榎本メソッド小説講座

文章力向上の近道【プロがおすすめ】読むと文章力が上がる小説も紹介

小説の文章力を上げる方法として「創作経験を積み重ねる」ことは基本です。しかし「読むこと」も実は同じくらい大切なのを知っていますか?

たくさん読んでたくさん書く、これが小説の文章力を鍛える近道なのです。

今回は文章力を上げ、読者が唸るような小説を書くために知っておきたい、「読んで書く」練習方法をご紹介します。さらにプロがオススメする文章力アップの参考に最適な小説をも合わせてご案内! 巧みな文章をたくさん読んで、たくさん書いて、プロに一歩近づきましょう。

文章力を上げるのに効率的な練習法は「読むこと」

文章力を上げる秘訣は読むこと

「プロ小説家になれるだけの文章力が欲しい」「テクニックを身につけたい」と願っている方は多いはずです。

プロならではのテクニックが光る小説は、読みやすく読者の関心を引きます。

テクニックは執筆によって磨かれ、使いこなせるようになるものです。しかしテクニックは「創作経験を積む」つまり「ただ書いている」だけでは、なかなか習得できるものではありません。

プロの技を身に付けるためには「プロによる既存の作品にふれる」ことが、実は重要なのです。

練習のための読書法【ただ読むだけじゃNG】

プロの技を習得するためには「既存作品にふれる」=「読む」ことがいい勉強になります。しかしぼんやりと読んでいるだけで、文章がうまくなるわけではありません。

ここではどんな点に気をつけながら読めばいいのか、重要なポイントをご紹介します。

自分の書きたいジャンルの流行・独特の作法を知る(ポイント1)

プロ小説家への第一歩は、自分の書きたいジャンル・エンターテインメントについて知ること。商業出版の世界では、ジャンルごとに独特の作法だけでなく、お約束やパターン、ツボなどがあるものです。

具体的には、使用される語彙や知識、一文の長さなども少しずつ異なります。このような各ジャンルごとの「空気感」は既存作品を1、2冊読んだだけでは、把握できない可能性が高いでしょう。

また売れ筋/売れ線を把握するためにも作品にたくさん触れ、親しんでおくのが一番です。流行前から読むことで読者の熱が高まっていく過程や「リアルな感触」が掴めます。これは自分が執筆するときに活かせる大事な経験です。

1年に何十作、何百作と触れている人と数作しか触れていない人とでは「感触」を感じるセンサーに差が現れて当然だといえるでしょう。そのジャンルにたくさん触れることで獲得できる「感触」(ほんの一部ですが)が以下のものです。

  1. ジャンルの傾向
  2. どんな作品がウケているのか
  3. このジャンルの中で少ないパターンは何か

ジャンルに合った流れがなければ読み手(新人賞の選考委員や読者)の興味を引けず、面白がってもらえません。「どう活かしたらいいのか」「どのような効果があるのか」を考えながら読み、流れを掴みましょう。

テクニック、プロの技法を「盗む」(ポイント2)

既存の作品は、プロが持っているテクニックの全てをつぎ込んで作られたものです。商業流通で成功している小説は、いわばテクニックと技法の参考書といえるでしょう。作品を一読者視点だけでなく「参考書」として読むことで以下のようなテクニックや技法が、実践的に学べます。

  • 「こういう時にはこんな風に書く」
  • 「魅力的なキャラクター」
  • 「展開が気になるストーリー」

何も教えてもらえない弟子が師匠の技をじっと観察して技術を覚えた徒弟制度時代のように、作品を読むことでテクニックを「盗む」のです。

もちろん、まるっと話の流れやキャラクターを盗むのはNG。表現方法や、面白いと思った話の大まかな流れ、展開の描写などを参考とする程度に留めましょう。

「読んで書く」練習法に使えるオススメ小説はこちら↓
「キャラクターの魅せ方」の参考になる作品リスト

「ジャンル」のプロになるために読むべき作品とは?

普段からたくさん本を読んでいる人も、小説の勉強となると、どんな本から手をつければいいか迷ってしまうかもしれませんね。

好きな小説家の作品しか読まないんだよなー、というにおススメの方法は……

  • 「同じ小説家による別の作品」を読むこと!
  • 雰囲気が近い他小説家の作品

これならば楽しみながら、抵抗感なく読めるでしょう。

はじめてそのジャンルに触れる場合やとくにこだわりがなく、どこから手をつければいいのかわからないのなら、以下でご紹介するポイントを参考にしてください。

売れ筋、ヒットしている作品は必ずチェック(ポイント3)

最初はやはり、質が安定している売れ筋の作品から読むのがオススメです。

書きたいジャンルで売れている作品が、自分の興味や趣味ではないこともあります。しかし、売れ筋の作品に触れることは「読み手に買ってもらう」というマーケティング的視点において最も大切な要素です。

今の売れ筋から流行りのキャラクターの属性・特徴、テクニックを習得し、執筆に活かしましょう。

数冊読むことで、どのような仕組みや流れの作品を読者が好むのか、定番化しているストーリーパターンの分析も行えて、いい勉強になります。

定番作品はテクニック・必勝パターンの宝庫(ポイント4)

定番作品の多くには高確率で、「共通したテクニックやパターン」が存在します。それらの技法はジャンルの下地として、売れ筋の小説にも引き継がれている可能性が高いでしょう。パターンやお約束的な展開は執筆するときに大切な要素であり、知っておきたい情報です。

定番をしっかり押さえたうえで、お決まりのパターンを壊すのかそのまま活かすのかは執筆者であるあなたが決めること。

そのためにも、ネタ元を知らなければ話になりません。だからこそ定番作品を読むことは、アイデアの一端を吸収し、自分の創作に役立てるのに有効なのです。

「読んで書く」練習法オススメ小説はこちら↓
文章のテンポ、テーマ性、世界設定の妙「定番作品」から学ぼう

売上ランキングやネットの情報を確認(ポイント5)

定番、ヒットした小説はあらかた読んだ、という人は別の指標から探してみましょう。

各種通販サイトや近くの書店の売上げランキングも、「今」の読者が求める作品を知れる指標の一つです。通販サイト、レビュー専門サイト、SNSで多くのレビューや感想が書かれている作品も注目作なので読んでおくといいでしょう。これらは毎週、毎月、毎年更新されるので、最新の情報を追えるメリットもあります。

あえてマニアック・古い作品に触れる(ポイント6)

似たような作品や書きたいジャンルはあらかた制覇したが、売れ筋だけでは物足りないという人もいらっしゃるでしょう。

売れ筋以外の作品から文章力UPのきっかけを掴みたいのなら、少しマニアックな分野や数十年前に出た作品をオススメします。

同じジャンルでプロ小説家を目指す人々があまり触れない作品のため、定番やヒット作以上に得るものがあるかもしれません。他ジャンル作品の面白い要素を吸収し、そこから該当ジャンルには無い斬新さを見出しましょう。他者が触れない作品から発想を得ることが「オリジナリティ」のもとになるのです。

文章力向上に効く「読んで書く練習法」

音読してリズムをつかむ

読むだけでも十分に、伝わる文章のテクニックや売れる作品の要素を掴むことはできます。しかし、小説家として文章力のさらなる向上を目指すなら、読んで「書く」ことが大切です。

読んで「書く」練習方法には、2つの意味があります。

  1. 「文章をそのまま書き写す」
  2. テクニックや技法を体得するために「既存作品の続きを考え、執筆する」

1はそのまま書き写して文章構造を身に付け、小説の文章力を向上させる効果があります。2は既存作品の続きを考えることで、創作力を上げる方法です。ただし既存作品の続きを執筆したものを、外部に発表しないようにしましょう。著作権などの問題になることもあります。あくまで練習用として活用してください。

読んで「書く」勉強法で効果を得るための、具体的な練習方法をご説明します。

「模写(写経)」でトレーニング

文章力を向上させたいのなら、模写をしてみましょう。

文章のテクニックや流れるような展開、目で読むだけではなかなか習得できません。実際に手を使って書き写すことで「文章のテクニックや話の流れ」が記憶に刻まれるのです。

文章力の向上のためにオススメなのは、「文庫本まるまる一冊を手書きで書き写す」こと。

これはまるで「写経」のように、時間と精神力の両方が必要な行為です。その分しっかりと身に付いていくはず。とはいえ途中で投げ出してしまっては元も子もないので、自分のできる範囲にアレンジするのもアリです。

例えば、紙とペンではなくパソコンを使い、一冊ではなく短編、あるいは長編のうち一章だけ書き写すだけでもかまいません。それだけでも十分な効果が得られるはずです。

「音読」でトレーニング

もっと文章力を上げたい! という方にオススメなのが「音読しながら書き写す」ことです。

自分で書いた作品でも、声に出して確認すると、文章の変なところや重要なポイントが把握しやすくなりませんか。それと同じように、声に出しながら書くことで、手と目だけでなく耳からも情報が得られ、記憶に残りやすいのです。

誰かに聞かれると大変恥ずかしいため、時間と環境のハードルは高いものの挑戦するだけの価値はあります。

「読んで書く」練習法オススメ小説はこちら↓
美しい文章の基本ならコレ! 模写したい作品リスト

「既存作品の応用」トレーニング

作品を途中まで読んで「自分ならここからどんなオチにするのか」「この設定からどんな話を作るか」と考えるのは文章力だけでなく創作力の向上に繋がります。練習方法は簡単、既存作品のオチを自分で書いてみるのです。

予想はなかなか当たらないですし、いくらアレンジをしても元の作品以上のクオリティにはならないかもしれません。しかし、何度も挑戦することで創作のために必要な経験は着実に蓄積されるはずです。

「読んで書く」練習法オススメ小説はこちら↓
展開の巧みさを学ぶ! ストーリー構成の勉強になる作品リスト

「読んで書く練習法」の注意ポイントは

小説家として必要な文章力を磨く「読んで書く」練習法。メリットが多いので、文章力を上げたい方にはぜひとも試していただきたいトレーニングですが、注意点も。ここでご紹介するポイントに気をつけて取り組みましょう。

楽しむこと

執筆する前に、まず自分の書きたいジャンルの本を読んで「ファン」になることが大切です。作品を読むときは存分に楽しみましょう。

自分の書きたいジャンルで売れていたり、人気があったりする作品を読むのは辛いかもしれません。とくに書きたいジャンルと好きなジャンルが違う場合は、そういった思いが出てくるのは自然です。

しかし「好き」という想いは何をするにも大切な原動力です。いやいや読むと吸収できるものも吸収できませんよ。

「読む」練習ばかりでも小説はうまくならない

生活の時間を全て「読む」につぎ込まないように、時間配分には十分注意しましょう。「読んでばっかりで作品の執筆に時間が割けない」のでは本末転倒です。

また、あまりにも多くの作品に触れすぎたせいで以下のような副作用が出ることもあります。

  • 「どういう作品が良いものなのかわからなくなってしまった」
  • 「そもそも自分がどんな作品を作りたいのか見失ってしまった」

もともとそのジャンルが大好きで浴びるほど触れてきた人以外は「数をこなすほどよい」わけではありません。

  • 自分が混乱しない程度の本数に留める
  • 読む時間は通勤・通学時間だけにする

上記のように、自分なりのルールをしっかりと設けたうえで「読んで書く」練習法を実践しましょう。

アニメ化作品には要注意

「初めて触れるジャンルだが書いてみたい」と考えたとき、参考にしやすいのが「アニメ・ドラマ」化などのメディア化作品です。一見、参考作品としてもっとも効果的な方法だと思うかもしれませんが、要注意!

アニメ化は実際ヒット作の証です。ただ、原作がヒットする時期とアニメ化される時期は必ず一致するとは限りません

また、アニメ化されその放映が終了した結果、「作品の旬はもう終わった」というムードが漂うことも多いのです。

そういったムードでは、アニメ化作品が持つ要素は「かつてウケていた要素」です。「今ウケている、今ウケようとしている要素」とかなりずれてしまう可能性が出てきてしまいます。

どうしてもメディア化作品を参考にしたいのなら、この2つの観点で選びましょう。

  1. 小説やゲームなら漫画化した作品
  2. 漫画なら小説化した作品

アニメ化よりも企画として規模が小さく、メディア化とヒットする時期に差があまり生じないからです。

プロがおすすめ【読むと文章力が上がる】小説一覧

読むと文章力が上がる小説

ここでは「読んで書く」練習法にふさわしい名作をプロの目線からご紹介していきます。興味をひかれる小説が見つかったらぜひ課題図書にしてみてくださいね。

「キャラクターの魅せ方」の参考になる作品リスト

魅力的なキャラクターは小説の要です。既存作品を研究し、どんな描写が登場人物を光らせるのかに注目してみましょう。

角川スニーカー文庫 『涼宮ハルヒ』シリーズ 谷川流

キャラクターの魅力、レベルの高い一人称、仕掛けの多いストーリー構造など参考にできる部分が多くあります。

MF文庫J 『僕は友達が少ない』 平坂読

青春ラブコメの人気作。恋愛関係はもちろん、メインキャラクターたちそれぞれの事情、気持ち、物語の中の変化が丁寧で上手く表現されています。

電撃文庫 『ソードアート・オンライン』 川原礫

魅力的なヒロインたちはもちろんのこと、二刀流にして黒衣の剣士、主人公のキリトのかっこよさに痺れた読者は多いのだとか。

電撃文庫 『フォーチュンクエスト』深沢美潮

いわゆる異世界ファンタジー作品。しかし青春ものとファンタジーを組み合わせたようなキャラクターたちの精神性は、現在の若者に近い特徴があります。複数ジャンルを組み合わせた際、キャラクター作りの参考になるはずです。

有川浩の作品群

超人ではなく普通の、しかし強い意志やモラル、譲れないものを持った人々が頑張るさまを丁寧に描いているところがお手本になります。

文章のテンポ、テーマ性、世界設定の妙「定番作品」から学ぼう

大人気の定番作品からは得るものがたくさん。多くの人から愛される理由はどこなのか、探りながら読んでみましょう。

富士見ファンタジア文庫 『スレイヤーズ』シリーズ 神坂一(かんざかはじめ)

キャッチーなキャラクター、テンポの良い文章、心に残るテーマ性のある作品です。若者向けエンターテインメントとして非常に完成度が高い作品といえます。

電撃文庫 『キノの旅』時雨沢恵一

設定・テーマで考えさせる作品の大定番。作品への発想の内容・仕方を参考にしましょう。

角川スニーカー文庫 『ロードス島』シリーズ 水野良

日本におけるスケールの大きな異世界ファンタジーものの金字塔。若者の成長、戦争や政治のダイナミックさなどがお手本になります。

富士見ファンタジア文庫 『フルメタル・パニック!』 賀東招二

現代・近未来バトルものとして、ハッタリの効いた設定や、コミカル展開とシリアスのバランスなども参考になり、オススメです。

『半沢直樹』シリーズ 池井戸潤

経済もの、職業ものとしてリアリティがある一方で、キャラクターが立っていてストーリー展開がドラマチックです。

美しい文章の基本ならコレ! 模写したい作品リスト

小説家を目指すなら、ため息のでるような美しい文章を書きたいものです。どうすれば魅力的な文章になるのか、名作と呼ばれる作品にはどんな文章がふさわしいのか、じっくり研究してみましょう。

芥川龍之介の諸作品 オススメ1「トロッコ」、2「羅生門」

文章・描写面での良さはもちろん、短編が多いため作業のハードルが比較的低くなります。

展開の巧みさを学ぶ! ストーリー構成の勉強になる作品リスト

予想もしない展開は読者を惹きつけます。オチがどうなるか、自分ならどうするのか、考えながら読んでみましょう。

「ショートショートの神様」星新一の作品群

巨匠、星新一の作品は650〜15,000字で収まるものがほとんどです。長すぎると展開を予想しづらいため、考えながら読むにはこのぐらいの文字数が好ましいでしょう。意外性のある展開が多いため、考えがいがありますよ。

芥川龍之介・坂口安吾・中島敦らの作品群

明治から昭和にかけての文豪の作品は「読みながら考える」のに向いています。ここで挙げた作家は短編を多く出していますし、想像の余地のある作品が多いため特にオススメです。

新見南吉・小川未明らの作品群・アンデルセン・グリム兄弟らの作品群

童話や児童文学の代表的な作品は、子ども向けであっても単純とは限りません。むしろイメージを広げる隙間やメッセージ性が強く「読みながら考える」のに最適といえます。

北欧神話やギリシャ神話、日本神話など

神話こそ想像の余地が大きく、いくらでも「こういう展開もありなのでは?」と考えることが可能です。

プロ小説家への道は、書いて書くだけでなく「読んで書く」も大事

たくさん読んでたくさん書く

小説が売れる理由は、「文章の上手さ」や「ストーリーの良さ」だけではありません。キャラクター設定、テクニック、シチュエーション……等々、色々な要素が重なり合うからこそ読者は魅了されるのです。

「読む」ことは「書く」ことへシンプルにつながります。たくさんの文章に触れるだけでも、文章力を高める効果はあります。

しかし、身につけた知識が偏っていたり間違っていたりすることも。小説に書かれていることがすべて正しいとは限りません。

大切なのは「小説にはこう書いてあるけど本当だろうか」と疑問を持つほど、しっかり読むことです。その姿勢は理論立てて学び、間違いを正す、という執筆スタイルの確立にもなります。自己流で培ったテクニックやコツが間違っていないか確認する行為につながるでしょう。その努力の積み重ねで、読者の胸に残る作品が作れるようになるはずです。

普段からたくさんの小説を読み、多用な文章と物語に触れて自分の血肉にしましょう。

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監修|榎本 秋

1977年東京生。2000年より、IT・歴史系ライターの仕事を始め、専門学校講師・書店でのWEBサイト企画や販売促進に関わったあと、ライトノベル再発見ブームにライター、著者として関わる。2007年に榎本事務所の設立に関与し、以降はプロデューサー、スーパーバイザーとして関わる。専門学校などでの講義経験を元に制作した小説創作指南本は日本一の刊行数を誇っており、自身も本名名義で時代小説を執筆している。

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