創作力のレベルアップを実感できます。
※表は「起承転結のワーク」より
後ほど説明する「起承転結のワーク」を例にワークのやり方をみていきましょう。
表のワークを行うときのコツ・ポイントをみていきましょう。
思いついたものの、まだ形になっていないことや、そのままでは物語に使えそうもないアイディアはメモ部分に書き込んでいきましょう。
文字になったものをみているうちに、次々と生まれてくる別の発想も含めて記入してください。整っていなくてもいいのでどんどん書いていきましょう。
アイディアを表に書き込み、数多いあらすじを作っていると、本来重要な部分をつい省略してしまうことがあります。
ひょんなことから……などとごまかすのがクセになると、小説を書くときに苦労をしたり手が止まったりする原因に。物語の大枠(おおまかな部分)ばかりに注目し、具体的なエピソードを考える力が得られないのは致命的。上のポイントは物語の重要な部分です。しっかりと考えて決めたうえで、表に書き込みましょう。
表がすべて埋まったら、赤ペンで情報を整理します。余計な情報は横線で消し、矢印で必要な情報を追加。きちんと見直し、練り上げてこそ創作力アップの練習になるのです。
情報が整ったら、PCを使って清書していきます。活字で読み返すと、情報が多すぎたり少なすぎたりといった項目ごとの偏りに気づきやすいものです。どの要素に追加が必要か、余分なものはないかを再度精査し、あらすじを作成していきましょう。
これで表を使ったワークは一旦「完成」です。
最後にポイントを押さえて書けているか、方向性が適切かどうかを確認します。
下記で解説する「起承転結ワークのポイント」を参考に見比べ、確認してみましょう。
起承転結とは物語を4つのブロックに分けて考える手法です。表をみるとわかるように、4つの中で最も大切なのは「転」です。
すべてをキレイに4等分してしまうと、前半の「起」「承」の盛り上がりが少なくなるため、エンタメ小説では致命的。起承転結のワーク表を使って、「どんでん返し」の効果を小説に取り入れる練習をしていきましょう。発想力と構成力の向上につながります!
※起承転結について詳しくはこちらの記事をご覧ください
起承転結と序破急のポイントと応用|知っておきたいストーリー構成の作り方
このワークのポイントをみていきましょう。
どんな物語で、誰が登場し、どんな場所が舞台で、今どうなっているのかを書き込みます。(ポイント:出会い、組織への加入、目覚めなど)
起で語りきれなかった事情を明らかにし、キャラクターや物語の魅力を深ぼりしていきます。(ポイント:深まる、増える、激化、広がる)
起と承で書いた状況、方向性がガラリと変わる事件を起こします。ここで結末へ向かう準備に入りましょう。(ポイント:真実の露呈、裏切りの発覚、状況の逆転)
真実が明らかになる、決戦が行われる、目的が達成されるなど、転で一変した状況が決着を迎えます。(ポイント:目的の達成、決戦、旅の終わり、次へ)
<記入例>
主人公には片思いの女子がいる。しかし遠くから見つめるばかりで声をかけることすらかなわない。
そんななか学校では怪奇事件が頻発する。
彼女あてのラブレターを机の上に忘れてきたことを思い出し、深夜の学校に忍び込んだ主人公。教室で彼女と遭遇する。彼女は霊媒師だったことが発覚。主人公は彼女と怨霊の戦いに巻き込まれる。彼女に言われるがままに結界や祈祷の準備を手伝い、凶悪な怨霊を迎え撃つ。苦戦しながらも勝利する。
学校に平和が訪れる。主人公は彼女のパートナーとして、各所で頻発する怪奇事件に挑む決意をした。
起承転結のワーク以外に物語のテーマについて各ブロックでわけて考えるワークもあります。ぜひ挑戦してみてください。
<ヒーローズジャーニーのワーク>
※もっと詳しく知りたい方はこちらの書籍をご参照ください
『ストーリー創作のためのアイデア・コンセプトの考え方』
せっかくのワークなので、いつもなら書かないような物語の設定や、あまり興味のないパターンにも果敢に挑んでいきましょう。この練習で発想が柔軟になります。後々使えるアイディアを蓄積するという意味でも、幅広いシチュエーションでワークを行いましょう。
ワークを使ってあらすじが完成しただけでは納得がいかず、誰かに感想をききたい! という方がいるかもしれません。
この場合、注意してほしいことがあります。小説のあらすじや設定の良し悪しはプロ経験のある人でないと判断が難しいもの。適切な分析やアドバイスを求めているなら、友人や家族よりも、その道のプロを選ぶと間違いがありません。
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創作の仲間がいるなら、複数人でワークを行うのもいいでしょう。同じテーマに対して他の人はどんな発想をするのか知ることで、視野が広がります。アドバイスしあうのではなく、「こんな発想があるのか」「他の人はこう考えるんだ」という視点で発想の参考にするのがグループワークのコツです。
グループで出たアイディアを自分の作品に生かしたい場合は、きちんと相談してからにしましょう。権利問題で揉める可能性があるので、賞に応募したりWebサイト、ブログなどにアップしたりする場合は、作った人の許可が必要です。
各ワークにおいて発想のキッカケにも役立つのが「カード」のワークです。100枚のカードでできる発想力強化の方法をご紹介しましょう。
まず、よく読む小説やアニメ、マンガなどを参考に「単語を100個」選んでカードに書き、その中から3枚のカードを引きます。
やり方はたったこれだけ。3枚のカードから次の課題をこなします。
各項目を詳しくみていきましょう。
30分でできるだけタイトルを考えます。カードを3枚引き、キーワードを組み合わせて「タイトル」だけ作る練習を、1ヶ月行いましょう。
タイトル作成に慣れたら、簡単なあらすじまで考える練習を30分の中に組み込みます。いいあらすじができたらそれをより詳細にしていきましょう。この練習も1ヶ月行います。
次のステップでは、100枚のカードを他の人に作ってもらいましょう。自分では思いつかないようなキーワードが登場し、発想力のステップアップにつながります。
このワークのコツは、上記3つのステップを順に踏んでいくことにあります。最初はタイトルだけで精一杯。あらすじを作るところまで行かないかもしれません。
他人の作ったカードは、組み合わせるだけでも難しいでしょう。徐々に慣れながら工程を増やしたり、新しい刺激を増やしたりすることでどんどん発想力がついてくるのです。
仕事や学業が忙しく、なかなか勉強の時間を作れない方は、簡単なワークでもいいので毎日続けるようにしましょう。ここでは15分の空き時間があればできるワークを紹介します。
ニュースサイトを見て、知らない言葉があったらインターネットで調べましょう。何気なくみていると読み飛ばしてしまうような、馴染みのない横文字や難しい言葉に注目します。
また法律や制度についても、はじめて聞くようなキーワードが出てくるでしょう。さまざまな用語を理解すると、社会で必要な知識が集まります。
毎日「NHKのニュースサイトを見る」、そしてその都度「知らない単語、用語を調べる」ことが、このワークのポイントです。1年ほど続けていくことで、幅広い基礎知識が身につきます。
小説を書くときに、現代社会の常識やルールをよく理解していることは重要です。そうすると作品にも信憑性が生まれます。ぜひ生活習慣に組み込んでください。
通勤や通学などの移動中に簡単にできるワークがあります。目立つ広告や今まで気が付かなかったものなどをチェックするものです。
駅の通路、電車のなか、街中などで、目立っている広告やはじめて見るものをチェックしてみましょう。状況が許せば写真を撮っておくのもオススメです。
特にに最近は、店内のソーシャルディスタンスやマスク、店頭の消毒液など、これまでとはガラリと変わった世界が広がっています。
創作仲間や友人と、見つけたものを報告しあうのもいいでしょう。気づいた点を話し合い、メモを取っておくと創作のヒントになります。
「スキマ時間15分」で毎日やっておきたいのが「旬のキーワードを組み合わせてタイトルを考える」ワークです。その時の季節や旬のものを思いつくだけ挙げて、そこからタイトルを作ります。1日15分、時間を決めて行いましょう。
できたタイトルはキーワード順にExcelなどで並べていきます。続けていると、たくさん集まったタイトルの中から印象に残るものが出てくるはず。そこからキャラクターやストーリーが浮かんでくることも多いものです。
タイトルのアイディアはどれだけあっても困りません。将来、やっておいてよかった! と思う日が来るかもしれませんね。
小説を書くときに必要な「発想力・構成力」などの創作力は、ただぼんやり考えているだけでは鍛えられません。ポイントを押さえて「ワーク」をコツコツ行うことで、実力はしっかりついてきます。まずは1日30分、創作と向き合うことからはじめてみましょう!
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監修|榎本 秋
1977年東京生。2000年より、IT・歴史系ライターの仕事を始め、専門学校講師・書店でのWEBサイト企画や販売促進に関わったあと、ライトノベル再発見ブームにライター、著者として関わる。2007年に榎本事務所の設立に関与し、以降はプロデューサー、スーパーバイザーとして関わる。専門学校などでの講義経験を元に制作した小説創作指南本は日本一の刊行数を誇っており、自身も本名名義で時代小説を執筆している。
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