「アイディアを探すために、旅行に行きたいけど資金面の都合がつかない」
「特別な体験をしたいけど、何が特別かわからない」
そんな考えから小説のネタになるアイディアが探せないという方も多いはず。でも特別な体験をしなくても、アイディアは「身近なところ」に転がっているものです。
今回は、身近なところからネタを見つけるアイディア発見法をご紹介します。
※小説のアイディアが見つかったらこちらの記事もお役立てください
アイディアノートの作り方【ひらめきは鮮度が大事!】
目次
小説を書くにはネタがなければならず、ネタを作るにはたくさんのアイディアが必要です。そのアイディアは「情報収集」をしなければ生まれません。それも偏ったものではなく、ジャンル、地域、年代問わず多様な情報を取得することで、唯一無二のアイディアが作られます。高度情報社会である現代を生きる私たちは、とくに意識することなく、日々多くの情報に触れています。知りたい情報を意図的にキーワードで調べることもあれば、否応なしに知りたくない情報が入ってくることも日常茶飯事です。その中でも大切なのは、「面白そうだな」という好奇心のアンテナを立てて情報を集めることです。
【小説のアイディアについての関連コラム】
アイディアの出し方とインプット方法|好奇心の大切さ
アイディアの発想方法はビジネスに学べ? 5つの発想法をご紹介!【プロ小説家が教える小説の書き方】
情報収集には大きく分けて2つの種類があります。
→アンテナを立てて情報を集め、「これは面白そうだな」と覚えておくこと
→創作のために必要な情報がある場合、詳しい情報を掲載している本やホームページ、知っている人を探す行動
アイディアの元になる情報収集は1のやり方です。確認していきましょう。
情報収集をするとき「覚えたい」気持ちが先行して、何度も同じ文章を読んでしまいます。しかし「覚える」と意識しなくとも、ある程度の情報は残るものです。すぐに思い出せなくても、単に「意識的に取り出せない」状態にあるだけ。きっかけがあれば思い出せるので、細かく覚えることを意識するよりも、1つでも多く新しい情報を集めましょう。だからといってすべてを忘れてしまってはいけません。最低でもこの2つは覚えておくと詳細検索が容易になります。
たとえば「ヴェストファーレン条約」という単語と大体の意味以外は忘れてしまったとします。しかし単語がわかればネットや辞典で詳しく調べられ、大体の意味を覚えていれば、得た情報の真偽性について判断ができます。単語は詳細検索のきっかけに、意味は同音異義語の選別をするときに大切な要素です。可能な限りこの2点だけは、意識してインプットを行いましょう。
インターネットの普及により、詳しい情報も容易に取得できるようになった現代。資料を丸暗記する深く狭い覚え方よりも、多種多様な分野について広く浅く知っている方がアイディアを集めやすいようです。
だからといって「深く狭い」覚え方はやめよう、というわけではありません。ネットで検索してもすぐ出ないようなレベルまで深めれば、競争相手と比べて非常に価値のある武器を持っていることになります。
基本は「広く浅く」、そして何か1つ深めたいことがあれば「狭く深く」で情報収集をしましょう。
「今日は情報収集の日にしよう」
と決意して、寝る間も惜しんでさまざまなジャンルや時代の情報を収集するのはNG。せっかく情報を詰め込んでも、定着させなければ意味がありません。
人間は「寝る」ことで、情報を記憶に定着させます。そのため、情報収集をしたらそのまま書き始めるのではなく、一旦寝ましょう。好奇心や情熱が高まっている今を逃したくない、という気持ちもわかります。しかしその状態で書くことで、情報収集の粗さがでてしまう危険性も。
完成間近になって「元にしていた情報が違っていてプロットから書き直し」なんてことはできれば避けたいものです。眠るだけで必ず記憶が定着するわけではありませんが、「収集終わりは必ず睡眠」を第一に情報収集を行いましょう。
情報収集がアイディアにつながる理由と、行うときの注意点を確認したらそろそろインプットしたくなったのではないでしょうか。ここでは身近・手軽にできる方法やスポットについてご紹介します。
今や寝ている時間よりもインターネットやSNSに触れている時間の方が長い、という人もいるかもしれません。ただぼーっとみているだけのネットも情報収集ツールとしては抜きん出た情報量と網羅性、迅速性に特出しているでしょう。
さらにSNSを利用すれば、足を運ばずともに声を聞いたこともない人や遠くの地に住んでいる身内の生活も確認できます。
ネット記事やニュースも情報収集先として優秀です。旬な情報からテレビでは取り上げない種類の情報までなんでも揃っています。検索サイトによっては自分の好みに応じた系統のニュースを並べてくれるところも。
現代を舞台にした作品を書くのなら、リアルで最先端の情報は流行の移り変わりを意識する上でとくに大切です。1日1回は、TwitterのトレンドやYahoo! のニュース欄を確認しましょう。
ただし、閲覧数を稼ぎたい、人気者になりたいという目的のために偽の情報を流す人もいます。情報が書かれているサイトは信頼できるものか、確認してからクリックするなどの対策が大切です。
ただ、めくるだけでいろんな情報が取得できる辞典に、なにかの特集をしている雑誌。さらには1つのことを深く掘り下げた専門書、ノンフィクションから夢あふれる小説まで、書籍は昔からある情報源です。書籍は信ぴょう性が高く、読むだけで文章力も上がります。「表紙買い」などの言葉もあるように、フィーリングで選ぶことも可能です。また「書籍」という形は小説家志望者からすれば憧れの存在。持っているだけでモチベーションを上げ、読めばインスピレーションが湧き、情報収集ができる優れものといえるでしょう。
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スポットとしてオススメなのが、なんらかのテーマにもとづいて展示を行う施設です。
学校の行事などで、「嫌というほど〇〇館には通ったからもう結構」という方もいるでしょう。入場料も高く、場合によってはふらっと行ける距離にないこともあり、選択肢に上がりづらいかもしれません。しかしプロ小説家を目指すもの、自分自身を刺激してくれる選択肢はできるだけ増やしておきましょう。
「どこを選べばいいかわからない」「行っても何も覚えていない」なんてことがないように選ぶポイント、観るべきポイントについてご紹介します。
まったく興味がない絵を観に美術館に行ったり知らない偉人の記念館を訪れたりすることは、退屈を感じやすくなる原因の1つです。せっかく入場料を払ったのに流し見になってしまうのはもったいない行為です。そのため、まずは自分の興味がある・強みになるテーマや分野を選びましょう。
中でもオススメなのは、この3つです。
住んでいる地域というのは、それだけで立派な個性となり、ライバルと戦う武器になります。地元では当たり前でも、他の地域の人にとっては驚くべき風習だと思われることも。習慣や風習になった経緯は、物語のきっかけ作りに使えるかもしれません。
漫画やアニメなどの資料館は、原画やラフ画像などめったに見られないものが鑑賞できます。さらには原作者のインタビューや、場合によっては仕事道具まで展示されているかもしれません。このような機会は、アイディアをもらえるだけでなく、自分自身のモチベーションを上げることにもつながります。
自分の好きな分野の特別展やテーマ展は言わずもがな。人は好きなものを見ているだけでアイディアが溢れてしまうものです。
ただ絵や展示品を観るだけで何も記憶に残らないのなら、作品からイメージを広げながら鑑賞するのがオススメです。
「この絵は何を示しているのだろうか?」
「この展示品が実際に使用されていた頃、どんなふうに使われていたのだろうか」
「この絵に描かれている人物と作者の関係は?」
これらの情報はタイトルや解説パネルに掲載されています。作品の理解度を深めたいのなら、行く前に下調べをしましょう。また、学芸員やスタッフの人に尋ねるのもオススメです。ただ、調べる・聞く前に、できれば自分自身の想像力で「これってなんだろう」と考えてみましょう。まったく的外れでも自分の中で結論がみつかるよう頭を働かせる行為こそが、発想力の訓練になるのです。
そんな発想力の訓練になる絵画の傾向をご紹介します。
なかでも「風景画」と「印象派」はとくに初心者向けの絵画ジャンルです。風景画とは文字通り風景を書いた絵画のことで、ゴッホの『星月夜』、モネの『睡蓮の池』、葛飾北斎の『富獄三十六景』などの作品を指します。東アジアの山水画も風景画の一種です。ただただ自然を描かれているものだけでなく、人・生き物が一緒に描き込まれている作品もあります。
この風景の中で生きる人々はどんな暮らしをし、どんな話をして、どんな物語を演じるのだろう、と考えてみましょう。
風景画は画家の感性が大きく反映された自然を描いていることが多々あります。そのため作者が何を描こうとしているのか、何を伝えようとしているのか、第三者にはなかなか伝わりづらいものです。同様に、印象派、抽象画、現代美術もありのままの現実を描くよりも、クリエイターの感じた印象や、物事の本質を描く傾向にあります。
だからこそ鑑賞するときは描かれているものや描かれた経緯などをじっくり考えてみましょう。正しい答えにたどり着かなくてもいいのです。もしかしたら“正しい”答えなど、作者も持っていないかもしれません。大切なのは考えることそのものなのですから。
世界はたくさんのインプット方法で溢れています。インプット方法を試すときは、自分がこんな心境でこんな情報を取得して、こんなアイディアになった、とインプットからアイディアまでのフローを書き溜めておきましょう。どのインプット方法が1番自分にあっているか確認することで、スランプが訪れてもスムーズに脱出できるかもしれません。
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監修|榎本 秋
1977年東京生。2000年より、IT・歴史系ライターの仕事を始め、専門学校講師・書店でのWEBサイト企画や販売促進に関わったあと、ライトノベル再発見ブームにライター、著者として関わる。2007年に榎本事務所の設立に関与し、以降はプロデューサー、スーパーバイザーとして関わる。専門学校などでの講義経験を元に制作した小説創作指南本は日本一の刊行数を誇っており、自身も本名名義で時代小説を執筆している。
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