知識は小説家になるために欠かせないものです。小説を書くにあたって「発想力」「構成力」「文章力」などの重要性を、認識している方も多いでしょう。しかし「知識」の必要性は見落とされがちです。
これから執筆する題材についての知識が浅いままならば、作品で描けることはたかが知れています。これは作品のクオリティーに大きく関わる部分です。また日常的な情報収集によって得た知識から、小説のアイディアが生まれることもあります。
幅広く、量の多い情報を効率的に得るためにインターネットを使うのもいいですが、注意しないと偏った情報ばかり得てしまう可能性も。今回は知識を増やす情報収集の方法と注意点をご紹介いたします。
目次
小説や漫画を読んで得る知識や、日常生活で自然に吸収している知識があれば、小説を書くこと自体は可能です。しかしリアリティーや深みのある物語を書けるかといえば疑問が残ります。深い知識がないことにはプロのクオリティーを維持できないのです。
どうして「知識」が重要なのか、さらに掘り下げていきましょう。
何かについての深い知識が、小説家の個性、オリジナリティーにつながることもあります。鉄道の知識を持ち、時刻表を熟知することで、鉄道ミステリー・トラベルミステリーというジャンルを開拓した西村京太郎は、その代表格といえるのではないでしょうか。
「ファンタジー」に「経済」という専門性を付加したことで、これまでにない作品になったのが、支倉凍砂の『狼と香辛料』や、橙乃ままれの『まおゆう魔王勇者』など。これらも、小説家の深い知識から生まれたアイディアが光る作品です。
架空世界を舞台にしたファンタジーを書くなら、よく元にされる「中世から近世ヨーロッパ」について、深い知識を持っていると説得力が生まれます。現実の世界にファンタジー要素を加える場合にも、実在するオカルトや宗教の知識を元に描写できると、読者の関心を引けるでしょう。
SF小説ならば科学技術の知識が必要ですし、ミステリー小説においても、トリックに関する知識が間違っていれば興覚めです。特に歴史小説、時代小説ともなればその分野の幅広い知識がないと書けません。
何かについてよく知っていることは「作家性」にもつながるため、日頃の情報収集が大切なのです。
小説を書くための知識を得るにも、情報収集が肝心です。一番オススメなのは「本を読む」ことですが、いかんせんお金がかかります。学生やアルバイトをしながら小説家を目指しているケースでは、なかなかハードルが高いという方も多いのではないでしょうか。
そこでひとまずオススメしたいのが「ニュースをみること」です。インターネットニュースの登場によって、最新情報の入手がとても簡単になりました。
朝起きて、まずパソコンやスマートフォンでニュースをみる習慣をつけてください。そして知らない情報、単語が出てきたらそのままにせず、検索をしてみましょう。これだけでも毎日続ければ多くの知識が蓄積されます。
この方法は小説を書くうえで重要な「語彙力」をつける練習にもなるので、習慣にしましょう。
※語彙力についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事をご参照ください
小説に必要な語彙力の増やし方・向上方法について
簡単に膨大な情報が手に入るインターネットと、新聞や雑誌、書籍などの既存メディア。それぞれにオススメの使い方や注意点があります。その特徴を理解し、小説を書くための情報収集にうまく役立てましょう。
※小説のアイディア・発想法について詳しく知りたい方はこちらの記事をご参照ください
アイディアの出し方とインプット方法|好奇心の大切さ
インターネットにおいて、特にWikipediaの情報は網羅性に長けているため活用している方も多いのではないでしょうか。情報の信ぴょう性に関して少し疑わしい部分もありますが、とにかくその情報量に関しては、他のメディアでは太刀打ちできません。
また、「まとめサイト」(SNS掲示板の書き込み内容をまとめたもの)などには、真偽のほどは不明ながら、おもしろい話のネタが続々と投稿されています。
基本的にインターネットを介して得た情報は、「信ぴょう性の低さ」を踏まえ鵜呑みにしない覚悟が必要です。しかしこの幅広い分野を網羅した膨大な情報量を、ネタ集めや知識の表層を知るために活用しない手はありません。
インターネットで簡単に得られる情報は、既存メディア以上に慎重に扱う必要があります。情報が間違っていたり、偏っていたりする可能性を念頭に置いて、うまく活用しましょう。
インターネットなど速報性の高いメディアは、情報の速さが命となるため真偽の確認が不足しがちです。その点で信ぴょう性に不安が残ります。しかし既存のメディア(新聞、雑誌、書籍)には、ある程度のチェック機構が存在するもの。ネットの情報と比較して信ぴょう性が高いのはそのためです。他にも、既存メディアには多くの「利点」があります。
紙の新聞や雑誌をパラパラとめくったときに、まず見出しが目に飛び込んできます。そこから気になった項目をみていくという読み方はアナログ特有です。この「視認性」、いわゆる「一目見ただけでその情報の重要部分が理解しやすい構造」は、デジタルではなかなか再現できない部分でしょう。
また、新聞の社会面や文化面、地域面などにはスケールの小さな事件やちょっとした出来事の情報が掲載されています。このように自分が興味を持って検索したことだけでなく、気にもしなかった情報が目に入り、物語のアイディアにつながることはアナログの紙媒体ならではです。
ネットやテレビ、新聞、雑誌には、共通して情報が最新だという特徴があります。しかしその量や深さには限界があるものです。
やはり何かについて深い知識を得ようとする場合は「書籍」がベストな選択肢です。なかでも情報の精度、信ぴょう性、深さの点でもっとも信頼できるのが「ノンフィクションの書籍」でしょう。
また書籍なら、情報を手元に残せるというメリットも。そこに「本」があればふと気になったときに読み返せますし、なんとなく手を伸ばして気ままにパラパラと読めます。折り目をつけたり書き込みをしたりできるのも、書籍ならではの利便性といえるでしょう。
数少ないデメリットの1つとしてよく挙げられるのが、書籍は手に入れるのに「お金がかかる」という点です。学生の方は特に、情報収集のために毎回高い専門書を購入するわけにもいかないと思います。
そんなとき、オススメなのが「新書」です。新書は各ジャンルの入門編的な意味を持つ本です。専門知識の取っ掛かりに最適なうえ、1冊1,000円前後で買えるのでチェックしておいて損はありません。
書籍購入のハードルをぐんと下げてくれる「新書」ですが、それでも高いと感じるようなら、「図書館」という手があります。図書館は本を借りられるだけでなく、うまく活用すれば情報収集にとても最適な場所です。ここでは小説のアイディア・ネタ集めのためにオススメな図書館の利用法をご紹介します。
インターネットを使えば、最新のニュースやWikipediaなどから大まかな情報が得られます。しかし信ぴょう性の低さも懸念されるため、知りたい情報の「あたりをつける」程度に利用するのがオススメです。
Google検索や、Wikipediaでの調査、図書館の蔵書検索などを活用し、必要な情報の大枠を入手しましょう。足りない情報は「図書館」で調べていきます。
情報収集の効率を上げるには、下記の3つのポイントに沿って図書館を活用しましょう。
いまや図書館独自のウェブサイトを持っています。所蔵する書籍の情報や、どのエリアにある本なのかも事前に知れます。サイトで予約した本を借り、情報収集をするのが定番です。
期待した情報が載っていなかったり調べたいことがさらに出てきたりした場合は、ポイント2、3を参照しましょう。
これらの書籍が図書館にあるとすれば「総記」コーナーです。情報をちょっと詳しく掘り下げる必要があるなら、総記コーナーをチェックしてみましょう。
図書館をよく利用する方でも、自分が探している情報について、図書館司書に相談する人は少ないもの。これはとてももったいないことです。図書館司書は国家資格を持つ本のプロ。利用者からの要請に応えてアドバイスをする「レファレンス」のスキルがあるのです。
どのような辞典(事典)をみれば効率的に調査できるのか、熟知している司書も多いため、億劫がらずに質問して、図書館を有効活用しましょう。
情報のスピードと量を誇るインターネット、より深く専門性のある情報を得られる書籍。それぞれに適した情報の集め方があります。日常的に情報収集をして知識を増やすのも、小説家になるためには大切な知識を得る練習になります。そしてアイディアを形にするときには書籍や辞典(事典)の専門的な情報をしっかりと集め、小説のリアリティ-を深めていきましょう。
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監修|榎本 秋
1977年東京生。2000年より、IT・歴史系ライターの仕事を始め、専門学校講師・書店でのWEBサイト企画や販売促進に関わったあと、ライトノベル再発見ブームにライター、著者として関わる。2007年に榎本事務所の設立に関与し、以降はプロデューサー、スーパーバイザーとして関わる。専門学校などでの講義経験を元に制作した小説創作指南本は日本一の刊行数を誇っており、自身も本名名義で時代小説を執筆している。
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