小説家志望者のなかには、まだ長編を書いたことがないという方も多いのではないでしょうか。長編を完成させる力を付けるためには、まず掌編小説をいくつか書き上げる練習法がオススメです。今回は掌編小説を書くときに気をつけるポイントから上達のコツまでご紹介します。
※小説の書き方って何からはじめればいいの?という方は以下の記事をご覧ください
小説の書き方【初心者必見】はじめの一歩から完成まで
目次
小説は読者の視点で読んだときにきちんと情報が伝わる文章になっているかが大切なポイントです。これを常に確認しながら書いていく必要があるのですが、書きなれた人でなければ難しいもの。はじめのうちはプロット通りに展開を進めることや、面白く書くことに頭がいっぱいで、文章のわかりやすさにまで気がまわらなくなりがちです。
これから小説を書こうという方にとって、いきなり長編小説を書きはじめるのはハードルが高いかもしれません。
掌編なら文字数が少ないため、書く時間も読み直す労力もそれほどかかりません。まず手始めに掌編にチャレンジし、客観的に自分の文章を読む「俯瞰力」を身につけるのがオススメです。
短い掌編小説だからといって、ただ漫然と書いていたのではいつまでも上達しません。しっかりとポイントをおさえ、作品のクオリティ向上を意識しましょう。ここでは掌編を書くときに気をつけたいポイントを、6つご紹介します。
掌編小説を書くときは、メリハリを持たせることを意識しましょう。だらだらと長くなったり、世界設定やキャラクター設定を詰め込みすぎたり、本筋に関係ないエピソードを深堀りしてしまわないよう気をつけてください。
キャラクター描写や世界設定の説明を長々と書き連ねると、どんどん文字数が増え、長い割にストーリーがしっかり書けていない、アンバランスな作品になってしまいます。
物語にメリハリをつけるのは長編においても同様に大切なポイントですが、短い物語を書くときは、特に注意が必要です。
文章の練習として、まずは800文字~1200文字くらいの文字数を目安に掌編小説を書いてみるのがいいでしょう。この文字数ではストーリーの主軸以外の要素はあまり入れられません。詰め込みすぎず、スッキリとまとめるよう工夫しましょう。
掌編小説を書くときに意識したいのは、「物語にしっかりオチをつけること」です。短い文章のなかで、物語をキレイに締めるためのオチがちゃんと用意できているかを考えましょう。
どのようなオチがいいのかは物語のカラーや書き手の作風によっても違いますが、「面白い」という基準で考えると「読者の予想を裏切る展開」にするのもいい方法です。
何の意外性もない物語で、読者に「面白い」と思わせるのは至難の業。短い物語だからこそ、思いがけない展開をラストに用意して、キレイにオチを付けてみましょう。
明確なテーマがあるかどうかも掌編小説にとって大切なポイントになります。書く前にテーマをしっかりと定めておきたいものです。
小説を書くにあたって「読む人に何を伝えたいか」をよく考えると、自ずとテーマが決まります。そのテーマを活かせる印象的なシーンを用意することで、面白く一貫性のあるストーリーが作れるのです。
テーマが決まったら、そこから外れないように注意するのも重要です。「面白くしよう」という気持ちが先走り、ついついテーマを置き去りにしているケースはよくあります。こうなると、結局何が言いたいのかわからない作品になってしまうのです。
テーマに沿いつつも面白さを意識することで小説はぐんぐん上達します。
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小説の設定は「テーマ」が要! 読者に伝わる小説の書き方と決め方のポイント
小説を書くからには、読んだ人が頭の中ではっきりとイメージできる描写を心がけたいものです。これがあると短い文章のなかでも、読者が背景を思い浮かべ、物語の世界に没入できます。また説得力が増す効果も期待できるでしょう。
例えば「海辺」という説明だけでは、思い浮かべる背景は人それぞれです。白い砂浜が広がるビーチリゾートのような光景をイメージする人もいれば、かもめが飛び交う漁港の景色を浮かべる人もいるでしょう。イメージの差は、作品の雰囲気をまったく違うものにしてしまいます。
掌編だからと省かずに、キャラクターたちがどのような場所にいるのかをしっかりと説明し、イメージの差がでないようにしましょう。
掌編小説の登場人物は多くの場合2~3人ですが、関係性は明確に書いてください。
主人公以外のキャラクターには、お互いを対比して相対的な魅力を演出したり、主人公が行動するためのきっかけを作る役割があります。またキャラクター同士のポジションによって主人公の立場を理解できます。キャラクター同士の会話ややりとりが作品の魅力につながることも多いものです。登場人物がどのような関係性なのか、明確にわかるよう描写しましょう。
ただしストーリーによっては、最後まで読んではじめて関係性がわかる、という手法が効果的なものもあります。キャラクターの関係性をどんでん返し的なオチに使いたい場合も、物語の最後までには必ず関係性がわかるようにしてください。
掌編のように短い物語では、会話と状況説明だけに終始してしまいがちです。キャラクターがどのような気持ちなのか、何を思って行動したのかという部分は、共感にも説得力にもつながります。そのため小説にとって心理描写はとても重要なのです。
キャラクターの内面をしっかり描写するのを忘れないようにしましょう。
文章上達のカギはまず、多くの作品を完成させること。そのために短い文章のなかでさまざまなポイントをおさえる必要のある「掌編小説」を練習するのは手段として最適です。ここでは、掌編小説を書いて小説の上達につなげるコツをご紹介します。
せっかく掌編小説を書くのならば、自分が苦手だと思っているジャンルやテーマにも挑戦してみましょう。苦手だから書かないという考え方では視野が狭くなってしまい、似たような方向性の作品しか書けなくなります。
苦手だと思い込んでいたテーマも実際に書いてみたら楽しかったというケースもよくあることです。小説は色々なテーマに取り組んだ経験が実践に活かせる分野ですから、ぜひ苦手だったり、難しそうだったりするテーマにも果敢に挑戦しましょう。
掌編小説を書くとき、時間制限を設定しておくのも上達のポイントです。これには2つの理由があります。
1つはゆくゆく新人賞に応募するにしても、プロ小説家を目指すにしても、そこには必ず締め切りがあるため、時間制限には慣れておいた方がいいという理由です。
2つ目は1つの作品について、いつまでも手直しを加え一向に作品が完成しないという事態を避けるためです。
同じ作品を何度も書き直す時間があるのなら、どんどん他のテーマに挑戦して数をこなしていく方が書く力がつきます。「完璧な作品」にこだわるよりも多くの作品を書き終えることに力を入れましょう。
より多くの作品を仕上げることが上達のコツだと前述しましたが、ただ書けばいいというものでもありません。一つひとつの物語をきちんとした形で完成させることも上達するための重要事項なのです。
そのためには「構想」が必要になります。あらかじめどのような物語にするのかをメモに書いてから、作品に取りかかりましょう。簡単なプロットがあることで、物語の流れを頭の中でイメージしながら書けるようになり、話が横道に逸れることもなくなります。また時間の短縮にもなるため、練習としてはオススメです。
なんとなく書きはじめてしまうと、テーマからずれたり、書きたかったものとは別の話になったりします。これは長編だけでなく掌編でもよくみられる失敗なので、注意しましょう。
長編小説を書き上げるのは大変な作業ですが、まずは掌編からポイントをおさえて完成させ、数をこなしていくことで、上達を目指しましょう。
掌編を書くことに慣れてきたら長編にも挑戦してみましょう。最短で上達したいなら長編小説を書き上げ、プロに見てもらうのが一番です。
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監修|榎本 秋
1977年東京生。2000年より、IT・歴史系ライターの仕事を始め、専門学校講師・書店でのWEBサイト企画や販売促進に関わったあと、ライトノベル再発見ブームにライター、著者として関わる。2007年に榎本事務所の設立に関与し、以降はプロデューサー、スーパーバイザーとして関わる。専門学校などでの講義経験を元に制作した小説創作指南本は日本一の刊行数を誇っており、自身も本名名義で時代小説を執筆している。
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