普段からなんとなく使っている日本語ですが、「文法」のこととなると苦手意識のある方も多いのではないでしょうか。物語を正しく読者に伝えるには、わかりやすく書くための文章力が必要です。
今回は小説を書くときに理解しておきたい文法の基礎・主語から助詞までを解説します。
目次
主語とは「〇〇は」「〇〇が」という、後に続く文章が表す動作や状態の主体となっているものです。
文章に主語があると、その動作を「誰が」したのか、「何が」その状態にあるのかという情報が伝わりやすくなります。
主語を使うときのポイントは、「〜は」「〜が」「〜も」がついている言葉に注目し、その後にくる動作や状態を表す言葉と合わせたときに意味がつながるかを確認することです。
主語と名詞の区別がつかない、という方もいるかもしれません。文章の中で主体となるものが「主語」なら、名詞は「ものごとの名前を表す」ものです。
上の文なら主語は「私は」、名詞が「私」「リンゴ」になります。
名詞はさらに細かく分類できます。代表的なものが普通名詞、固有名詞、代名詞です。
普通名詞というのは一般的に呼ばれる、ものの名前。「リンゴ」や「海」「少年」などが普通名詞です。
どんな状態であっても、リンゴはリンゴですし、海や少年であること自体は変わりません。このようにどんな文が前につこうと変わらない、一般的な名前のことを「普通名詞」といいます。
固有名詞とは、「特定のものに与えられた名前」です。人の名前や地名など、そのものだけが持っている名称を指しています。
たとえば「少年」は普通名詞ですが、その少年に太郎という名前があれば、「太郎」は固有名詞です。
「少年」は太郎以外のことも指しますが「太郎」という名は太郎個人を意味します。同じ対象を表していても、表現次第で普通名詞にも固有名詞にも変化するのです。
代名詞とは、普通名詞や固有名詞を使わず、対象を指し示す時に使う言葉です。
「彼」「彼女」などもそうですし、「これ」「あれ」「それ」なども代名詞にあたります。
長年連れ添った夫婦がいたとしましょう。その夫が「あれ取って」といったら妻がリモコンをわたす、というようなシーンを見かけることはないでしょうか。
この場合では「リモコン」という名詞を使わないで「あれ」という代名詞を使ったことになります。
「少年」が普通名詞、それに特定する名前「太郎」になると固有名詞、それを「彼」とよんだら、代名詞になります。
述語とは、主語にあたるものの「動作、作用、性質、状態」などを表す語です。
「食べた」「言った」などが述語にあたります。
「私は食べた」では「食べた」「彼は言った」では「言った」が述語です。
気をつけたい部分は、述語と主語はセットになっているものだということ。どの主語がどの述語とセットになっているか、常に気を配って書くようにしましょう。
一文目の「私は」が主語で、「やってきた」が述語です。二文目の「渋みが」という主語と「広がる」という述語もセットになっています。
三文目の「苦みすらも」は一見主語には見えませんが、これも実は主語にあたり「愛おしい」という述語とセットです。
このように「~が」「~は」という形でなくとも主語になることがあります。これを見抜くためには「~が」「~は」に置き換えてみるといいでしょう。
「苦みさえも」を置き換えて「苦みが愛おしい」とすると「苦みさえも」が主語であることがわかりやすくなりました。
修飾語とは、「どんな」「いつ」「どこで」など、ほかの部分の内容をくわしく説明する部分のことです。文のなかで、主語でも述語でもない部分が修飾語となります。
そして「修飾語によって説明される部分」が被修飾語というわけです。
修飾語を使うことで細かなニュアンスが表現できるので、小説に書かれたシーンを具体的にイメージしやすくなります。
「リンゴを食べた」という文を例としてみていきましょう。
「赤い」「大きな」という部分が「リンゴを」をくわしく説明しています。よって、修飾語は「赤い」「大きな」です。被修飾語は「リンゴを」となります。
「今朝」「昨日」が「食べた」を説明しています。そのため「今朝」「昨日」が修飾語で「食べた」が被修飾語です。
「自宅で」「公園で」が修飾語、「食べた」は被修飾語です。
接続詞とは、前後の文章や単語をつなげる働きをするものです。文章をスムーズにするために、重要な役割をもっています。
「だから」「そして」「なお」「さらに」
上記が接続詞の一部として、よく使われるものです。では接続詞を使わないとどのような文章になるのか、例文をみてみましょう。
まるで箇条書きのような途切れ途切れの文章になりました。接続詞がないと前後の文がうまくつながらないので、文章の流れが悪くなってしまいます。
では、接続詞を入れてみるとどう変化するのでしょうか。
ここで追加した接続詞は、「すると」と「しかし」の2つです。これだけでも、それぞれの文章につながりができ、流れが良くなりました。
接続詞は文章を読みやすくするために大切な要素です。自分が書いた文章を読んで、ブツブツと途切れている印象を感じたら、接続詞がうまく使われているかを確認しましょう。
ひとくちに接続詞といっても色々な種類があります。それぞれの特徴はどのようなものでしょうか。
接続詞は上記以外にもさまざまな種類があります。どの接続詞にどのような意味があるのかを覚えておくと、正確で伝わりやすい文章を書けるようになります。
よく「てにをは」がおかしいといいますが、これは助詞のことを指しているのです。数ある助詞のなかから簡単に「て」「に」「を」「は」だけをピックアップして、助詞全般を総称しています。
助詞とは、言葉に意味を持たせるために使う語です。助詞には「~が」や「~を」のように、名詞の後につけて主語にするものや、語と語をつなげる「~と」のような性質のものもあります。
これまでに出てきた「名詞」や「接続詞」は単独でも意味のある言葉でしたが、この「助詞」は単独では意味を持ちません。助詞はほかの「意味を持つ言葉」に付属して、語句と語句の関係を表したり意味を持たせたりします。
「おいしい」「リンゴ」「食べた」は単独でも意味を表しています。すなわちこの文では、「を」だけが助詞というわけです。
助詞と同じく、単独では意味を持たない語の仲間に「助動詞」があります。その大きな特徴は「活用がある」ということ。
活用がある助動詞は 文中での用法によって形が変化します。
「食べない(未然形)」「食べます(連用形)」「食べる(終止形)」「食べるとき(連体系)」「食べれば(仮定形)」「食べよ(命令系)」
このように助動詞の活用は、未然形・連用形・終止形・連体形・仮定形・命令形の6種類に分かれます。
助詞にはいろいろな種類があります。それぞれの特徴をみていきましょう。
格助詞や副助詞の場合は、直前に名詞や代名詞などをあてはめてみると区別がつきやすいです。
接続助詞や終助詞の場合は活用のある動詞や形容詞などをあてはめてみましょう。
日常会話のなかでは、主語が無くても、ある程度話の意味が伝わるケースは多いもの。しかしそのまま文章にするとたちまち、誰が何をしているのか読み取りづらくなってしまいます。そうならないためにも文法の基礎を押さえて、正しく使えるようにしましょう。
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監修|榎本 秋
1977年東京生。2000年より、IT・歴史系ライターの仕事を始め、専門学校講師・書店でのWEBサイト企画や販売促進に関わったあと、ライトノベル再発見ブームにライター、著者として関わる。2007年に榎本事務所の設立に関与し、以降はプロデューサー、スーパーバイザーとして関わる。専門学校などでの講義経験を元に制作した小説創作指南本は日本一の刊行数を誇っており、自身も本名名義で時代小説を執筆している。
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