小説を書いていると「もっといい表現があるはずなのに、うまく言葉にできない……」という経験をすることも多いのではないでしょうか。創作のために必要な能力の中でも、語彙力は文章力と深い関係があり、同じように大切なものです。
今回は小説家デビューを目指すなら知っておきたい「語彙力」についてご紹介します。
目次
そのためには基本的な文章や表現のルールをきちんと押さえることが大切。それと同時に意識したいのは、語彙力です。
エンタメ小説に必要なのは、「美しい文章よりもわかりやすい文章」。それは大前提です。しかしプロ小説家を目指すなら、伝わりやすいうえで美しい文章を書けるようになりたいもの。あらゆる類語を状況に合わせて使いこなすことで、美しい文章に近づけます。
上記の意味は2つともほとんど同じですが、どちらを使うかで、読者が受ける印象は大きく違います。
地の文で使えば作品全体の印象を左右し、登場人物のセリフで使えばキャラクターのイメージが変わるもの。この点でも語彙力は小説家にとって非常に大切な「武器」なのです。
語彙力が増えると、状況に合わせてさまざまな「言い換え」ができるようになります。多くの語彙を使いこなし、豊かな表現力を身につけましょう。
※文章力アップについてはこちらの記事もご参照ください
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語彙力を増やすためには、普段から気になった言葉、知らない言葉を「調べる」習慣をつけるのが一番大切です。ここでは3つの方法をご紹介します。
文章を書いていて「どんな言葉がいいかな」と迷ったとき「類語辞書」が役立ちます。Webで検索できる「WEBLIO・類語辞典」が手軽です。
ただし辞典を調べて出てきた言葉をそのまま引用してしまうと、本来表現したかった意味からズレることも。きちんと用例を確認してから使いましょう。
空き時間にスマホを使って、ネットニュースやそれに関するブログ記事、SNSなどを見るのもオススメです。ネットニュースは、今世の中で何が起きているのかを把握できるだけでなく、語彙力の向上にも一役買ってくれます。
ニュースやブログ記事に知らない言葉が出てきたら、その都度「調べるクセ」をつけましょう。
創作のために高度な調査をしたいなら、有料サービスや書籍を参考にするのが確実で時短にもなります。有料のサービスではジャパンナレッジがオススメ。日本語や歴史の辞典、英語、各外国語辞書の項目を一括検索できるため便利です。
ネットニュースやSNSで情報収集しながら知らない言葉を調べてみると、知識も語彙力もどんどん増えていきます。プロ小説家を目指すのなら、知識はムダになりません。好奇心をもってさまざまなことを調べましょう。
なんとなくニュースを見ていて、出てきた言葉が気になったのに、つい後回しにして忘れてしまうことも多いでしょう。しかし小説を書くなら、はじめてみる言葉はみつけた端から調べるくらいの気概が重要なのです。
語彙力とは、言い換えれば「たくさんの言葉を知っているかどうか」です。これは小説を書くときの必須事項といえます。しかもただ知っているだけではなく、どの言葉をどんな状況で使うのか、をきちんと理解していなければいけません。
こればかりは、辞書だけで調べるのは難しいもの。辞書では「言葉の意味」はわかっても、「どんな時に使うのか」までは実感しづらいからです。
この「生きた言葉」は、小説の中にあるため、「たくさん読む」ことが大切になってくるのです。たくさん読むことで、さまざまな言葉が蓄積されていき、語彙力はどんどんアップします。
「あのセリフでこんな言葉を使っていたな」「たしかこんな意味の言葉だったな」と、経験で覚えていることが、語彙力を身につけるために一番有効な方法です。書くことも大切ですが、読むことはもっと大切。小説家を目指すなら覚えておいてください。
※こちらの記事も合わせてご覧ください
文章力を上げる読むべき本を紹介!【プロ小説家も実践!読んで書くのススメ】
言葉の言い回しに気を配ると、文章にメリハリがつくうえ、細やかなニュアンスも正確に伝えられます。同じ表現ばかり使わず、さまざまな言い回しを使いこなすことで、語彙力は鍛えられるのです。ここでは表現を広げるための練習方法をご紹介します。
特定の単語を使わずに掌編小説を書いてみましょう。一度使用した言い回しは繰り返し使えません。
この課題は、「食べる」「走る」「寝る」という普段よく使う単語を用いることなく、別の言葉でどこまで正確に表現できるかの練習です。
一度使用した言い回しは繰り返し使えないという制約があるので、どれだけ多くの言葉を知っていて、それを適切に使いこなせているかが大きなポイントになります。
次のヒントを使って書いてみましょう。
「喰う」「食す」「食む」「喰らう」
「涙を流す」「涙する」「嗚咽する」「涙が溢れる」「落涙する」
「眠る」「睡眠」「寝入る」「就寝」「床に就く」
たとえば、3の「ベッドに倒れ込んだ人」が明日の予定を考えている・幼少期の思い出を振り返っている、そんなシチュエーションでは「寝る」に関係する言葉を用いなくても物語が書けます。しかしそれでは練習になりません。
禁止されているワードを使わないように気をつけつつ、別の言い回しで表現するのが肝心なのです。また、上記の課題以外にも、自分で「この単語を使わずに掌編を書く」という練習を繰り返してみてください。よく使う単語を禁止ワードにすると難易度が上がり、レベルアップにつながります。
語彙力を鍛えるにあたって注意したいことがあります。それは、「語彙力の高さ」=「難しい漢字を使う」だと勘違いしないことです。
難しい漢字を使うことは案外簡単。辞書で調べて引っ張ってくればいいので、誰にでもできるのです。しかし難しい漢字ばかり使うと、読者が文章をスムーズに読めなくなります。
この表現はこの漢字でなくてはならない! という状況で、適度に難しい漢字を使う程度ならば読者も新しい単語が知れ、いい刺激になるかもしれません。しかしあまりに多用されていれば、読者はその度に意味を調べなければならず、ストーリーに没頭できません。
重要なのは、難読漢字を使うことより、中高生にもわかる単語で、適切な言い回しを数多く出せる引き出しがあること。それが「語彙力を鍛える」本来の目的です。忘れないようにしましょう。
たくさんの言葉を知っているだけでなく、言葉を正しく使いこなし、わかりやすく言い換えられるのが「語彙力の高さ」です。日頃から「気になったら調べる」を合言葉に、知識を増やし、執筆に活かしましょう。
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監修|榎本 秋
1977年東京生。2000年より、IT・歴史系ライターの仕事を始め、専門学校講師・書店でのWEBサイト企画や販売促進に関わったあと、ライトノベル再発見ブームにライター、著者として関わる。2007年に榎本事務所の設立に関与し、以降はプロデューサー、スーパーバイザーとして関わる。専門学校などでの講義経験を元に制作した小説創作指南本は日本一の刊行数を誇っており、自身も本名名義で時代小説を執筆している。
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