榎本メソッド小説講座

小説の設定は「テーマ」から決めるべし! 読者に伝わる小説の書き方と決め方のポイント

あなたは「テーマ」を意識して小説を書いていますか。

テーマは、コンセプトを考えるときもプロットを作るときにも欠かせない存在です。
高い文章力やすばらしい表現で書かれた作品も、テーマが伝わらなければ読者には届きません。

今回は、小説を書く上で欠かせない「テーマ」の決め方と必要性についてご説明します。

テーマとは小説の「核」、いちばん大切な要素

作品でいちばん大切な要素を「テーマ」といいます。テーマは、「主題」や小説の「核」と表現することもあります。
「この作品で一番言いたいこと、読者に伝えたいこと」だと考えていただければ大丈夫です。

「テーマの定義が広すぎてわからない」という方は、自分が執筆しているときを思い出してみてください。「こんな話にしたいなあ」とふわっとしたイメージからストーリーを作ることが多いのではないでしょうか。そして、出だしから結末まで物語を組み立てるとき以下の工程を行うはず。

「この要素は残そうかな」
「イベントはどんな順番で起こそうかな」

これらの「ストーリー」を左右する「要素の取捨選択」をするとき、無意識に基準としている要素が「テーマ」です。

小説を執筆する上で、そのほかにもテーマは大事な役目を担っています。詳しく見ていきましょう。

1:「テーマ」が曖昧だと「何を伝えたいのかわからない」作品に

テーマを決めずに「こんなキャラクターを出して、こんなストーリーで……」と書きたい要素を入れるだけでも物語は出来上がります。しかしその物語を他人が読んで「おもしろい」と思うかと言われれば難しいでしょう。その小説は作者が好き勝手に書いた、誰にも伝わらない、もしくは伝わりづらい小説だからです。

プロ小説家を目指すのなら「直接テーマを書かなくても伝わる小説」を書くことに意識を向けしましょう。

伝わる小説に「テーマ」は必要不可欠です。テーマを曖昧にしてしまうと、要素を絞り込む基準が不確かになってしまい「伝わらない小説」になるのです。

魅力的な作品にしたいのなら、テーマを曖昧にせずしっかりと決め、意識して冒頭から結末までの「要素の取捨選択」を行いましょう。そのためにはプロット(物語の設計図)はテーマありき、というくらいの認識が必要です。

読者や審査員に「これを伝えたかったんだな」と思ってもらえるだけでなく、印象に残りやすい作品に近づけます。

2:テーマがストーリーを濃くする

魅力的な小説には「深み」が必要不可欠です。この深みは、多角的な視点で「テーマ」を見て、あらゆる形で表現した「小さいエピソード」を入れることで演出できます。

例をあげて、詳しく見ていきましょう。

ストーリー
「トップ俳優を目指す女性が、さまざまな苦難を乗り越え、最後には監督と婚約する」
テーマ
努力は報われる
物語の流れに必要な要素の例
  • 女性の決意
  • 葛藤と成長
  • 舞台で起こるアクシデント
  • 監督との恋愛模様

これらを補強、説明するエピソードを優先的に物語に組み込みます。

「女性の決意」→「トップ俳優を目指す理由」
「葛藤と成長」→「後輩俳優が大活躍するなか、自身の持ち味を発見する」
「舞台で起こるアクシデント」→「機材トラブルで、照明が突然落ちた」
「監督との恋愛模様」→「女性の演技指導だけでなく、プライベートの悩みにも真意に寄り添ってくれる、優しい姿に心惹かれる」

ストーリーのおおまかな流れは、この要素だけでも作れます。しかし、これだけでは深みがある小説にはならず「ありきたりな物語」と評価されかねません。

そこでストーリーには直接関係しないエピソードを追加し「個性」を演出してみましょう。

例えば「たとえ有名になってもファンから貰った手紙に返事を書く」というエピソードを入れてみるとどうでしょうか。「堅実さ・誠実さ」が感じられるシーンです。そんな女性の一面を見せることで、監督との恋愛模様や意思決定の場面に奥深さを与えてくれます。ここでいう奥深さとは、文字では書けない女性の心情です。

しかし俳優活動や恋愛模様とはまったく関係のないエピソード(例えば女性が1人でキャンプに行って山登りの才能に目覚める)を、多く入れすぎるとテーマがぼやけてしまうので注意しましょう。

さらにストーリーが「女性がトップ俳優になる」だけであれば「監督との恋愛模様」は必要ありません。その分、女性がトップ俳優を目指す理由やエピソードをより増やす方が物語に奥深さが出ます。

しかし従来どおり「婚約する」という結末に導きたいなら、監督側の事情もきっちり書きましょう。「女性のことを好きになってしまう監督の気持ち」についての説明がなければ、物語としての説得力が不足してしまいます。

テーマを基準に、要素の分量を調整するさじ加減は難しいもの。執筆回数を増やして慣れていくことも大切ですが、一つひとつのテーマ決めを真剣に行い、感覚を掴みましょう。

テーマに奥深さを出すポイント

テーマを表現するには、いくつかのお決まりのパターン「お約束」があります(例えば、ヒーローが出てくる作品なら悪役も登場させ、戦わせる)。その要素も大切ですが、あえて関係のない要素(悪役の一日)を入れることで奥深さの演出につながります。だからといって、好き勝手に要素を追加すると本筋がぶれてしまうので塩梅に気をつけましょう

「概念」と「書きたい」でテーマを決めよう

「ふわっと浮かんだものがテーマになるとは言ったけど、そんなの浮かばないよ」
「ふわっとしていてもいいって言うけど、どれぐらいのふわっと感?」

と思う方もいるかもしれませんね。テーマは「1番大事な要素」でもありますが、「自分はどんな作品を書きたいのか」という気持ちも同じくらい大事です。

どのような発想からでも「テーマ」は見つかりますが、無限にある方法の中から自分好みのやり方を探すのは骨が折れる作業です。

今回は、数あるテーマの決め方からオススメの方法を2つご紹介します。

パターン1:シーン、キャラクター、こんな場面を書きたい! から決めるテーマ(作者としての考えからの「テーマ」)

「劇的なラストシーン(主人公とライバルの決闘、陰謀を防ぐために奔走する主人公、世界を救うヒーローが悪の道に進んでしまうなど)が思い浮かんだので、その部分を目立たせるような物語にしたい」
「キャラクターの魅力(ヒロインの可愛さ、主人公のかっこよさ)を徹底的に引き立てたい」
「アクション、アクション、アクションの連続で興奮させたい!」

など「自分が書きたい」気持ちからくる要素も立派な「テーマ」になります。

自分が書きたいキャラクターやストーリー(エピソード)、世界観は大きなテーマとして考えましょう。それらを1つのきっかけにし、テーマが魅力的になるような要素を集めて並べればいいのです。「書きたい」から発想を広げる例についてご紹介します。

書きたいキャラクター「悪の道に進み世界を恐怖に染める元ヒーロー」
発想例
悪の道に誘ったのは誰で、どんな関係なのか。その誘いにのったヒーローの心境、状況は? インパクトのある展開にしたいから、死んだと思っていたヒーローの父親を悪の道に誘った人物にしてみよう。ヒーローが思い描いていた父親像と実際の父親は、天と地ほどの差があると展開が広がるな。ヒーローが活躍する世界だから、少しファンタジックだけど現実に即した社会かな……

ここからさらに「書きたい」要素を増やします。

そうか、この話に登場するキャラクターはみんな二面性を持っている。ヒーローが悪の道に進んだのは父親が想像していたよりもずっと魅力的な人物だったから、ついていきたくなったのだろう。そうすれば全体の筋が通るな……

このように「書きたい」から想像すると、新たな(隠された)テーマが見つかります。このテーマを「核」にし、小説に深みを出してみましょう。

テーマ「二面性」から深みを出したい

発想例
  • 元ヒーローと同じように、悪の道に進んだが後悔している男」を登場
  • 元ヒーローが以前の仲間と戦う」イベント
  • 幼い頃の元ヒーローと父親の会話」のような過去エピソード

このようなイベントやエピソード、キャラクターの出現があってこそ、語られるテーマ自体に説得力や深みが与えられます

パターン2:大きなくくり「概念」としての「テーマ」

概念からテーマを考える_友情|榎本メソッド小説講座
「友情」「努力」「愛情」「平和」「信念」「決意」「絆」「冒険」「試練」……。

これらの主義・主張的な「概念」をテーマにして作品を作りたい、という方も多くいます。「テーマ」という言葉を思い浮かべるときに、こちらをイメージする方が一般的かもしれません。

しかし、このような概念をテーマにした結果、こんな悩みが出てくることも。

「次にどうしたらいいかわからない」
「実際に書いてみるとテーマが反映されていないかもしれない」
「書き上げた作品を読んでもらったものの、テーマが相手に伝わらなかった」

あまりにも一般的・汎用的な「広い」テーマのため、物語の核にするには適さないことが多々あるのは当然です。

では「概念」からどのようにして発想を広げるのでしょうか。

例:概念「友情」

まずは物語のテーマになりそうな多様な「友情」のあり方を見つけましょう。

「同い年の友情」「動物と人間の友情」「年の離れた人物との友情」「異界から来た人物との友情」「敵同士の友情」

ある程度出揃ったら、パターン1と同じように、多角的に見て要素を増やします。もしくは各種の友情がぶつかり合うような物語にするものいいでしょう。大事なのは、決めた概念を自分の中で理解を深めたり考えたりして形にすることです。

「あなた(作者)が物語のテーマにしたい友情とは一体何か」の問いかけなしに物語は作れません。一度自分の中で腹落ちするレベルまで「決めた概念」について考えましょう。

また「平和」や「愛」「正義」などのような概念をテーマにした場合、決してやってほしくないことがあります。それはキャラクターのセリフだけあるいは地の文での語りだけで、そのテーマを提示することです。

もちろん「愛は◯◯だ!」などのキメ台詞を使ってテーマを表現することで、印象的な場面になるため、有効な方法ではあります。
しかし、言葉だけですべてを語ろうとするとどうしてもくどくなり、胡散臭ささが出たり説得力がなくなったりします。

そういった視点からも、概念からテーマを作る際にも「深堀り」する行為が必要です。

テーマを主張するときのポイント

地の文やキャラのセリフでテーマの主張をするだけでは伝わりません。具体的なエピソードで説得力を与えるよう、配慮しましょう。

ふわっと考えたテーマは変えてもOK

「書きたいから、たくさん要素を並べたけどうまく物語が作れない」
「概念をいろいろな側面から見て要素を作ったけど、いまいちピンとこない」
「要素を並べているうちに、考えが変わってきたからテーマを変えたい」

そんなときは迷わずテーマを変更しましょう。

2つのパターンで考えたテーマはいわゆる「仮のテーマ」です。

「こちらの方が正しい」と無意識・直感で思ったのなら、変更するチャンス。物語を作ることは「自分の無意識と向き合う」行為ともいえます。躊躇せずに変更する勇気は、創作する上での、とくに発想という段階において何よりも重要です。

広いテーマは「深く考えて客観的な視点」で深堀りするべし

物語の中でテーマを表現するのは、非常に難しい行為です。執筆経験が浅い方や、初めて書いている場合などは、しっかりポイントを押さえておかないと、相手に伝わる確率のほうが少ないといえます。ポイント・方法についてもう一度おさらいしておきましょう。

テーマを表現する上で大切にしたいポイントと表現方法

  • テーマについて深く考え多角的に見て要素を追加
  • その要素を小説内にちらばせることで、共感と理解が得られる作品に

深く、多角的に見るときに忘れがちなのが「客観的な視点」をもつことです。

客観的な視点をもつことで「読者に伝わる」物語に

すべての人が作者と同じ思考、理解度でその物語を読んでいるわけではありません。ときには作者の思いもよらぬ視点から読んでいる場合もあります。

書こうとしたテーマはきちんと表現できているか、読者の視点から確認しましょう。

「言葉だけでなく、イベントやエピソードを通じてテーマを語る必要」が出てきます。

たとえば愛の大切さを語るなら、同時にしっかり書くべきことがあります。

例:愛があるからこそ人生に彩りが生まれ、毎日が恋人中心の生活だった。だからこそ、失恋によって悲惨な日々になってしまった。

ただただ「愛は素晴らしい」「失恋は悲しい」などのことばを並べても、誰も共感と理解を寄せてはくれません。価値観は人それぞれなのです。

そのため小説を書いている最中や、書き終わったあとに「初めてこの物語を読む人」のように客観的な視点で「ストーリーが伝わるか」を確認しましょう。

テーマの深堀りは「発想法」を使用するのも手

「具体的なテーマはあるけど提示するのは少し恥ずかしい」

など「広い」テーマから具体的なテーマに移行できない方も多くみられます。執筆していく段階で具体的になることもありますが、そうならないことも。それでは、せっかくの広いテーマも設定した効果がありません。大切なのはテーマを明確にすることです。

「深く考えるのが苦手」
「客観的な視点から見ていたら、いつまでたっても小説が完成しない」

ブレインストーミングをはじめとする発想法を参考にして、苦手な方はテーマの深堀りを行いましょう。

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「テーマ」は一日にしてならず 書いてコツをつかもう

テーマは1日にしてならず|榎本メソッド小説講座
テーマがブレると「伝わらない小説」になり、読者に伝わらなければ意味がないと思ってください。テーマを出だしから結末まで一貫することで「書かずとも伝わる」小説が出来上がります。

しかし、最初からテーマが伝わる小説は、なかなか書けないものです。執筆本数が増えるごとに習得できるものだと認識し、くじけず書けるまで何度もチャレンジしましょう。

テーマが決まったら、次は「コンセプト」について考えるとスムーズですよ。


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監修|榎本 秋

1977年東京生。2000年より、IT・歴史系ライターの仕事を始め、専門学校講師・書店でのWEBサイト企画や販売促進に関わったあと、ライトノベル再発見ブームにライター、著者として関わる。2007年に榎本事務所の設立に関与し、以降はプロデューサー、スーパーバイザーとして関わる。専門学校などでの講義経験を元に制作した小説創作指南本は日本一の刊行数を誇っており、自身も本名名義で時代小説を執筆している。

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