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時代・リアルな描写のコツ|ネット用語・流行語と若者言葉の使い方

青春小説やラブコメ、学園ものなどでは「現代」を時代設定にすることが多いものです。小説の舞台を現代にするならば、今の時代性を描写する必要があります。時代描写がちぐはぐだと、小説のリアリティが薄くなり、読者がいまいち共感できない残念な事態になることも。そこで今回は、時代描写に使える「時事ネタ・流行語・ネット用語」の取り扱いについて、気をつけたいポイントとコツをご紹介いたします。

同時代性を演出するコツ|流行語や学生用語を時代背景に活かす

小説の流行語・学生用語の扱い
流行語や学生用語など、一定の時期や世代間でしか使われない言葉があります。これらは登場人物の年齢や小説の時代設定を演出するうえで欠かせないものです。

同じ若者でも、中学生と高校生では流行しているワードが違うことも考えられます。中学生の間はアニメやYouTuberに影響された言葉が流行していたとしても、高校生になるとTikTokやInstagramなどSNS発の流行語が使われる。そんな「違い」があるかもしれません。

それぞれの世代や、コミュニティーでしか使われない言葉や流行をよく観察することで、キャラクターの属性を自然に表現できます。

小説での「流行語」の使い方

流行語とは、社会の広い範囲で知られ、使用されるようになった言葉を指します。年齢や地域、コミュニティーの境も関係なく、一般に浸透しているものです。

「あたり前田のクラッカー」は昭和30年代にお菓子のCMから流行したフレーズですが、現代にこの言葉を使っている人物がいたら、その人はかなり年配であることが想像できます。10代の少年少女が使っていたら、ひょっとするとおじいちゃんっ子・おばあちゃんっ子なのかもしれません。その言葉が流行した時期に対する「共通の認識」があると、そこからさまざまな物語がふくらみそうです。

小説での学生用語(大学生用語)の使い方

大学生のときにしか使わない言葉もあります。専攻する学科によって異なることも多く、流行語にくらべて使用するコミュニティーが限定的です。

代表的な大学生用語は、楽に単位が取れる講義のことをいう「楽単」、出席登録だけして授業に出ないことを指した「ピ逃げ」などです。

同窓会で、大学に進学したメンバーの会話に就職した主人公は入れない。言葉の意味すら理解できずに疎外感を味わう。このような場面で、学生用語は効果を発揮できそうです。

小説での若者言葉の使い方

流行語はあらゆる世代に広く認知される言葉ですが、なかには若者の間でしか使われない類のフレーズも。このような「若者言葉」は、年齢や性別、地域や所属するコミュニティーによっても変化するのが特徴です。

泣いている様子を表す「ぴえん」や、ときめきを表現した「キュンです」、〇〇に勝るものはないという意味の「〇〇しか勝たん」など、SNSを中心に若者の間で主に流行っている言葉。これらはとにかく旬の時期が短いため、すぐに風化します。取り扱い注意なフレーズですが、同時代性を演出するのに一役買ってくれるかもしれません。

「落単した。ぴえん」なら単位を落としてしまって悲しいという意味ですが、おそらく流行に敏感なタイプの大学生しか使わない表現でしょう。一言でキャラクターの属性を表すという意味で、使える場面があるのではないでしょうか。

エンタメ小説では外せない「時事ネタ」の取り入れ方

時事ネタ・エンタメ小説での使い方
小説に時代のもつ雰囲気や気配がうまく描写されていると、読者がその世界をよりリアルに感じ、物語を楽しめる要素になります。

巷のゴシップや、流行しているお笑いネタ、ニュースやワイドショーの話題、これらは今、人々が強く関心をもっている事柄です。読者の興味を引くフックが重要なエンタメ小説においては、特に欠かせない要素といってもいいでしょう。

次に小説で時事ネタを取り扱う場合のコツや、注意したいポイントについて解説します。

時代ごとに変わる時事ネタの描写|小説の時代背景に活かすコツは

その時の空気を表現し、物語にリアリティを生んでくれる時事ネタ。しかし多くの人々が知っているネタだからこそ気をつけるべきポイントがあります。

流行りのギャグや流行語、時事ネタはものすごい勢いで風化するものです。書いた時点では最新と思っていたものでも、読者の目に届く頃にはすでに忘れ去られてしまっていることもよくあります。

若年層のファンが多いエンタメ小説では、むしろ風化を恐れず、同時代性を演出するのが得策です。しかしそのネタがある程度定着しているのか、既に古くさくなっていないかを確認しておくのが無難でしょう。

また話題の事件などを扱うケースでは風化よりも気をつけたいポイントがあります。それは読者に「ああ、この事件なら知ってる」と思わせない工夫をすることです。既視感のあるネタでは「この先どうなるんだろう」と興味を持ってもらうのは難しいもの。また実在した事件を扱う場合、そこには被害者や加害者だけでなく、事件に関わった多くの人々がいるのを忘れてはいけません。事件と真摯に向き合う覚悟が必要になるのです。

そのため時事ネタのなかでも、実際の事件を扱う場合においては要素をそのまま小説にするのではなく、アレンジを加えることが重要なポイントになります。

「あの事件が元ネタになっているとは思いもしなかった」と読者に思わせるくらいの工夫をするように心がけましょう。

プロットが進まないときは「現代の新技術や社会問題」がヒントに

ネタに困ってプロットが進まないと悩んでいる方にオススメなのが、時事ネタのなかでも「新しい技術や社会問題」に着目することです。

新聞やニュースなどに注目していると、さまざまな社会問題や新技術などの情報が目に入ります。スマホやタブレットも今では当然のように人々の暮らしに定着していますが、一昔前なら想像もしなかった技術です。この技術が定着化したら、世の中はどうなるかなという視点で触れるニュースは創作のヒントになります。

このまま少子高齢化が進んだら、世の中はどうなるのでしょうか。自動運転車が町中を走り回るようになったら、どんな問題が起きるのでしょう。

今の技術や社会問題が進化・発展・悪化していったら世界はどんな変化を見せるのかに着目して、創作に活かしましょう。

小説内でのネット用語・使いどころは「SNS・掲示板」の描写

少し前まで一部のネットユーザーにしか使われることのなかったネット用語やネットスラングの類。今や普段の会話やメッセージのやり取りにも、カジュアルに登場するようになりました。身近になってきたからこそ、その取り扱いには気をつけたいものです。小説におけるネット用語の取り扱いについて確認していきましょう。

小説の「地の文」にネット用語を使うのは基本NG

小説ではネット用語(ネットスラング)を使わないようにしましょう。一般に周知されてきたとはいえ、ネットスラングはインターネット特有の用語です。インターネットに馴染みがない人にとっては意味がわからず、伝わりにくい場合があります。

またプロの小説家は、さまざまな情景や心情を読者にイメージさせるような文章力が求められます。語彙や文章表現についての豊富な知識が必須項目なのです。それなのに、ネット用語ばかり使っていたらどうでしょう。表現力が乏しい印象を与えるため、文章のレベルが低いと読者に思われてしまいます。

小説家を目指すなら知っておきたい|要注意なネット用語

スマホが必需品となった現在において、ネット用語も身近な存在になりました。そのため、それと気づかずうっかり使ってしまうこともあるかもしれません。普段の会話のなかでもついつい口にしやすいようなネット用語には注意が必要です。その一例をみていきましょう。

【釣り】
嘘の情報を提示したり、わざと怒らせたりすることで、その反応を得ようとすること

<例>
あの人のツイート、ほとんどは釣りだから反応しない方がいい。

【リア充】
「リアル(現実)の生活が充実している」の略。特に恋人がいる人や、交友関係が広い人、結婚して円満な家庭を築いている人のこと

<例>
あの子はリア充なので週末の予定は埋まっている。

【ディスる】
人や物などを侮辱したり、否定したりすること。「無礼・不敬」という意味の英語「disrespect(ディスリスペクト)」が語源

<例>
鈴木先生は生徒にディスられていたのを知り、怒った。

【誰得】
「誰が得するんだ」の略。ニッチな(需要が薄そうな)作品や商品などに対して用いられる

<例>
「このイラストは誰得」「俺得(自分は好き)」

【中二病】
思春期真っ只中である中学2年生頃にありがちな、孤高をアピールしたり自分を特別な存在だと思い込んだり、奇妙なキャラ付けの言動をする様子。

<例>
あいつテレビはみないとか言ってたけど中二病かな。

目にする機会が多くなってきたネット用語も、世代や所属するコミュニティーによっては聞きなれない言葉という可能性があります。エンタメ小説の要である「誰にでもわかりやすい表現」を目指すために、「ネット用語のうっかり使い」には注意しましょう。

SNSや掲示板のやり取り「ライブ感」を演出するなら

小説の地の文では使わない方がいいネット用語にも効果的な使い道があります。それは「SNSや掲示板におけるやり取りの演出」をするときです。

インターネットでのやり取りを表現するときに、ネット用語が一切出てこないのも不自然なもの。その上実際のやり取りを見ているような臨場感にもつながるので、このような場面でネット用語を使うのは、大いにアリ! な手法です。

うまく取り入れて、主人公と一緒にスマホやPCを覗き込んでいるようなライブ感が演出できるといいでしょう。

時事ネタ・描写のコツを押さえて小説に「今」の空気を取り込もう!

小説に時代性を描写する
時事ネタや流行語が生む同時代性は、現代小説の描写に有効です。読者が共感し、その時代の雰囲気を感じられるよう、上手に取り入れましょう。しかし安易なネット用語の使用にはご用心。読者に伝わらなかったり、表現力の乏しさを感じさせたりしてしまっては元も子もありません。使いどころに気をつけて、小説に「今」の空気を演出する材料にしてみましょう。

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監修|榎本 秋

1977年東京生。2000年より、IT・歴史系ライターの仕事を始め、専門学校講師・書店でのWEBサイト企画や販売促進に関わったあと、ライトノベル再発見ブームにライター、著者として関わる。2007年に榎本事務所の設立に関与し、以降はプロデューサー、スーパーバイザーとして関わる。専門学校などでの講義経験を元に制作した小説創作指南本は日本一の刊行数を誇っており、自身も本名名義で時代小説を執筆している。

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