ファンタジー小説や冒険小説などには欠かせない要素が「戦闘描写」です。バトルシーンって苦手なんだよねという方、そもそもどういうふうに描写すればいいのかわからないよという方も多いかもしれません。
しかし苦手だからと言って避けていたのではもったいない! 戦闘シーン、バトルシーン、アクションシーンでは、文章のテンポを操るテクニックや人の身体の動きを描写するヒントが得られます。
ここでは小説で戦闘シーンを書くためのコツをご紹介します。
目次
アクションやバトルは苦手だからなるべく避けたい、という人もよくいますが、勢いのある戦闘シーンを好む読者はとても多いものです。特にファンタジー小説(異世界、現代)では重視される場面となります。
さらに戦闘シーンへのチャレンジは、「人の動き」を描写するよい練習になります。どんな小説でも人の動きや動作は多かれ少なかれ描写するもの。アクション・バトルシーンの書き方を学んで、描写のクオリティを上げましょう。
戦闘描写は小説の見せ場であり、盛り上がるシーンには欠かせません。小説の展開には「ヤマ」と「タニ」があり、「ヤマ」は盛り上がり緊張感のある部分、「タニ」は物語が落ち着く部分です。戦闘描写の続くアクション・バトルシーンは、まさに「ヤマ」なのです。
しかし「ヤマ、ヤマ、ヤマ……と続くと全体を通して読んだときに、読者は疲れてしまいます。「ヤマだらけ」にならないよう、適度に落ち着くシーンを作りましょう。
※物語の展開「ヤマとタニ」について詳しくは以下の記事をご覧ください
ストーリー構成の基本と応用を学んで小説の見せ場を作ろう
アクションシーンで大切なのが、スピード感。スピード感が出ることで緊迫感や臨場感にもつながります。ではどのようにすればスピード感のある文章を書けるのでしょう。
ここでは、文章的なテクニックをご紹介します。
「頬に押し付けられたのは銃口。」のように、文章を名詞や代名詞などの「体言」で終わらせる手法が、「体言止め」です。文章に余韻を与えたりリズムをつけたりする効果があります。しかし使いすぎると細切れのような文章となり、読みにくくなるため注意が必要です。
改行を多めにとることで、その度に文章が止まります。そのため、つながった文章にはない独特なテンポが生まれるのです。こちらも体言止めと同様に、やりすぎると稚拙な文章に見えることがあるので適度に使いましょう。
一文を短くするのも効果的です。接続詞を最低限にすると一文を短くできます。またセリフの量や長さを抑えるのもオススメです。
これらのコツを上手くつかえば、文章にリズムが生まれるのと同時に、文の構造が単純になります。結果として、読者が文章を読む速度も上がるためスピード感も得られるでしょう。
ただし使い過ぎには注意が必要です。かえって理解しづらかったり、稚拙な文章になってしまったりするケースもあります。緊迫感のある文章が書けなくて悩んでいるのであれば、試してみるのもオススメです。
登場人物が身体をどのように動かしているのか、相手との位置関係(距離など)がどのようになっているのか、をしっかり設定して書くのがポイント。
剣道や柔道などの武道、ボクシングなどの格闘技の経験がある人以外は、戦うときの身体の動きや、相手との距離感などがつかみにくいものです。
運動経験がない人は、次のような方法で動作や位置関係を掴む練習をしてみましょう。
まずはスポーツの試合やHOWTO動画で観察してみるのがオススメです。相手との身体的な距離感、体の動かし方がどんなふうになっているかなどを見ます。
観察したら実際にその動きをマネして、身体を動かしてみましょう。実際に自分で動いてみると、どこに力が入っているのか重心がどこにあるのかなどが理解しやすくなります。
機会があったらマッサージ師や整体師に質問してみると勉強になります。もし整体などに通っているのであれば、情報収集してみましょう。
身体の変化など不思議に思ったことはなんでも聞いて、なるべく論理的に教えてもらいます。このような情報の蓄積が、人の身体を描写するときに役立つのです。骨と筋肉の関係は人の身体の基本。身体を理解すれば、キャラクターの歩き方やクセなども考えられるようになってきます。
ひとくちにバトルシーンといっても、ジャンルによって求められているものが違います。
異世界ファンタジーなどでは、「ファンタジーらしさ」の演出を忘れてはいけません。怪物や魔法などを登場させるなど、状況にこだわりを持たせます。異世界が舞台のバトルシーンに、単純な殴り合いを期待している人は少ないのです。
同じファンタジーでも現実の世界が舞台になった小説では、より読者の目が厳しくなります。例えば普通の高校生なのに、敵にボコボコにされても平気な顔をして戦っているのはおかしいですよね。そのあたりに気を配ってリアリティーを持たせましょう。
現代や近未来ものなど、文明の発達した世界が舞台のバトルシーンでは、銃のような武器を使うことが多いです。戦車、戦闘機やロボット、ヘリコプターなどが登場するのもダイナミックなおもしろさがあります。
しかし残念ながら、このような武器や乗り物、兵器などをフィクションで知っただけの知識や想像だけで書くと不自然になる場合が多いです。そのため、しっかり下調べを行いリアリティーのある描写を行います。
しっかりと調べて書いたものと、ふんわりしたイメージだけで書いたものとは説得力が変わってくるのです。
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ファンタジー小説の書き方|異世界の設定どう作る?
戦えば怪我を負うことがあるのは、当たり前。だからといって、バトルもので毎回主要キャラクターが怪我をして、その後の治療や療養を延々と描いていたら単調になってしまいます。
しかし「怪我」の描写は、挫折からの復帰の演出や「タニ」を作りたい時などに便利な面も。そのため覚えておきたい描写のひとつでもあるのです。
キャラクターの痛みや苦しみを表現するのに躊躇する人も多いことでしょう。しかし、キャラクターの行動に説得力を与える、あるいはキャラクターに共感や感情移入をしてもらうために、痛みや苦しみをしっかり書くのはとても大切なことです。
痛みに耐えて頑張る主人公の姿、あるいは過ちを取り返すために傷という代償を払う姿は、多くの読者の共感と応援を呼びます。
とはいえ、リアリティーにこだわり傷の様子を詳細に書きすぎればグロテスクになりますし、バトルの度に主人公たちの痛みや苦しみばかりにフォーカスするのも物語のテンポが悪くなってしまいます。適切なタイミングで描写をしましょう。
また、同じ痛みでも立場が違えば感じ方も変わってきます。現代の高校生と中世の傭兵といったように異なる立場であったら、同じように感じるはずもありません。例えば「屈強な傭兵が、高校生と同じレベルで傷に苦しみ、痛みで動けなくなるはずがない」といった具合です。
キャラクターによって痛みの感じ方に差があるのをしっかり書き分けましょう。
また、痛みが酷ければ他のことを考える余裕もなくなり、人の心を変化させることもあります。そういった変化を丁寧に書けると物語に説得力がでてきます。
戦闘シーン、戦闘描写に欠かせないのは「スピード感」「緊迫感」「躍動感」。
文章のテクニックでスピード感や緊迫感を出し、身体の動きを細かく描写して躍動感を出していきましょう。
バトルシーンが苦手だから書きたくないという人は多いですが、どんな小説も登場人物が動くことで物語は進んでいきます。これは小説を書く以上、人の身体の動きを描写することからは逃れられないということです。
動きの大きな戦闘描写やバトル・アクションシーンは、恰好の練習材料となります。たくさん書いて、身体の動きの描写を極めましょう。
※もっといろいろな表現・描写の方法を知りたい方は以下の記事もご参照ください
小説表現のワザと書き方のコツ
伝わる風景・情景描写の書き方
共感を呼ぶ心理描写のコツは
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監修|榎本 秋
1977年東京生。2000年より、IT・歴史系ライターの仕事を始め、専門学校講師・書店でのWEBサイト企画や販売促進に関わったあと、ライトノベル再発見ブームにライター、著者として関わる。2007年に榎本事務所の設立に関与し、以降はプロデューサー、スーパーバイザーとして関わる。専門学校などでの講義経験を元に制作した小説創作指南本は日本一の刊行数を誇っており、自身も本名名義で時代小説を執筆している。
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