榎本メソッド小説講座

地の文でオススメしない小説文章の書き方

はじめて小説を書く方は「どのように状況を説明すればいいのか」という部分で悩んでしまうことが多いようです。起きている出来事を説明し、物語を進めていくための基盤となるのが「地の文」。会話文とはどのような違いがあるのでしょうか。

今回のテーマは「地の文」についてです。基本的な地の文の書き方と、NGな手法をくわしくご紹介します。

小説の「地の文」役割は

小説の地の文
地の文(じのぶん)は、セリフや会話文以外の文を指します。小説に使う文章のなかで、状況説明の役割を担う部分です。

  • 物語が進行しているシーンで、登場人物が見ている背景や、感じているものについての描写
  • 心情を匂わせるような動作や、風景と心情をリンクさせた描写
  • 過去の出来事についての説明

これらは地の文を使うことで、わかりやすく読者に伝えられます。

地の文で使われる人称は?

地の文でよく使われるのが一人称と三人称です。一人称は主人公(物語の進行役)が独白するような形式。主人公の主観で物語が動くので、作者にとっては書きやすい形式でしょう。その反面、主人公が知らない、見えていない物事については書けないという縛りが生じます。

また登場人物の動きなどを第三者が説明する文を「三人称」と呼びます。こちらは主人公が気づいていない、表舞台の裏で進行している物事なども書けるため、視野を広げられるのが長所です。そのかわり、主観的な心情の描写が難しくなる短所もあります。

※小説の「人称」について詳しくはこちらの記事をご覧ください
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地の文でNGな書き方とは

小説の地の文でNGなこと
登場人物のセリフや会話文では許されても、地の文でやると一気に小説のクオリティを下げてしまう書き方があります。注意したいポイントをみていきましょう。

地の文(三人称)で「口語」を使う

三人称で小説を書く場合、地の文は文語、会話文は口語で表現するようにしましょう。文語とは書き言葉、口語とは話し言葉のことを指します。

主人公の独白形式で話が進む一人称の場合は、その主人公特有の話し方が出るのも自然な流れといえるでしょう。「心の声」という意味では、セリフと同じ扱いになるからです。

しかし三人称の場合は違います。三人称の小説における地の文の役割は、視点が第三者になり、客観的に物語を説明する役割があるため、文章は「文語」を使います。

※口語と文語の違いについて詳しくはこちらの記事をご覧ください
セリフの書き方|台詞回し・掛け合い・会話文のコツと使い方のルール

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地の文ばかりで会話文が少ない

特にエンタメ小説を書く場合は、地の文と会話文のバランスに気を付ける必要があります。描写や説明など、地の文ばかり続くとおもしろみに欠け、会話文ばかりでも情景が伝わりにくいからです。

また、キャラクターの魅力で読者を引きつけたい場合、会話文はとても重要な武器になります。地の文ばかりにならないよう、上手に会話文を入れましょう。

地の文での説明が多く、テンポが悪くなってしまうケースもよく見られます。ギャグやコメディーにおいて重要なのがテンポの良さです。文章のテンポを落とさないように気を配りましょう。

ら抜き言葉を使う

話し言葉で使うことの多い「ら」抜き言葉。日常的に使っているため、何の疑問も持たずに書き言葉(三人称の地の文)でも使ってしまうことがよくあります。

三人称の地の文では、正しい言葉づかいが求められます。一人称や会話文で意図があって使うのなら話は別ですが、いずれにしても正しく使い分ける知識が必要です。そのためにも「ら」抜き言葉をよく理解することからはじめましょう。

可能の助動詞、「られる」と「れる」

可能の助動詞には、「られる」と「れる」が存在します。この「れる」と「られる」は使い分けが難しいため、「ら」抜き言葉になりやすいのです。

「れる」を用いる例は、「乗れる」「登れる」「走れる」など。「乗られる」「登られる」「走られる」を使うと不自然になります。また意味としても、「可能」ではなく「受け身」を表す助動詞になってしまいます。

【可能の助動詞】

  • 車に乗れる(乗ることが可能)
  • 展望台に登れる(登ることが可能)
  • グラウンドを走れる(走ることが可能)

【受け身の助動詞】

  • (肩に)乗られる
  • (頭の上に)登られる
  • (体の上を)走られる
    ら抜き言葉のイメージ

ら抜き言葉の見分け方

どれが「ら」抜き言葉でどれがそうでないのかを見分けるにはいくつか方法があります。そのなかでも簡単なのが、「勧誘」の形にするものです。

「見る」「来る」「食べる」という言葉ならば「見よう」「来よう」「食べよう」といったように、誰かを誘うような言い方に変えてみましょう。

「見よう」「来よう」「食べよう」など「よう」の形に言い換えられるときは「られる」を使うのが正解。「見られる」「来られる」「食べられる」というふうに、「ら」が必要です。そのため「彫刻が見れます」「都内から一時間で来れます」「おいしいランチが食べれます」というように使用すれば、「ら」抜き言葉になります。

一方、「乗る」「登る」「走る」を勧誘に変えると、「乗ろう」「登ろう」「走ろう」です。いずれも「ろう」の形になり、「よう」にはなりません。この場合、可能の助動詞には「れる」が使われます。「ロープウェイに乗れます」「展望台に登れます」「整備されたグラウンドを走れます」が正解なのです。

不安になったら、「勧誘」の形に変換すると覚えておきましょう。
らがいらない言葉いる言葉の図

比喩表現を使わない・使いすぎ

比喩表現とは、物事や心理描写を他のこと、ものに例えて表現する手法です。比喩表現は、一切使わないと味気なく、使いすぎるとうっとうしい文章になる、さじ加減の難しい表現方法です。コツを掴んで上手に取り入れましょう。

事実を述べただけの文章は単調になりがち

比喩表現は文章に情感を出したいときに、とても良い働きをします。淡々と事実を並べただけの文はおもしろみに欠けますが、他の物事に例えたり、似た物事を引き合いに出したりすることで、読者が頭の中でイメージしやすくなります。

【例】

 母がランチにミートソーススパゲティを作ってくれた。パスタにたっぷりかかったミートソースがおいしそうだ。パルメザンチーズをこれでもかとかける。濃厚な香りに気分が高揚した。

直喩を取り入れてみよう

直喩とは「~のようだ」「~のごとく」などの言葉を使って、別のものを出して比較する比喩表現です。直喩は扱いやすいため、よく利用されます。

【例】

 母がランチにミートソーススパゲティを作ってくれた。トマトの雪崩みたいにパスタを覆いつくすミートソースがおいしそうだ。きめ細かい粉雪のようなパルメザンチーズをこれでもかとかける。この濃厚な香りは、まるでイタリアのトラットリアにいるようだ。

例文では「ミートソース」に「トマトの雪崩のような」を、「パルメザンチーズ」に「粉雪のような」を、それぞれ比喩として取り入れました。

情感が出て、よりイメージを促す表現になったのではないでしょうか。

また「気分が高揚した」を、「まるでイタリアのトラットリアにいるようだ」という直喩に差し替えました。「気分が高揚した」は単純な感情表現の文章ですが、これよりも美味しいものを目の前にしたウキウキ感が伝わる表現になりました。
地の文で比喩を使っておいしさを表現

隠喩を取り入れてみよう

ちょっとステップアップをして隠喩を使ってみましょう。隠喩とは、「~のようだ」「~のごとく」などを使わずに、他のもので表す比喩のことです。

代表的なものでは、「言葉の刃」「鋼の意思」「蚤の心臓」など。これらの隠喩はよく目にするのではないでしょうか。

【例】

 母がランチにミートソーススパゲティを作ってくれた。トマトの雪崩がパスタを覆いつくしおいしそうだ。きめ細かい粉雪をこれでもかとかける。濃厚な香り。ここはイタリアのトラットリアだ。

「~のように」「~みたいな」という言葉を使っていませんが、直喩と同じように意味を読み取れます。「ここはイタリアのトラットリアだ」は、「まるでイタリアのトラットリアにいるようだ」を短く直接的に表現したものです。言い切ることで、気分の高揚が濃く感じ取れるのではないでしょうか。

比喩表現を使いすぎない・長々と書かないよう注意

比喩表現は、読者に情感を伝えるために有効ですが、文章の中に何回も「~のような」が出てくると、うっとうしく感じさせてしまうリスクもあります。

また隠喩で対象となる物事(単語など)をはっきり出さずに表現する場合には、何のことを指しているのか、わからなくなりやすいため、特に注意が必要です。常に客観的に伝わるかどうか、その文に情感が必要かどうかを見極めて、使いこなしていきましょう。

地の文の書き方を極めて文章力をレベルアップさせよう!

書きたいことはたくさんあるけれど、地の文がうまく書けないとお悩みの方は多いようです。地の文は人称によって書き方が変わるため難しく感じるかもしれません。しかし基本的なNGポイントを理解しておけばスムーズに書けるようになります。エンタメ小説の要は、読者にとって読みやすく理解しやすい文章です。読者が容易にイメージできる文章を目指し、日々練習していきましょう!

地の文を上達させるなら、たくさんの作品を書いてみるのが一番です。自分ではうまく書けているのかわからない、感覚がつかめないという方は「榎本メソッド小説講座−Online−」にご相談ください。プロによる講評で自身の弱点を知り、確実に実力を付けましょう!

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監修|榎本 秋

1977年東京生。2000年より、IT・歴史系ライターの仕事を始め、専門学校講師・書店でのWEBサイト企画や販売促進に関わったあと、ライトノベル再発見ブームにライター、著者として関わる。2007年に榎本事務所の設立に関与し、以降はプロデューサー、スーパーバイザーとして関わる。専門学校などでの講義経験を元に制作した小説創作指南本は日本一の刊行数を誇っており、自身も本名名義で時代小説を執筆している。

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