榎本メソッド小説講座

群像劇の書き方|難易度高! でも面白く書けるコツは

群像劇とは複数のキャラクターを主人公格にすることで、あらゆる視点からエピソードを描いていく物語構造を指します。

明確な主人公を置かない場合が多く、複数の主人公がそれぞれの事情や目的に従って行動する様子を描いたものが定番です。

視点が変化することでさまざまなキャラクターの心情が垣間見えると、読み手の興味を引きます。しかし物語の流れを整理するのが難しかったり、複数のキャラクターの書き分けが大変だったりと、書き手にとってはかなり難易度の高いスタイルであるのも事実です。

今回は群像劇にチャレンジしてみたい! という方のために、書き方のコツや注意するべき部分、上達するための練習方法などをご紹介します。

群像劇の定義とは

群像劇の定義
小説のスタイルとして一般的なのが「1人のキャラクターの視点」で物語が進行するものです。読者は主人公の行動と心情を追いながら読み進めていきます。

対して「群像劇」は、複数のキャラクターが主人公格となり、あらゆる視点から物語にフォーカスしていくスタイルです。

  • 明確な主人公がいない
  • 明確な主人公がいて、サブ主人公が複数いる
  • 複数の主人公格キャラクターが並列に存在する

群像劇の「視点」には上記のようなタイプがあります。

しかし、いずれにしても群像劇の本当の主役は、「人物」でなく「事件(出来事)」である場合がほとんどです。

多くの登場人物がいると、必然的に1人の人物をしっかり描写できる割合が少なくなります。そのため、1人の人物に強く感情移入をして、そのキャラクターと一緒に物語を追っていく、という楽しませ方としては、どうしても弱くなってしまうのです。

これらを解消し、物語の面白さを出していくために、小説の主題を「事件」とする方法がよく使われます。

  • 群像劇で重要なのは、人物よりも事件
  • 事件を読者に伝えるための語りべとして、キャラクターが存在する

このようなスタンスで作られている作品が、既存の人気作品にも多く見られます。

小説の形式に群像劇を選ぶメリットとデメリット

個性豊かなキャラクターが次々と登場するのは、読者が飽きずに楽しめるポイントになります。登場人物の視点の多様さは小説にどのようなメリットを与えるのでしょうか。

メリット1|スケールの大きさが魅力

群像劇は、各キャラクターの目を通して物語を断片的に見せていくスタイルです。1つの事件(出来事)をさまざまな視点から見ることで、別の側面が見え、物語に奥行きが生まれます。

  • 1人の主人公の視点(主観)で語り、物語を見つめる
  • 神の目、第三者的な視点(客観)で語り、全体像を見せる

上記の一スタイルでは、1つの事件を1つの側面からしか描写できない場合がほとんどです。無理に多面的に描こうと、突然視点が変わるような書き方をするのはご法度。読者を混乱させてしまいます。

そのため、自由に視点を切り替えられる群像劇は、物語に「スケール感」を出しやすいスタイルだといえるでしょう。

メリット2|キャラクターの多様性が魅力につながる

群像劇はその構造上、メインキャラクターの数が多くなります。主役級のキャラクターが複数名登場することは、読者の共感を得るためにも有効な方法です。

主要なキャラクターが複数名いると、読者はその中に「自分と似ている人物」を見つけやすくなります。人は属性や境遇が自分に近いキャラクターには共感しやすくなるもの。

さまざまな立場の人物を描いてその確率を上げるのは、登場人物1人ひとりの出番が少ない群像劇ならではの工夫です。

また、物語の根っこになる「思想」「主張」に偏りがある物語は読者から敬遠されやすい傾向があります。しかしそのような物語でも、キャラクターがそれぞれの立場から、さまざまな主張をすることで物語に説得力が生まれ、読者に受け入れてもらいやすくなります。

群像劇のデメリットと解決方法は?

多様な視点からエピソードを見られるのが群像劇の面白さのひとつです。しかしその分知恵を絞らなければ、物語が破綻してしまうことも。

さまざまな登場人物の視点から語られる群像劇には、それゆえの「面白さ」と「大変さ」があります。

デメリット1|物語の制御が難しい

群像劇は複数の視点で進行するので、視点の数だけ物語の流れが生まれます。その分どうしても物語の「管理と制御」が難しくなるのはデメリットの1つです。

事件や出来事にまつわるそれぞれの価値観など、物語を構成する要素を複数の登場人物の目を通して描くのは、群像劇の定番。

しかし上手く整理できていないと、構造が複雑になりやすく、読者が理解できない作品になってしまうのはよくあるミスです。

解決ポイント!
物語をわかりやすく整理するには、「どこで何が起きているのか」を状況描写をつかって丁寧に示していくことが大切です。

デメリット2|キャラクターの書き分けが難しい

キャラクターの多さは物語の魅力にもなりますが、一方で描写の難しさにもつながります。読者の共感を誘い、物語にのめり込んでもらうためには、主要キャラクターの作りこみは必須です。

しかしその主要キャラクターが多いので、考えるのにも時間がかかりますし、書き分けの難易度も上がります。

解決ポイント!
登場人物については、この小説でどういう存在価値をもたせるのか、物語上の「役割」と「行動に至る動機」を意識したキャラクター作りを意識しましょう。

※複数のキャラクターを書き分ける方法を詳しく知りたい方は以下のコラムもご覧ください
人物描写がうまくなるコツ

群像劇にはどんなパターンがある?

「主役(主題)」を何にするのか、「キャラクターと物語の関係性」をどう描くのかを分類することで、さまざまなパターンが生まれます。ここでは群像劇の骨子を作る際に参考になるパターンをご紹介します。

「主役は誰か」

物語の主役(主題)は誰なのかという視点で分類してみましょう。

  • 「事件が主役」パターン
    大きな事件とそれを取り巻く人々を描く
  • 「複数の個人が主役」パターン
    特定のグループや立場に関わる人々を描く

「キャラクターと物語の関係性」

主役が誰か(主題を何にするのか)という視点が決まれば、さらにキャラクターと物語の関係性で分類してみましょう。

  • 「小さな物語が連なって大きな物語を形成する」パターン
    特定の場所で次々起こる「事件」の物語
    「災害に襲われる街」で「必死に生きようとする人々」の物語
  • 「直接的に影響を与えあう人々が形成する集団の物語」パターン
    多角関係を形成する恋愛群像劇
    企業を舞台にしたサラリーマン群像劇

初心者だけどどうしても書きたい! 群像劇のコツは?

群像劇のコツ
群像劇は奥行きある構造の物語が作れる一方で、物語の流れの整理と状況描写を丁寧に行う手腕が問われます。そのため初心者に対し、気軽にオススメできるスタイルではありません。

それでも群像劇が書いてみたい! という方のために、2つのコツをご紹介します。

初心者は「争奪戦もの」からはじめてみよう

初めての群像劇にオススメな方法は、1つのアイテムを複数のキャラクターが取り合う設定にすることです。ここでいう「アイテム」には、人物や情報なども含まれます。

アイテムはどうなるのか?視点

争奪戦ものは、各キャラクターとは別の軸に「アイテムはどうなるのか?」というストーリーが現れてきます。

アイテムを主役にする

各キャラクターの物語は、「アイテム」に関わることで生まれます。共通の目的である「アイテム」を物語の主軸に置くことで、全体のストーリーは管理しやすくなります。

あえてメインの主人公を配置する

メインとなる主人公を1人設定したうえで、他のキャラクター描写の割合を増やすのもストーリーを管理しやすくなる方法です。

「メインの主人公」という大きな主軸があることで、物語がブレて収集がつかなくなるのを防げます。

群像劇で注意したいのは「動機」

キャラクターが増えることでよく起こる問題が、「理由もなく行動するキャラクターが生まれてしまう」というものです。

その「役割」のためにとってつけたようなキャラクターを作ってしまうと、リアリティがなくなります。読者に「行動原理が謎」と思われたらその人物描写は失敗なのです。

現実の世界で、人間は行動理由がはっきりしなかったり、誰も理解できないものだったりすることがよくあります。しかしそれは現実に起きたことなので、どう転んでも「リアル」です。一方、小説は虚構だからこそ、「説得力のある理由」が強く求められます

群像劇ものを書く場合は、各主役級キャラクターにそれぞれの「ハッキリした動機」が必要です。「彼らはどうしてこの事件に関わってくるのか」を掘り下げて描写しましょう。

※キャラクターの行動する理由・動機付けの方法について詳しくは以下の記事をご覧ください。
キャラ作りに役立つ3つの要素とキャラクターへの質問集

初心者には難しい「群像劇」はポイントを押さえて挑戦しよう!

初心者には難しい「群像劇」
スケールの大きい物語を描ける「群像劇」。それだけに話が広がりすぎて、主題が何だったのかがぼやけてしまうことがよくあります。

初心者には難しい形式ですが、練習を積まないことには上達もありません。まずは「争奪戦ものにする」や「メインとなる主人公を置く」などの工夫をして、練習してみましょう。


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小さな頃からずっと小説が好きで、自分でも書きたいのになかなか最後まで書けなくて……と、悩む小説家志望者のK子さん。小説家になりたいけれど自分には才能がないのではとモヤモヤした日々を過ごしているそう。そこで今回はAmazonランキング第1位を獲得した「物語を作る人のための 世界観設定ノート」の著者、鳥居彩音さんにお悩みを聞いてもらうことにしたようです。
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監修|榎本 秋

1977年東京生。2000年より、IT・歴史系ライターの仕事を始め、専門学校講師・書店でのWEBサイト企画や販売促進に関わったあと、ライトノベル再発見ブームにライター、著者として関わる。2007年に榎本事務所の設立に関与し、以降はプロデューサー、スーパーバイザーとして関わる。専門学校などでの講義経験を元に制作した小説創作指南本は日本一の刊行数を誇っており、自身も本名名義で時代小説を執筆している。

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