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長編にも使える! 小説の推敲・校正のポイントとコツ|文章力向上テクニックをプロ小説家が紹介します

小説のような長い文章を書いていると、次第に内容の矛盾や文章のブレが出てきてしまうことは多いものです。傑作を書き上げるために避けては通れない推敲や校正の作業。

今回はそのチェックポイントとコツをご紹介します。

※小説の書き方って何からはじめればいいの?という方は以下の記事をご覧ください
小説の書き方【初心者必見】はじめの一歩から完成まで

推敲をはじめるタイミング、書き上げた後では遅い!

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推敲(すいこう)というのは何度も文章を練りなおすことです。この中には校正(誤字脱字を正す)や校閲(事実関係をチェックする)作業も含まれます。

自分が書いた作品をチェックするというのは、プロとして作品を完成させるために重要な「最後の作業」です。たとえ必要なページ数が書きあがっていたとしても、推敲をしていないものは未完成の作品だといえます。

2回、3回と読んで手直しを行うことで作品は完成するのです。

推敲をはじめるタイミングは「その日の執筆を終えたところ」と「その日書きはじめる前」がいいでしょう。

その日の執筆を終えたところ、とはその日書いた分をすべて。その日書き始める前には、小説の書き始めからすべてを推敲する、という意味。2つのタイミングで毎回、推敲の時間を取りましょう。

すべて書き終えた段階での推敲では、少し遅いのです。それは、全部書いてしまった後にまとめて推敲するより、少しずつ振り返りながら作業したほうが、大きなミスになる前に方向修正できるからです。読み返しながら書き進めることで、内容の矛盾や文章がブレるのを防げます。

また小説が書き上がり、推敲しよう! という場合には少し時間をおいてからはじめるのがいいでしょう。

プロの世界では「原稿を寝かす」という表現があります。書き上げた直後は気分が高ぶっているでしょうし、疲れもでているはずです。作品への思い入れも強くなりがちなタイミングなので、客観的な推敲ができるかといえば難しいでしょう。

そこで書き上げてから数日、時間が許すなら次の作品のプロットを練りながら、1週間ほどあけて推敲をすることをオススメします。小説全体を通しての推敲は冷静な視点を取り戻してから行うのが効率的です。

校正ポイントのチェックリスト

まず小説の「読みやすさ」にかかわる文章・文法面をチェックしていきましょう。

基本的な誤字脱字はないでしょうか

誤字脱字があったからといって、これが新人賞に落選する理由にはなりません。しかしプロを目指すのであれば、防げるミスはできるだけ犯さないのが当たり前です。

文章の基本ルールは間違っていないでしょうか

※文章の基本ルールはこちらの記事を参照してください
プロ小説家への一歩は「文法」から! 文章力が向上する書き方【基本・初級編】

ひらく漢字は統一されていますか

漢字のひらきが統一されているかどうかをチェックしましょう。「動く・うごく」や「時・とき」など、基本的な動詞や名詞を表記するときにおこりやすいミスです。

重ね言葉(意味の重なり)を使っていないでしょうか

「頭痛が痛い」「日本に来日する」などの表現はないか確認しましょう。

アスキーアートや擬音の多用、拡大文字はないでしょうか

アスキーアートとはキーボードの文字や記号を使って表現された絵のことです。ネット小説やブログではアスキーアートや拡大文字が効果的な場面もあるかもしれませんが、商業小説では使わないのが一般的です。ただし学生の主人公がメールを打つシーンなど、状況によっては使えるケースもあります。同じく「雨がザーザー降っていて、雷がゴロゴロ鳴っている」のように、擬音を多用するのも拙い印象をあたえるので、使いどころに注意しましょう。

三点リーダーやダッシュの多用はないでしょうか

含みを持たせたりカッコ良さを演出するためについつい使いたくなりがちな「…」や「―」。しかし使いすぎは読者にうっとうしいと思われることが多いのも事実です。

ここぞというシーンで使う場合も、「……」「――」のように偶数セットで使用するルールを忘れないようにしましょう。

文末表現がワンパターンになっていないでしょうか

「する」「だった」「だ」「である」「(体言止め)」

これらの表現を使いこなし、文末にバリエーションをつけましょう。文末表現は状況ごとに適切な選択をしなければなりません。現在形ならば勢いが出て、過去形だと落ち着くなどの効果もありまが、同じ文末表現が連続するとうっとうしくなる問題も。

現在形や過去形に合わせた表現も大切ですが、文末の表現に変化をもたせ、文章のリズムを作ることも同じく重要です。

同じ比喩や同じ意味の言葉が何度も出ていないでしょうか

同じ表現が何度も繰り返されると読者に技術不足を感じさせてしまいます。

一文の長さは適切でしょうか

一文が長すぎる文章は、結局なにが言いたいのかという重要な部分が伝わりにくくなってしまいます。

句読点を打つ位置は適切でしょうか

声に出してつっかえずに読み上げられるか、確認してみましょう。

「てにをは」が間違っていないでしょうか

助詞の使い方が間違っていると、意味の通らない文章になることも。しっかり確認しましょう。

接続詞を多用しすぎていないでしょうか

文章の流れをよくするために使用する「接続詞」も多用しすぎるとかえって読みにくくなります。読み心地のいいリズムを作ることを意識して効果的に使いましょう。

代名詞の使い方は効果的でしょうか

「あれ」「それ」「これ」や「彼」「彼女」などの代名詞は、一切使わないとうっとうしい文章になります。かといって使いすぎると意味がわからなくなるので注意が必要です。

助詞「の」が連続していないでしょうか

「~の~の~」と続きすぎると読みにくく不格好な文章になります。

専門用語に適切な説明がされているでしょうか

一般的な知識でないことについて、説明を省いてはいけません。「()」を使って補足する手もありますが、物語の中で自然に説明を入れるのがベストでしょう。

校正チェックリスト

  • 基本的な誤字脱字はないか
  • 文章の基本ルールは間違っていないか
  • ひらく漢字は統一されているか
  • 重ね言葉(意味の重なり)を使っていないか
  • アスキーアートや擬音の多用、拡大文字はないか
  • 三点リーダーやダッシュの多用はないか
  • 文末表現がワンパターンになっていなか
  • 同じ比喩や同じ意味の言葉が何度も出ていないか
  • 一文の長さは適切か
  • 句読点を打つ位置は適切か
  • 「てにをは」が間違っていないか
  • 接続詞を多用しすぎていないか
  • 代名詞の使い方は効果的か
  • 助詞「の」が連続していないか
  • 専門用語に適切な説明がされているか

長編作品を校正・校閲するには編集者視点が重要

小説 推敲 校正 文章力向上
基本的な文法チェックが済んだら、次は「編集校正」というストーリー部分の校正をおこないます。「物語としてこれでいいか」「キャラクターの演出は最適か」というような編集者の目線で、完成した小説をチェックしましょう。

ここでは小説を物語をよりよくするための校正・推敲作業について、具体的にご紹介いたします。

冒頭と結末はとくに重要な部分。しっかりチェックしよう

物語の冒頭は「作品のイメージを表現できているか」「読者の印象に残っているか」「懲りすぎて複雑な文章になっていないか」などに注意しましょう。

この物語はどのような作品で、どんな雰囲気をもっているか、という部分をしっかり読者に伝えることが重要です。印象的なフレーズを使って読者の感性に訴えかけるのも大切ですが、ヘタに懲りすぎて何が言いたいのがわからない文になることだけは避けたいもの。

読者が同じ部分を何度も読み返すようなことがあっては、小説の魅力も半減してしまいます。読みやすく理解しやすい文章になっているかが大切なのです。

  • 書き出しのコツは、おもしろいエピソードやインパクトのあるシーンをなるべく早く出す
  • キャラクターやストーリーの方向性、アピールポイントが出しやすいエピソードになっているか

あえて優先順位をつけるならば、エンタメ小説では「冒頭」のほうが重要なので、書き出しにおもしろさを詰め込み、読者の関心を引きたいものです。上記のポイントに注意して読み返してみましょう。

「結末」もまた、冒頭に次いで肝心な部分です。物語はきちんと終わってこそ、その魅力を発揮できるもの。結末の完成度が高いと、読者に「次の作品も読みたい」と思わせる魅力になります。

極端にいえば、物語の途中で中だるみが少しあったとしても、強烈な冒頭とスッキリとした結末があれば「いい作品」と感じてもらえるのです。

物語の最後が「未完」「第一部完」「つづく」となるのは一番よくない形ですが、新人賞の応募作品でもたびたびみられます。新人賞の選考では「しっかりと終わっているかどうか」がポイントになるので、心しておきましょう。

※小説の書き始めについて、詳しくはこちらをご覧ください
書き始めは「面白い」から! 印象的な出だしでストーリーを魅力的にしよう【プロ小説家監修!基本とポイント】

テーマが反映されているか、伏線の回収はできているか

物語の「テーマ」に対して「答えが出せていない」というのも、よくある問題です。

シリーズものの漫画、ライトノベルでは伏線で読者の興味を引き、その回収は次回以降にひっぱるという手段がよく使われます。

このような作品に親しんできた作者が、ついついその方法をとってしまうことも多いようです。しかし新人賞の審査員には、「一冊分の文字数で物語を終わらせる力量がない」と判断されてしまいます。

※テーマの決め方についてはこちらの記事をご覧ください
小説の設定は「テーマ」から決めるべし! 読者に伝わる小説の書き方と決め方のポイント

物語の終わりまで、読者が安心して追える話になっているか

読者がラストまで気持ちよく読めるか、というのはエンタメ小説における大きな課題です。

たとえば物語の結末が、悲劇や破滅だったり積み上げてきた物語を根底からひっくり返したりするような物語は、あまりオススメできません。

とくにエンタメ小説は、多くの読者が「快感」を求めて作品を読む傾向にあるからです。

もちろん重く不快感の残る作品を好む読者もいるので、あえて後味の悪い物語を演出するという手法もあります。しかしこの方法をオススメしないのには2つの「難しさ」があるからです。

  1. 読者を不快な気分にさせつつ、一方で魅力を感じさせるのは難しい
  2. 後味の悪さを前面に押し出してデビューするのは難しい

1は技術的な面で大変ハードルが高いという意味ですが、2はそれだけではありません。すでにこのような作風を看板にしている小説家は、かなりの数存在します。このポジションに自分の席を増やす、というのはとても難易度の高いことです。

多くの読者がスカッとする物語を求めているのに、あえてライバルの多い席を奪いにいくより、そもそも需要が高いハッピーエンドの作品を書いた方が効率がいいというわけです。

全体のバランスは「起承転結」にあてはめてチェック!

物語のバランスをチェックするには「マクロの視点」が重要です。

マクロの視点というのは、広く見渡す大きな視点ということ。物事の細部にミクロな視点でとらわれていると、物語全体のバランスを置き去りにしてしまいやすくなります。

そのバランスをチェックするために使えるのが「起承転結」です。物語を4つのブロックに分けることで、広い視点で物語の流れを確認できます。

※起承転結について詳しくはこちらの記事をご参照ください
起承転結と序破急のポイントと応用|知っておきたいストーリーの作り方【プロ小説家監修】

長編小説の推敲をする場合、「起承転結」だけではどうしても大雑把だという場合は、「エピソードをすべて箇条書き」にする方法もオススメです。

箇条書きならば「何が起きるか」が明確になるので、ストーリーに矛盾がないか、あるいは間延びしているところがないか、という部分もチェックできるようになります。

編集校正チェックリスト

  • 冒頭と結末はとくに重要な部分。しっかりチェックできているか
  • テーマが反映されているか、伏線の回収はできているか
  • 物語の終わりまで、読者が安心して追える話になっているか
  • 全体のバランスを「起承転結」にあてはめてチェックできているか

ポイントをおさえた校正によって作品は完成する!

文章のルールは守られているか、編集者的な視点でチェックできているか、始まりと終わりは適切か。

このようなチェックポイントをおさえて校正することで、物語のテーマが読者に伝わりやすくなります。ぜひ長編を推敲するときの参考に役立ててください。

長編の校正は大変! 推敲につまずいたらプロに見てもらおう

長編小説の推敲・校正はとても骨の折れる作業です。文字校正ですら、1人で行うチェックには限界があるため、できれば2人以上で行いたいところ。作品全体の推敲ともなればなおさら、客観的な目線で指摘してくれる第三者が必要でしょう。

  • どう推敲したらいいかわからない
  • 客観的な意見がほしい

このような場合は、榎本メソッド小説講座−Online−がオススメです。多くの小説家志望をデビューまで導いた榎本事務所が、あなたの作品を講評・指導いたします。

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※ぜひこちらの記事もご参照ください
小説の賞に応募する原稿の書き方|新人賞のルール・マナーとは?

小説の賞に応募する原稿の書き方|ルール・マナーをプロが徹底解説

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プロ小説家志望のあなたへ

小さな頃からずっと小説が好きで、自分でも書きたいのになかなか最後まで書けなくて……と、悩む小説家志望者のK子さん。小説家になりたいけれど自分には才能がないのではとモヤモヤした日々を過ごしているそう。そこで今回はAmazonランキング第1位を獲得した「物語を作る人のための 世界観設定ノート」の著者、鳥居彩音さんにお悩みを聞いてもらうことにしたようです。
今回はその様子を榎本メソッド公開講座の編集部がレポートしました!

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監修|榎本 秋

1977年東京生。2000年より、IT・歴史系ライターの仕事を始め、専門学校講師・書店でのWEBサイト企画や販売促進に関わったあと、ライトノベル再発見ブームにライター、著者として関わる。2007年に榎本事務所の設立に関与し、以降はプロデューサー、スーパーバイザーとして関わる。専門学校などでの講義経験を元に制作した小説創作指南本は日本一の刊行数を誇っており、自身も本名名義で時代小説を執筆している。

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