小説家を目指す方に考えてほしいのが、自分の書きたい作品がどのジャンルに入り、どのレーベルの新人賞でデビューを狙えそうなのかという部分です。ジャンルを知ることで、ストーリー作りのツボがわかり、審査員や読者の目に留まる作品を書くための一助となるでしょう。
そこで今回は、小説を書く前に知っておきたいジャンルの種類と特徴、主要新人賞をご紹介します。
※小説の書き方って何からはじめればいいの?という方は以下の記事をご覧ください
小説の書き方【初心者必見】はじめの一歩から完成まで
目次
それぞれのジャンルごとに傾向や特徴といったツボがあります。これらのツボを把握すれば、どのジャンルでどのような作品が好まれるのか、どんなポイントが重視されるのかといった作品づくりの指標になるでしょう。
ジャンルの知識があることで、創作の効率が上がります。効果はそれだけではなく、各ジャンルのお約束や王道パターンに沿った物語が作れると、その定番を逆手に取った、意外な展開も作れます。ぜひジャンルを学んで、創作に活かしましょう。
作品の方向性や作中に登場する要素によって分けられるジャンルをご紹介します。
物語に幻想的な要素が登場するジャンルです。魔法やモンスター、神話・伝説・民話などの題材がよく扱われます。
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ファンタジー小説のなかでも異世界を舞台にしたものです。「ハイ・ファンタジー」とも呼ばれます。舞台となる時代や場所は歴史をベースに創作されるケースが多く、中でも中世ヨーロッパ風の設定がよくみられます。魔法や怪物の登場する世界、「剣と魔法の(ソード&ソーサリィ)」ファンタジーを指す場合が多いようです。
現代(近現代)を舞台にしたファンタジーです。「ロー・ファンタジー」とも呼ばれます。大きな特徴は、読者にとって身近な日常(現代)の中にファンタジックな要素が入っていることです。
基本的に科学的な要素のある物語で、宇宙や時空、未来の科学技術が多く取り扱われます。
細部にこだわるファンも多いため、「SF的な」要素をいかにリアルに表現できるかが問われるジャンルです。
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事件が起こり、謎がある。これこそがミステリーです。探偵役が推理をし、謎を解き明かすのが定番。どれだけ「魅力的な謎」を用意できるかが重要なポイントです。
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実際の史実(歴史的な出来事)を題材にした小説です。歴史ものは下記の3つに分類できます。
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現代を舞台に社会的な事象を扱います。ニュースで見るような身近な出来事はイメージが容易で共感性も高いため、読者に人気の高いジャンルです。
現代もののなかでも、近現代の経済や企業、政治にフォーカスした物語です。実在した事件や人物、企業体をモチーフにしたものも多く見られます。
財宝や地位、名誉、スリル、ロマンを求めて危険を顧みず冒険する主人公は、古典的ながら根強い人気のあるジャンルです。現代では国際謀略(スパイもの)、山岳小説や海洋冒険小説なども冒険小説の範疇とされています。
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職業を題材とした物語です。多くの人気作品の題材になっている医者や刑事、弁護士の世界から、一般的にあまり知られていないニッチな職業まで、さまざまなバリエーションがあります。読者はその業界特有の知識やノウハウに興味を持つため、専門知識が必要なジャンルです。
仕事や職業から離れた、日々の営みを舞台にした物語です。描写されるのは家族との関係や、ご近所さんとの人間関係などが多く、なかでも恋愛ものはこのジャンルの定番です。その他にも闘病ものや、趣味を扱った作品など多岐にわたります。
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「ジュブナイル」は少年少女の冒険、それによる成長がテーマです。成長、友情、学校、将来、恋や家族の悩みなど、若年期特有の体験をテーマにしたものを「青春もの」と呼びます。これらの舞台設定として、若者にとって生活と切り離せない「学校」が選ばれることで「学校もの、学園もの」とするケースもあり、明確な分類の線引きが難しいジャンルです。
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いずれもターゲットとなる若年読者にとって身近な「青春的」テーマで、感情移入を誘うスタイルが定番でしょう。
どのような属性の読者をターゲットにするかでも、小説のジャンルを分類できます。出版社(新書・文庫)・レーベルのカラーによって出版される小説の趣も変わってくるものです。ここでは、ターゲット読者によるジャンルの分類と主要な新人賞をご紹介します。
メインターゲットを中・高校生とするジャンルで、軽い文体でわかりやすく書かれた娯楽小説です。SF、ホラー、ミステリー、ファンタジー、恋愛などの要素が多く扱われます。しかし明確な定義はありません。
ライトノベル黎明期にはハイ・ファンタジー、そのなかでも中世ヨーロッパ風の世界を舞台にした「剣と魔法のファンタジー」がジャンルを席巻しました。近年では現代ファンタジーや青春ものが台頭しています。しかしこれと並行するように異世界を舞台とした作品も再燃し、今では定番の題材となっています。
このジャンルにいえるのは「今、読者の求めているものを提供する」という姿勢です。それこそがライトノベルの必須条件といえるでしょう。
ライトノベルの主要新人賞は?
ライトノベルのなかでも、Web小説投稿サイト『小説家になろう』の文学賞を受賞してデビューした作家や、その作家の作品を「なろう系」といいます。さらに、それらと似た作風の小説傾向を指すこともあります。
なろう系の定番設定は、現代で何の取柄もない主人公が異世界に行く、または転生したことで、現代の知恵や道具を使い、一転ヒーローに! といったもの。「異世界転生もの」の総称として使われることもありますが、このテーマは『小説家になろう』が人気を博す以前からあったものです。まったく違ったテーマが「なろう」で書かれることもあれば、普通のライトノベル作家が「なろうっぽい」作品を書くこともあります。
最近のなろう系においてはゲームのような要素の強いファンタジー作品が多くみられ、「異世界転移」や「転生」が必ずしも主流というわけではありません。これらの市場やターゲット層は、一般的なライトノベルと大きく変わりません。
ライトノベル(なろう系)の主要新人賞は?
ライトノベル並びに少女小説から派生、または影響を受けているジャンルです。歴史は浅く、ライトノベル以上に定義はあいまい。一般的には若年層向けのものと比べ、より大人向けのライトノベルと認識されることが多いようです。ライト文芸のなかには、キャラ文芸、キャラクター・ミステリー(キャラミス)などと呼ばれるものがあります。
【キャラ文芸】
ライトノベル的なキャラクター性の強い主人公やヒロインをメインキャラクターとし、心理描写や社会風刺など文芸要素のあるテーマを扱った小説
【キャラミス】
日常で発生した事件の謎をキャラクター性の強い登場人物たちがひも解いていく小説
ライト文芸の小説において表紙にあしらわれるのはライトノベル同様、アニメやコミック風のイラスト。しかし挿絵や口絵(書籍の巻頭に載っているイラスト)などは少なかったり無かったりする傾向があります。ライトノベルで人気のあるバトルや冒険ものよりも、ミステリーやサスペンス、日常系の方が好まれるようです。
ライト文芸の主要新人賞は?
文字通り、中学生~高校生の女性をメインターゲットにする娯楽小説と理解されているジャンルです。しかし、明確な定義はありません。
ライトノベルのようにカバーイラスト、挿絵がついていることから、「少女向けライトノベル」と呼ばれることも。ファンタジー世界で、恋愛をメインテーマに据える作品が多く、華やかさ、「姫」や「王子」など女性が憧れるもの、ロマンチックな要素が入っている作品が多くみられます。
少女小説の主要新人賞は?
幼児期から小学生(場合によっては中学生)までの子どもをターゲットとした文学作品です。取り扱う範囲は幅広く、絵本や詩、童話や童謡、神話や昔話などさまざま。大人向けの物話を子どもにわかりやすく改変したものもあります。
子どもの読み物ならば、書くのも簡単だと考える人は多いものですが、実は子どもに受け入れてもらうのは非常に難しいもの。長い歴史、独自のルールがあるジャンルのため、しっかりした調査や戦略が必要となります。
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児童文学の書き方
児童文学の主要新人賞は?
児童文学の1ジャンルですが、一般的な児童文学とは少し違いがあります。講談社・青い鳥文庫に代表される「新書サイズでレーベル名に『文庫』がついているレーベル」の作品が児童文庫です。
冒険ファンタジーやホラー、ミステリーなどエンタメ性が強い作品が多い傾向があります。特に最近ではライトノベルに似たタッチの表紙絵があるものや、ライトノベルを児童文学風にアレンジした作品なども増えてきました。
児童文庫の主要新人賞は?
娯楽的で、読者に楽しい時間を提供することを本義として書かれた小説です。古くは「大衆文学」や「通俗文学」などとも呼ばれていました。純文学との境目が非常にあいまいですが、作品のテーマや内包されるメッセージなどがわかりやすくはっきりと示されているものをエンターテインメント小説とするのが一般的でしょう。
エンターテインメント小説の主要新人賞は?
娯楽のためではなく、純粋に芸術作品として書かれた小説が純文学です。
しかし本として出版するには読者に買ってもらうことが重要です。そのためある程度の娯楽性がないと成立しないというジレンマが生まれます。そこが純文学とエンターテインメント小説の線引きを難しくしている部分でしょう。一般的には、作品のテーマやメッセージがはっきり書かれず、読者に考える余地を残した作品は芸術性が高いとされることが多いようです。
シンプルでわかりやすい描写が多いものをエンタメ小説、情景や心理描写を修飾的表現で飾った作品を純文学とする捉え方もあります。
純文学の主要新人賞は?
小説家デビューを目指すならば、応募する新人賞の傾向、賞を主催するレーベルの研究が欠かせません。書き上がった原稿を手あたり次第送るよりも、レーベルの傾向に合わせた作品を書いて応募することで成功率が高まります。
レーベルの主流を押さえたうえでオリジナリティを足すのか、あえて方向性を変えて意表を突くのか、どちらにしてもレーベルの状況を知らないと策を講じられません。しっかりチェックしておきましょう。
※レーベル研究について、詳しくはこちらの記事をご覧ください
新人賞突破法|一次選考に通らない! がなくなる方法【小説家デビューへの道】
自分の書きたいものを書く! という心構えは大切ですが、本気で小説家を目指すなら、ジャンル、レーベルのことをよく知ることも重要です。ジャンルをよく知ることで、「読者が期待しているツボ」をおさえたストーリー作りができます。
またレーベルを知ることは、新人賞突破の糸口にもなりえます。ぜひジャンル、レーベルについて調査し、自分の作品がどこでデビューを狙えるのかの目星をつけ、目標設定に役立てましょう。
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監修|榎本 秋
1977年東京生。2000年より、IT・歴史系ライターの仕事を始め、専門学校講師・書店でのWEBサイト企画や販売促進に関わったあと、ライトノベル再発見ブームにライター、著者として関わる。2007年に榎本事務所の設立に関与し、以降はプロデューサー、スーパーバイザーとして関わる。専門学校などでの講義経験を元に制作した小説創作指南本は日本一の刊行数を誇っており、自身も本名名義で時代小説を執筆している。
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