榎本メソッド小説講座

児童文学の書き方

小説家を志す方のなかには、児童文学作家になりたい、児童文学を書いてみたい、という人も多いのではないでしょうか。もし「簡単そうだから……」という理由であるのなら、それは間違いです。

児童文学は、子どもに好かれるような面白い物語を「誰にでもわかるよう簡単に」「子どもの知的好奇心を損なわないさじ加減」で書かなければなりません。児童文学は奥の深いジャンルなのです。

ここでは児童文学を書いてみたい方や児童文学作家を目指す方に向けて、書き方のコツや注意点、児童文学作家になるための方法などについてご紹介します。

児童文学とは

児童文学のイメージ

「児童文学」とは、文字通り児童すなわち子どもをターゲットとした文学作品のことを言います。その範囲は幅広いものです。絵本や詩、童話、また新たに創作されたものはもちろん、神話や昔話などの伝統的に受け継がれてきたもの。そして元々は大人向けの話だったものが子供向けとして変化したものまでと多種多様なものがあります。

ここでは、その中でも特に新規に書かれた小説に絞ってご紹介します。

児童文学ならではの書き方・コツ

近年の児童文学は、ライトノベルの大ヒット作が内容を一部改変して刊行され、ライトノベル風のイラストを採用した作品が主流になるなど、ライトノベルとの接近が目立ちます。自分が書きたいものの方向性によっては、エンタメ小説やライトノベルではなく児童文学を狙ってみるのもよいでしょう。

忘れてはいけないのが、ターゲット層の違いです。ライトノベルは中高生をメインに、それ以上の年齢層をターゲットとしています。一方児童文学は、小学生から中学生あたりをメインターゲットとしているのです。エンタメ小説やライトノベルと同じように書いても上手くいかないため注意が必要です。

では、児童文学ならではの書き方にはどんなコツがあるのかをみていきましょう。

子どもの視点を思い出す

子どものころは不思議に感じていたのに、大人になるにつれて当たり前になってしまったことは山ほどあるはずです。

「どうして空や海は青いの?」「アイスクリームはなぜ溶けちゃうの?」といった子どもの不思議に思う気持ちや憤り、不満などに寄り添った描写ができていれば、子どもたちから共感が得られやすくなります。

子どもの集中力が続く「分量」を意識する

あまり長大な物語になってしまっては、ターゲット読者が手に取りにくくなります。児童文学の小説は1ページごとの文字数が少なく、全体としての分量もライトノベルなどに比べても少ないことが多いのです。各ジャンルの賞における応募規定から、分量をみてみましょう。

ライトノベルの分量

「電撃小説大賞」の応募規定は、長編であれば 1ページ 42文字×34行で80~130枚。
電撃小説文庫/応募規定

児童文庫の分量

「角川つばさ文庫 小説賞」は、42文字×28行で70~100枚の分量となります。
角川つばさ文庫 小説賞/応募規定

児童文学の分量

「講談社児童文学新人賞」の応募規定では、40文字×30行で10~100枚と指定しています。
講談社児童文学新人賞/応募規定

この分量で描ける物語をプロット段階から考えれば、新人賞を狙うにも有利となるでしょう。

ライトノベル以上の「読みやすさ」を意識する

ライトノベルは、中学生や高校生の中で小説などを読みなれていない読者がメインターゲットです。そのため一文を短くして改行を増やすといった読みやすさを意識しています。

一方児童文学は、さらに低い年齢層がターゲット。漢字を開きできるだけ平易な言葉を使うなど、より読者にストレスを与えない文章にする必要があるのです。

児童文庫を読む女性

ライトノベルの児童文庫化作品が参考になる

『スレイヤーズ』『涼宮ハルヒの憂鬱』など、ライトノベルから児童向けに刊行された作品をそれぞれ読み比べると書くときに役立ちます。

文章が改変されているのはもちろん、ときには一部ストーリーが変更されていることも。何が違うのかを確かめることによって、児童文学に求められているものが見えてきます。

寓話的な要素は「ちょうどいいさじ加減」で

寓話とは、なにがしかの抽象的概念を物語の形をとって表すことです。多くの場合、動物や植物を擬人化させ、彼らが演じる物語を通して、勤勉さ・友情・ルールを守ることの大事さ・愛情などを伝えます。これは童話によくあるパターンです。

児童文学にはしばしばこの寓話そのもの、あるいはそれに近い形の教訓的メッセージを読者に伝えようとするものが見られます。

この手の小説の人気が高い理由は、幼い子供に読ませるものとして親や教育者が教訓的効果を求めるため。何らかの寓話的・教訓的要素を物語に忍ばせるのは良い手です。

これは、児童文学に限らずライトノベルでもときにみられるテクニック。物語を読むことが単に娯楽や趣味で終わらないからです。

読者が「なんらかの学びを得た」「新しい気付きを得られた」と感じるならば、作品の面白さが付加価値によって押し上げられます。

反面、書き手が寓話や教訓を盛り込もうとすると、読者に「説教臭い」という印象を与えかねないため注意が必要です。

書き手や親、教育者の意図とは別に、読者は基本的に娯楽を求めて小説を手に取ります。そのため説教臭さが鼻についてしまう作品では逆効果になる事が多いのです。

あくまで物語としての面白さを優先し、教訓的要素はちょっとした隠し味程度にとどめましょう。

児童文学作家になるには

児童文学作家になるには、新人賞に応募して結果を出したり出版社に原稿を持ち込んだりするケースがあります。

公募・新人賞

公募や新人賞受賞のイメージ

児童文学ジャンルの小説といえば、講談社の「青い鳥文庫」、KADOKAWAの「角川つばさ文庫」、集英社の「集英社みらい文庫」といった新書サイズのレーベルが中心です。

ライトノベルと同様に各レーベルごとに新人賞を主宰していることが多く、そこで結果を残すことでデビューへの道が開きます。

児童文学の代表的な新人賞は?

「児童文学」と「児童文庫」には、それぞれ新人賞が設けられています。では、詳細をみていきましょう。

児童文学
長い歴史をもつものが多く、それぞれ独自のルールがあるジャンルのため、しっかりした調査や戦略が必要です。

・児童文学新人賞
・児童文学ファンタジー大賞
・ポプラ社小説新人賞
・野いちごジュニア文庫大賞
・フレーベル館ものがたり新人賞
・福島正実記念SF童話賞
・ジュニア冒険小説大賞

児童文庫
児童文庫は児童文学の1ジャンルですが、一般的な児童文学とは少し違いがあります。講談社の青い鳥文庫に代表される「新書サイズでレーベル名に『文庫』がついているレーベル」の作品が児童文庫です。

※児童文学、児童文庫の新人賞について、詳しくは以下のページもご覧ください
あなたの作品はどの新人賞でデビューを狙える? 小説ジャンルの種類と特徴、総まとめ

出版社への持ち込み

持ち込みでデビューする作家もいないことはありませんが、新人賞に並ぶ、あるいはそれ以上の作品でないとデビューは難しいのが現実です。そもそも持ち込みを受け付けていないことがほとんどです。

※小説家デビューの方法について、詳しくは以下の記事をご覧ください
小説家になるには|デビューの方法と講座の選び方

お読みいただいているページは、現場で活躍する小説家・編集者・専門学校講師が講師を務める、小説家デビューを目的としたオンライン講座「榎本メソッド小説講座 -Online-」の公開講座です。

児童文学作家デビューに向けてより深く体系的に学習したい、現役プロの講評を受けてみたいといった方は、是非本編の受講をご検討ください。

「子どもだまし」は通用しない難しいジャンル

長い歴史と独自の雰囲気を持つジャンルなだけに、挑戦するのであれば「子どもが読む話なら簡単に書けるだろう」といった態度で挑むのはNGです。

児童文学を書くのは、大人の文学を書くよりも大変。子どもの読者は知識や経験が少ないので、書き方を工夫しないと内容がうまく伝わりません。また子どもは正直なので、つまらないと途中で読むのをやめてしまうこともあります。しかし安易に子どもが喜ぶからと下品な笑いを連発しても、実際にお金を出す保護者に敬遠されてしまうのです。

児童文学は、「理解しやすさ」と「読む楽しさ」それに「ちょっとした教訓」のバランスが難しい、大変シビアなジャンル。

実力と工夫も必要となるので、生半可な気持ちでは通用しません。大人向けのエンターテインメント以上に、心して取り組みましょう。

児童文学を制する者は小説を制す?

児童文学作家が大人向けの小説を出したり、大人向けの小説が児童文学に改変されたりと、いうのはよくあるケースです。

世界中の子どもたちに愛される『ムーミン』の作者、トーベ・ヤンソンも大人向けの小説を書いていたことで知られています。子どもに好かれる作品を作るには、大人に通用するレベルのクオリティが必要です。

児童文学は、大人が夢中になるほどの面白いストーリーを、子ども向けにわかりやすく表現します。そのための表現力や文章力、語彙力は必須条件。小説に必要なスキルを伸ばしたいなら、児童文学にチャレンジするのもオススメです。


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監修|榎本 秋

1977年東京生。2000年より、IT・歴史系ライターの仕事を始め、専門学校講師・書店でのWEBサイト企画や販売促進に関わったあと、ライトノベル再発見ブームにライター、著者として関わる。2007年に榎本事務所の設立に関与し、以降はプロデューサー、スーパーバイザーとして関わる。専門学校などでの講義経験を元に制作した小説創作指南本は日本一の刊行数を誇っており、自身も本名名義で時代小説を執筆している。

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